第11話
「恋愛はタイミングだ」
よく言われるやつ。
俺は中3の夏、身をもって痛いほど実感した。
誰にも言ってないけど中3の夏、初めて由菜を女子として意識して好きになりかけた。時だった。
由菜に彼氏が出来た。
まあ、こんなもんかって妙に納得できた。きっと穂高だったら納得以前に拗ねてその後絶対に奪い返すって言うはずだ。でも俺は違ったしなんとなくだけど由菜と俺は多分、別れたら終わりだと思ってたから。
それから夏休みの終盤に入って由菜から映画に誘われた。元々若葉と行くはずだったけど若葉が熱を出して前売り券が余ったらしい。
俺と由菜は映画や本、音楽に漫画。よく趣味が似てて貸し借りもしてたし2人で映画はデートじゃなくてよくある事だったから何も気にせずに行った。
でもよくよく考えて彼氏誘えば良くないか?って思ったから由菜に
「お前、彼氏と来た方が良かったんじゃ…」
って言ったら
「ああ、別れたからね。それに映画は駿と見る方が楽しいから」
とさらりと言われて。
かといって由菜に告白するかってなる訳ではなく。この時今度は俺に彼女がいた。(後にこの映画を2人で見た事が気に食わない彼女と大喧嘩して別れた)
俺たちは本当にタイミングが合わない。
そういうふうに出来てんだな。
タイミングが合わないふたりでも若葉と穂高はなんか俺と由菜とは違う。俺と由菜、そういう誰にも変えられない運命的なの、多分ない。この時痛感した。
昼休み空けてから委員会までずっと引っかかってる由菜の言葉がある。あの爆弾発言。
あの日、俺も一緒にいた。見られてたし、ていうことは多分俺が入ってったのも知ってる。
なんというか「やっちまった感」が拭えない。
やっぱタイミングが合わない。こういう事が本当に多いんだよ。
それに多分いま俺に彼女がいることも気がついてると思う。もう別れそうだけど。
今日由菜がサボったことをわかったのは本を返しに行ったことだけが理由じゃない。
由菜が俺を見下ろしてた時、由菜の香水の香りがグレープフルーツの香りだったから。
高1の夏かな、由菜が香水にハマって使い出したあの香水。香水の何にそんなにハマるのか分からないっていう俺にトップの香りとラストの香りが違うの!これはトップがグレープフルーツなんだよ!って力説してたのを覚えてたから。
それをコンビニアイス食いながら俺ん家までの帰り道2人で歩いて話したから。
ホント、無駄なことまで覚えてる。
ボーッとしてたら委員会終わってて若葉が
「駿?委員会終わったけど。2人待ってるし行こう」
「あ、うん」
穂高の教室で待ってる2人と合流して帰り道。
若葉が穂高に電子辞書を返せと怒ってるのを前に見ながら由菜と並んで歩く。
2人を笑いながら見て仕方ないなと呆れてる。
多分きっとこの関係が正解だ。
風に乗って香った由菜の香水がシトラスの香りになってた。
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