第27話 お祭りが始まりました③
「お姉ちゃん、これは何?」
「クレープっていうの、美味しいよ。食べる?」
「食べる!!」
林檎飴を始め、屋台の食べ物という食べ物を網羅している真っ最中でございます。
ペチカちゃん、食べる食べる。アタシも食べる。ジェシカはそんなアタシを見て少し引いてる、アタシが大食らいなのは知ってるけど流石にペチカちゃんと競うように食べてる所を見て引いているのかも。
だって、屋台のご飯で特別じゃない? この時に食べないと損じゃないですか!! とまあ、それは置いといて。
ペチカちゃんは屋台、お祭りに来るのが今日が初めてらしく迷子(本人曰く迷子になったのはヨシュアさん)になったのは目に入るもの全てが新鮮で目移りしていたらいつの間にかヨシュアさんとはぐれてしまったらしい。
最初は手を繋いでたけど色々と見て回りたいからと手を放したそうだ、今頃、ヨシュアさんは手を放した事を後悔してそう。で、今、ペチカちゃんは食べるとき以外はアタシとジェシカと手を繋いでる。
右にアタシ、真ん中にペチカちゃん、左にジェシカで屋台エリアを歩く。
アタシはチラリと横目でジェシカを見る。ジェシカは嬉しそうなペチカちゃんを見て和やかに笑っていた。
あれ以来、アレックスの事件以来、ジェシカが笑うところを一度も見た事が無い。いつも切羽詰まった表情をしていて、アタシと話すときは目を逸らす、追放した人間がその事を忘れているかのように接せられて、どうして良いか解らないだと思う。
追放されたのは仕方ないと思っている反面、どうしてアタシじゃなくてアレックスを選んだの? という気持ちは確かにあった。
アレックスの守護の力はアタシの役割と被っているだけでなくアレックスの方が強力、そっちに惹かれるのは仕方ないと思っている、思っているけど長年のアタシをアレックスに従って冷たく接し追放した事にやっぱり怒りを感じているのは否定できない。
だからと言って、その怒りを今のジェシカにぶつけるのは違う、もし、もしもジェシカがアタシを追い出した時と同じ、今までの事を後悔してなかったらぶつけてたかも・・・・・・。
「ペチカ!!」
背後からペチカちゃんを呼ぶ声が聞こえる。
振り向くとヨシュアさんが此方に向かって走ってくるのが見えた。
「ヨシュアだ」
「ペチカ、探したぞ。いきなり、手を振りほどいたら走って行くなんて・・・・・・」
まって。手を放したんじゃなくて、ペチカちゃんから手を振りほどいたんだ!?
こんなちっこい体にそんな力が・・・・・・、いや、急に振りほどかれて対処出来なかったのかも。
「君達、ペチカの面倒を見てくれてありがとう。イヴァンから聞いて来たんだ。
ほら、ペチカ、そろそろ時間だ。行こう」
「・・・・・・うん。お姉ちゃん達、ありがとう」
ヨシュアさんはアタシ達に御礼を言ってペチカちゃんと共に去って行った。
なんか、ペチカちゃん、屋台に行きたいとごねていたから、こうもあっさりと行かれると違和感。いや、ごねたら怒られると思ったのかな?
取り残されたアタシとジェシカはペチカちゃんが居なくなった事で、また気まずい雰囲気に。
さて、どうしたもんかな。
――――――
「ペチカ、色んなものを食べて楽しかったか?」
「・・・・・・うん、楽しかった」
「そうか。それは良かった」
ペチカと手を繋ぎ歩くヨシュアはペチカを全く見ないで歩く。ペチカもヨシュアを見るどころか下を向いて歩いていた。
仲の良い年の離れた兄妹という雰囲気は全くない。
二人はただただ歩く、会話の無いまま。
歩いた先にやってきたのはスラム街、そこで黒いロープを纏い仮面で顔を隠した男と合流する。
「遅いぞ。もうそろそろ挨拶が終わる」
「・・・・・・すみません。色々と準備に手間取っていたので」
「そうか。なら・・・・・・ 「へえ~、何をするつもりなんだ? 俺も混ぜてくれよ」
「なっ!? 貴方はギルドの!?」
「ああ、イヴァンだよ。なあ、ヨシュア、此処で何をしようとしてるんだ? 其処の胡散臭い、いや、教団の奴と」
二人の会話に割り込んだイヴァンは仮面の男を憎しみを込めて睨付けるも仮面の男は涼しげな表情を崩さない。
「やれやれ、後を付けられていたようだな。後の事は私がやろう。お前はこの男をどうにかしろ。ペチカ、コッチに来い」
「そうはさせるかよ!!」
イヴァンは仮面の男に向かって双剣を向けるも、それをヨシュアが片手剣一本で受け止める。
「此処は通さない」
「そうかよ、なら、無理矢理通らせてもらうぞ!!」
イヴァンは離れ体制を立て直し、片方の剣で脇を狙うが、また片手剣で受け止められてしまうも足で反対側の脇を狙うが易々と腕でガードされてしまう。
イヴァンとヨシュアに緊迫の空気が流れる中、男はペチカを連れて奥へと去ってしまった。
「全く、後を付けられるとは・・・・・・。まあ、いい、事が終われば、彼奴は処分だ。
さて、ペチカ、解っているな」
「・・・・・・・・・・・・はい」
ペチカは力なく返事をすると描かれている魔方陣の上に乗り呪文を唱え始める。
暫くして魔方陣を光り出した。
――――――
ペチカちゃんが居なくなった後、また気まずくなったアタシとジェシカは屋台を回っていた。
さすがにあの後、直ぐに解散出来る雰囲気でもなかったから。
会話をしないまま、ただただ屋台を見ては興味があったものを買ったりして回る。居心地が良いという訳ではないが幼い頃を思い出して、今の状態でも一緒にこうやって屋台を見て回る事が出来たのだから、まだマシなんだろうと思うことした。
――ズシン。
歩いていると地面が強く揺れた。
「な、なに!?」
「地震!?」
「お、おい、あれ・・・・・・」
男性客の一人が指を指す、その先には・・・・・・。
『グルルルル』
ダンジョンに生息するモンスターが唸り声を上げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます