蟹道楽
今夜は何度死を覚悟したろうか?
こんなにヒリ付く夜はそうそうない。
今後一切、御免被りたい。
『あんま……ガっ付くんじゃねえよ……』
『だってぇセンパぁイのぉ躰がとぉっても美味しいんですもん』
脚という脚をクソほどデカい百足に喰われた哀れな蟹が深夜の国道に転がっている。
あー畜生こんなの初めてだなあ。
『んんッ……てめ……この馬鹿……締めんなぁ』
無数の
『いっかいぃ本気でぇぎゅうーってしたかったんですぅ』
軋む甲羅にいよいよ
『おもしれえことやってんじゃん。私も混ぜなよ』
先輩の
『『!?』』
宙の海を悠々泳ぐ
『ガキ寝かしつけるのに手間取っちゃってさ、おくれてゴメンしてね』
『先輩……おそいっす』
限界だ落ちる………………。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「おーい起きろ終わったぞ」
「へぇ?」
重たい瞼を開けると私の顔を覗き込む先輩と目が合った。
「人妻の膝枕でぐっすりだもんねあんた」
「すんません」
起きようとする私の肩をぐっと先輩の手が押さえる。
「いいから、そのまま……ね?」
やべぇこれは調子狂っちゃうなあ。
「先輩引退したんじゃ?」
「魔女だよ魔女、ガキ産んだら流石に少女じゃいれないっての」
魔女それは悪魔と契った女性を指す。
旦那が魔王の息子だもんなそういえば。
「どうしてここが?」
「あんなに派手に
「ですよねー」
いてぇデコピンされた。
「今日は気張ったねほんと、国道がぐちゃぐちゃだよ」
「ええまぁ」
「それにしても最近の若い魔法少女ってのは凄いね逃げられちゃったよ」
どんだけ凄いんだよあの
「これ喰いたかったんだろ?」
クレープアイスを先輩が目の前でブラブラさせる。
うわぁ心を読まれた。
「へぇお前エッチなこと考えてんだ私相手に」
「反則ですよソレ!」
先輩はクレープアイスの封を破ると一口がぶりと頬張って咀嚼を始める。
「あぁ溶けてんなぁこれじゃ只のクレープだ」
夜中の公園、ベンチで膝枕、
ひいっ死んじゃう死んじゃう!
頭が蕩ける。
甘過ぎるよぉ。
夜更け過ぎ、藍色の夜空だけが私たちを見下ろしていた。
【 Midnight on the magical girl 】
happy end.
現役兼業魔法少女(29)深夜の公園でクレープを喰らう 鮎河蛍石 @aomisora
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
新生活、やることが多い/鮎河蛍石
★3 エッセイ・ノンフィクション 連載中 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます