第10話

昼休み。

弁当食って隣のクラスの親友のところに行ったら新館に電子辞書借りに行ったって言われた。

今頃からかって、多分あと10分以内に上機嫌で戻っくるんだろーな〜。あいつ。

そんな屈折した親友の世話焼きに追われていながらも自分の事もそこそこにこなす18歳の俺。

西内駿。

購買でレモンティーのパック買って廊下で待ち伏せてたら1人で笑いながらやつがやってきた。

後ろを着いていきながらこれを若葉に見せればいいのにと思うけど。気分が上がったり下がったりする後ろ姿に声をかける。

穂高は若葉の電子辞書見ながら

「うん、めっちゃ嫌がってた」

とにやにやして答える。

全く。今頃若葉はふて寝中だろ。さすがに若葉が気の毒なので説教した。

説教してるけど俺は穂高の素直さが好きだ。なんて言うか、懐いたやつにはとことん素直な犬っぽい感じ。

それに俺は穂高のフォロー役も嫌いじゃない。これ、由菜も言ってたんじゃん?(ご名答)

若葉のフォロー役をすることに関しても同じよーなこと由菜、言ってたん…(以下略。そしてご名答)

穂高の話をいつもの場所で聞いてたら聞き慣れた足音がした。かれこれ15年聞いてる。

由菜の足音。あれ。なんでこっち来ないんだ?

あ、俺が今日は説教してるからか。

立ち聞きしてた由菜を呼ぶために話の流れを変えた。ぱっと由菜の方を向いてこっち来いと合図する。

「なあ?由菜」

ふいっと俺らを見下ろす由菜を見上げた。

この時穂高は動揺して気がついて無かったかもだけど、由菜が俺の顔、見つめてた…様な気がする。

別に特別目をそらすような関係じゃないし普通に見つめた。

相変わらずきれーな顔だな。下アングルから見ても崩れてないわ。由菜が学年の女神と言われるのもよく分かる。

そんなこと思ってたら由菜に怯えてる穂高に由菜が気がついて爆弾発言した。

そんでそれは実は俺にとっても爆弾発言だった。


「あ、予鈴」

由菜が言う。あ、そう言えばこいつ午前中サボったよな。借りてた本返しに教室行ったら居なかった。

「由菜、もー行きな」

午後まで響いたらやばいから由菜を促した。

「あー、うん。じゃ」

パタパタと由菜が走ってく。

隣で放心してる穂高に声をかけて俺らもそれぞれの教室に向かう。

階段上がりながら思った。

タイミング。

俺と由菜、いっつもタイミング合わないんだよな。


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