ショートカットはCtrlとC
「すごいですセンパぁイ」
「凄いのは君のパソコン知識の低さだよ?」
「それぱわはらですよぉ」
商業科を出た高卒の新入社員の事務員に仕事を仕込んでいるのだが、第一に私は派遣社員だし、こんな業務は本来やっちゃなんねえのだが、四の五の文句を言おうものなら契約を切られるのは目に見えているので黙って引き受けたのが運の尽き。
コピペのショートカットキーを知らないおぼこい娘の世話をすることになってしまった。
参ったね。
学校ってのはそういうことも最近おしえんじゃねえの?
いったい何やってんだ私は?
「凄いです先輩」
「あんたさ、いい加減魔法の扱いに慣れな?」
「だって痛そうなんですもん相手が」
「四の五の言ってると死んじゃうよ?」
先輩ってのはいつだって凄かった。
いっつも要領よく、なんだって私の前ではそつなくこなす。
けれども私が見てない所ではいつも不器用で、泣きながら魔法少女の活動をしてたっけな。
カニカマ女が逐一、先輩の目撃情報を囁いてくれたので私は知っているのだ。先輩の弱い一面を。
あれ?
いま何をやっているんだ私は?
「アイツとさ結婚するんだよね」
「マジですか! おめでとうございます」
先輩の結婚相手はこの前まで殺し合っていた敵対組織のボスの息子だ。
勿論コイツとも相当数殺し合った。
何の因果か、先輩とコイツは恋に落ちた。
同時に私の初恋も終わってしまった。
先輩の傍にいた私じゃなくてコイツが勝ったのだ。
恋敵だった野郎に祝辞をくれてやった先輩の結婚式があった夜、泣いたね一生分泣いたかもしんね。
「アイツはあたしがいないとダメだからさ……」
そんな顔しないでくださいよ先輩。
私の前で今までそんな顔したこと無いじゃないですか。
ずるいっすよ。
先輩にそんな顔させる奴に敵う訳ないじゃないっすか。
やべえ走馬灯だこれ。
ここで死ぬのか?
最悪の思い出で最後を飾っちまうか?
「……けんな」
「!?」
「ふっざけんな! 私が負けんのは先輩の旦那だけじゃ!」
気合で止まりかけた
「
私が呟く変身魔法の
全長3メートル、全高2メートル、総重量7トンを誇る29年ため込んだ人生の痛みがぎっしり詰まった
怒りで朱に染まった外殻に弾かれ吸血鬼が吹っ飛ぶ。
『今度は逃がさねえ』
吸血鬼の脚を鋏でホールドする。
「ぎゃあああああ」
鋏は吸血鬼の太ももの肉だけを潰し斬り、骨を折らない程度の適切な力加減で閉じてやった。
きったねえ返り血で甲羅が更に赤く染まる。
「なんで! なんで!?」
コウモリにも霞にもなれないって?
バカ言っちゃいけないよ。
さてさて、食材に料理される気分をこのアホにはどう味わってもらおうか。
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