第5話

俺にとっての若葉はいつも女の子だった。

最初から変わらない。

男子たちの中では由菜の方が正統派の美人だって有名だけど若葉は可愛い雰囲気が人気で顔も可愛いし、それを気に入るやつも多くていつも嫌だった。


だから俺の嫉妬も、独占欲も全部若葉を気に入るやつに向けられていて、若葉を通して自分のことを知ることが多かった。

それこそ初めて自分の嫉妬と独占欲を知ったのは「若葉は俺の」宣言の時だった。

でもこの時はおもちゃを取り上げられた子供のワガママに近かったかも。

それで思春期を迎えてからかわれたりしてだんだん自分が若葉と向き合えなくなってきて。

そんであの最低最悪発言。いちばん大切な女の子を自分がいちばん傷つけた。

そこから気まずくなって話せなくなって、俺たちを元通りにさせようと画策する友達に若葉が怒りをぶちまけた時に高等部に上がった。

高等部ではもちろん若葉も結構モテて告白するやつが出てきて底でもう一度しっかり自分の独占欲を認識した感じ。

そこから自分も告白とかされるようになった時、俺は若葉じゃないとダメなんだ!もう自分の気持ちに素直になって若葉に謝ろうと思った。だから許嫁だってちゃんと相手に言って断った。が。

噂の拡散力は底知れず。若葉に謝る前に噂拡散という最悪な状況を産んだ。

なんかもう俺が素直になろうとすればするほど裏目に出るんだと思った。

その分若葉が傷つくんだって。

「だから、今更どの面下げて素直に若葉に若葉がいちばん大切だなんて言えるんだよ!!って思ってさ。ならいっそからかってるくらいの距離感が正しいんじゃないかって錯覚しちゃうんだよな。本当は駿が言ったみたいに罪悪感が増すのから逃げてんのかも」

黙って聞いてた駿がレモンティーを飲みきって言った。

「まあ、お前がさ若葉は俺の!!って言う独占欲の強さを自覚するのが遅すぎて驚きだよね。俺と由菜の中では中等部位から暗黙の了解だったんだけど」

しれっと言う駿に一瞬、ん?ってなった。

「え?なに、ちょっと待って。ここまで話させておいて知ってましたってこと!?」

「いや、分かるだろ。あと若葉、お前が俺と高等部入って半年くらいの間に結構遊んでたこと知ってるよ多分。理由が若葉に嫌われたしもうどうにでもなれ的な自暴自棄とは思ってないみたいだけど」

「は!?まじで言ってる!?いや、確かにお前と結構遊んだし幼馴染だから知らないのも変だけど!なんでお前は俺の理由まで知ってんだ!?」

「強いていえば顔??」

「顔!?」

「なあ?由菜」

俺が顔を触ってるとふいっと駿が上を向いた。

そこには学年の女神と言われる俺のいちばん怖い幼馴染がいた。そんでその怖い女神が強烈なひとことを放った。

「あんたみたいな微妙に真面目なやつが女と遊ぶなんて無理無理。だってどこぞのお姉様にホテル連れ込まれそうになって逃げたもんね?」

え。詰み。


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