第28話 お祭りどころじゃなくなりました
大広場。
第一王位継承者・レオンハルト、その婚約者であるジョセフィーヌの挨拶が終えると同時に現れたモンスターに二人を見に来た民衆達は騒ぎ、混乱を窮めていた。
「皆の者、落ち着け! ライオネル、私達よりも民衆の命を!」
「ハッ! 解りました!」
壇上に立つレオンハルトはパニックを起こしている民衆達に声をかけ、己の隣に居る護衛騎士の団長であるライオネルに命を下す。
まさに民衆を何よりも想う次期国王の姿に反吐が出そうな思いで見る者が日陰に潜む。
――ああ、憎い。殺してやる。殺してやる。
彼はスラム街に潜む王族を異常なまでに憎む過激派の一人だ。
自分が直接、王族に何かされた訳でもない。だが、幼い頃から王族に対する恨みを、憎しみを教え込まれてきた彼にとって王族は憎むべき存在であり排除すべき存在なのだ。
堂々と壇上に立つ姿が血塗れになる姿を想像し口を歪ませると懐からナイフを取り出し、そして・・・・・・。
「はい、危険物はしまってくださ~い」
後ろから赤い髪の女――カレンによって蹴りを入れられた男は王太子達にナイフを向けることなく気絶した。
「お前等の企みなんて最初から解ってるんだよ。さて、隠れてないで出てこい」
カレンがそう言い放つと殺気を隠すことなく潜んでいた男の仲間達が姿を現すと同時にカレンに襲いかかるが。
「甘い!!」
襲いかかってきた一人を殴り、次に来た者は蹴り、背後からの攻撃を躱し、時には仲間同士を相打ちさせるように躱す。
それから数分後、立っているのはカレンだけだった。
「呆気ない。教団の奴等から何かテコ入れされてると思ったんだが・・・・・・」
「リーダー!!」
「アウラ?」
男達が動かないよう縄で縛りながらカレンは彼らを、過激派を利用したのは何故かと考えていると走ってきたのか息を切らしたアウラがやってきた。
そんなアウラの姿にカレンは何かあったと察し、直ぐに問いただす。
「アウラ、何があった?」
「た、大変なの。ここ、大広場だけじゃないの。この街にあらゆる所でモンスターが出現したのよ!!」
「・・・・・・え?」
――――――
「
「ハァッ!! 千本氷柱!!」
ジェシカに攻撃、防御強化のスキルをかけるとジェシカはモンスターに向かって氷系の蹴り技を喰らわす。
モンスターは一瞬で凍り、もう動くことはなかった。
ジェシカは元から強かったけど、カレンさんに師事を受けてから益々強くなった。動きも速いし、何より強力な氷系スキルを覚えているのが大きい。
これはアタシもウカウカしてられないな。
屋台エリアに突如として現れたモンスターは、アタシ達を始め、今、この場にいる冒険者同士で協力して一般人の避難をさせながら、モンスターの対処に当たっている。
モンスターの数が減ったのを確認するとアタシは周りを見渡して、怪我人はいないか確認する。ジェシカには、今のところ、怪我はしてないみたい、他の冒険者達はアタシ以外の白魔術師達がフォローしているようだ。
――ピー!! ピー!!
怪我人、重傷を負っている者が居ないことに安堵していると通信機が鳴った。
「此方、フロルです! どうしましたか?」
『此方、カレン! フロル! 今、何処に居る!?』
「屋台エリアです! 突如、モンスターが出現しジェシカや他の冒険者と共に対応していました!」
『・・・・・・そうか、そっちにも出たか』
「カレンさん?」
『よく聞け、今、この街の至る所にモンスター達が出現している!』
「はい?」
通信機越しに伝えられた話は信じられない事だった。
屋台エリア以外にもモンスターが出現してるって事? どうして? 何が起きてるの?
『信じられないかもしれないが事実だ。抜かった、彼奴ら、教団の真の狙いは私ら、ギルドの壊滅、その事に気づけなかった!!』
「カレンさん・・・・・・?」
いつも冷静なカレンさんが取り乱している。
それに教団って? カレンさんは、この状況を起こしている存在を知っているの?
色んな疑問が頭の中を駆け巡る。だから、気付かなかった。
「フロル!!!!!!」
ドン!! と体を強く弾き飛ばされ、そこでようやく理解出来た。
アタシの近くにモンスターが居たこと。そのモンスターがアタシに鋭い牙を向けていたこと。アタシを突き飛ばしたのはジェシカだということ。
理解した時、アタシの顔に赤い液体がかかった。
鉄に似た匂いがするこの赤い液体、えっ、あっ、これって、もしかして・・・・・・。
「ジェシカ!!!!!!」
恐る恐る前を見る、アタシの顔にかかった赤い液体の正体、それはモンスターの牙に貫かれたジェシカの血だった。
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