第32話 決戦
「この騒ぎを起こした奴を叩きに行く」
カレンは居場所をフロル達に教えると通信機を早々に切る。
そんなカレンにイヴァンは苦笑いを浮かべる、何処か焦っているように見えたからだ。
「姐さん、少し焦りすぎやありませんか?」
「・・・・・・お前は少し気楽すぎるぞ?」
「そうでもありませんよ。オレだって、一刻も早くこの事態を治めたい!!
だけど、今は・・・・・・」
イヴァンが視線を向けた先にはリカルドが封印術が施された扉の封印を解こうとしていた。
どうして、リカルドが此処に居るのかと言うと数分前、カレンがイヴァンと合流した時に遡る。
――回想開始。
漸く連絡が取れたイヴァンと共に合流したカレンが最初に目にしたのは、ややボロボロのイヴァンと座り込み、イヴァンと同じようにボロボロになっているヨシュアだった。
「ボロボロだけど派手にはやってないようだな」
「それなりに強敵でしたよ、コイツ」
そう言って笑うイヴァン越しからカレンはヨシュアを睨む。
睨付けるその目にはハッキリと殺意が込められているのを感じたヨシュアは、彼女もまた教団の被害者なのだと悟った。
「お前が教団のスパイか」
「ああ、そうだ。俺は活動員のヨシュアだ」
「イヴァン、どうして、コイツを生かした?」
「姐さん、オレは彼奴らが憎いが彼奴らに利用されてる人達を殺すのは流石にゴメンだ。そんなことしたら彼奴らと同じになっちまう」
今まで以上に鋭い目つきでカレンはイヴァンに問う、きっと、フロルいやアウラでもビビりそうな雰囲気にも関わらずイヴァンはカレンを諭すように言うとカレンは小さく「そうか」と呟き、ヨシュアから視線を外すと、ヨシュアの管轄者である男とペチカが入っていった奥の扉に目を向ける。
「イヴァン、お前が言っていた助けたいって子は奥へ?」
「教団の奴と一緒にな。直ぐに助けに行きたいと思っては居るんだが、彼奴ら、教団の事だ。
邪魔をしにくる事は想定していたんだろうな、姐さん達が来る前に少し様子を見ようと近くに寄ったんだが・・・・・・」
イヴァンはそう言って奥の扉に近づき、手を触れるとバチンッと音が鳴った。
どうやら、扉には見えない何かが施されているようだ。
「こんな感じで通れないんですよ」
「これは困ったな。魔術に詳しいアッシュかアウラを呼ぶしかないか」
「その扉に施されているのは封印術だよ」
「誰だ!?」
突然、現れた存在に座り込んでいたヨシュアは立ち上がり、片手剣を相手に向ける。
向けられた相手――リカルドは両手を上げ、降参のポーズを取っていた。だが、表情は怯えておらず、薄らと笑みを浮かべていた。
「アンタは妖精使いのリカルドじゃないか!? どうして此処に居るんだ?」
「なに、こんな騒ぎが起きて祭りを楽しんでいた妖精達がお怒りでね、何とかしようと思ったのさ」
「知り合いか?」
「ちょいっと前にある屋敷の調査で知り合ったんだ。敵じゃないから剣を下ろしてくれないか?」
敵ではないと告げられて、ヨシュアは剣を下げるとリカルドも両手を下ろし、ツカツカと遠慮なく扉に近づいた。
「うん、やっぱり、封印術の中でも軽めのものだね。これなら、私でも数時間はかからずに解けるよ」
「本当か!?」
「私はこれでもそれなりの妖精使いだよ? 信じてくれたまえ。
その間に他の仲間を呼んだ方が良い。妖精達がこのメンバーでは勝てないと言っているよ」
――回想終了。
カレンは今もなお扉に向かって解く為の呪文を唱えているリカルドに目を向ける。
彼女、リカルドが放った言葉。
『このメンバーでは勝てない』
妖精は魔力の塊と言って良いほど魔力を保有し、魔力に敏感に反応する存在だと言われている。
その妖精達がそう告げたと言う事は、これから戦う相手は強敵だと言っているようなものだ。
カレンは拳を握り決意を固める。
絶対に勝ってやると。
チーレムから追放された白魔術師はギルド職員になりました うにどん @mhky
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