第25話 お祭りが始まりました

 祭り当日。

 手伝いを終え、何とか無事に準備を終えたアタシ達は朝早くから朝会の為に集まっていた。


「あと数時間で祭りが始まる。

 今回は王都から第一王位継承者であるレオンハルト様とその婚約者であられるジョセフィーヌ様が来訪する。その為、例年以上に忙しくなる。だが、頑張りすぎるのも良くない、一人で無茶は絶対にするな、周り俺でも良いから必ず連絡しろ、気付いた者は必ず助けろ、我らギルドの精神は助け合いだ、これを忘れるな。

 それじゃあ、おめえ等!! 張り切って行くぞ!!!!!!」


 ギルドマスターが鼓舞を飛ばし、アタシ達、ギルド職員は手を上げ「おー!!」と声を上げる。

 こうして、祭りが始まった。


「嬢ちゃん、昨日に続いて悪いな。今日一日、売り子を頼むな!」


「はい、お任せ下さい!」


 アタシは昨日に引き続き、食堂の手伝いだ。

 今回は祭り限定のアッパルパイとミートパイの売り子として、入る事になっている。

 アタシの他に売り子として用事が済んだらアウラさんが来る予定で、料理長の補助としてアッシュさんが入っている。

 ヨシュアさんは料理長さんが休みを与えたと聞いた、どうも幼い妹さんが居るらしく妹さんと祭りを楽しむよう手配したとか。

 本当はもう一人居るんだけど、その人は昨日付で辞めさせたらしい。辞めさせたって事は何かしたのかな・・・・・・。


「すみません、アップルパイとミートパイ二つずつお願いします」


「はい、アップルパイ、ミートパイ、二つずつですね!」


 今は考え事してないで売り子に集中!!

 聞いていたとおり、食堂のアップルパイとミートパイは飛ぶように売れる売れる、次から次へとお客さんがやってきて忙しい。今回はレオンハルト様とジョセフィーヌ様を見るために他の街からやってきた人達も居るから例年以上に売れるかもしれないと料理長は言っていたから去年よりも多めに作る予定で居るけどお昼には完売しそうな勢いだ。

 グルグルと忙しさで目が回りそうになってたら。


「良い匂いにつられてきたら、顔見知りがいるじゃないか」


 聞き覚え、知っている人の声が聞こえた。


「リカルドさん!?」


「やあ、久しぶりだね。受付嬢さん達から祭りをやると聞いて来たんだ」


 レオンハルト様とジョセフィーヌ様が来訪する理由となった屋敷の主、妖精使いのリカルドさんが来た。

 実はあの調査以降、リカルドさんは時々ギルドに遊びに来るようになった。いつの間にかお土産、花の妖精達が作った花のジャムを持参して受付嬢さん達とお茶を飲んでたりとマイペースにギルド本部の人達と仲良くしている。

 それにしても、こういう賑やかな場所に来そうなイメージがなかったから驚いた。


「クスクス、賑やかそうな場所に私が居ることに驚いてるみたいだね」


「えっ、あっ、いや、その!」


「あんな暗い場所で妖精達と一緒とはいえ暮らしているのだから、そう思われてのは仕方ないか。

 此処に来たのは妖精達の為なんだ、話すと長くなるけど今は長話してる場合じゃないね、アップルパイを二つ、ミートパイを一つ頂こう」


「はい、アップルパイを二つにミートパイをお一つですね!」


 リカルドさんの後ろに居る人が此方をちょっと睨んでいる、ヤバい! お客さん待たせちゃダメ! リカルドさんの気遣いのお陰で助かった~。

 注文の品をリカルドさんは受け取ると少し会釈してこの場を去って行った。


 それから、用事を終えたアウラさんが合流して、売り子を続ける。

 まだまだお客さんが途切れる様子はない、頑張れアタシ!!



――――――

―――――

――――

―――

――



 リンゴーンとお昼を知らせる鐘が鳴り響くと永遠に続くと思っていたお客さんの流れが疎らになる。

 忙しさで忘れてたけどお昼すぎに王子様達が大広間で挨拶するのを思い出した、場所取りでお客さん達の大半はそっちに行ってるんだろう。

 疎らになったとはいえお客さんは来るので、此処から動くことは・・・・・・。


「フロルちゃん、お客さん少なくなったからお姉さんに任せて遊んできていいわよ」


「良いんですか!?」


「ええ、料理長からちゃんと了承貰ってるから安心して、それにお姉さんは去年も此処でお手伝いしてるから大丈夫よ」


「それなら、お言葉に甘えて・・・・・・」


 という訳で、調理場に居る料理長とアッシュさんに抜けることを伝えてからアタシは屋台エリアに躍り出る。

 いやっはー、屋台飯食い尽くすぞ!!!!!!


「キャッ!」


 と息巻いて屋台エリアに向かおうとしたら誰かにぶつかった。


「すみません!」


「いえ、此方こそ・・・・・・、フロル?」


「え? ジェシカ?」


 謝罪して顔を見たら、見知った人物――ジェシカだった。

 ジェシカはアタシだと解ると少し苦しそうな表情を浮かべる、アタシは普通に接してる事に対してジェシカは負い目からアタシにどう接していいか解らなくて、いつも苦しそうな顔をする。

 そんなジェシカにアタシは次の言葉が出なくて固まってしまう、気まずい。


「お姉ちゃん、どうしたの?」


 気まずい空気が流れる中、一人の少女がアタシ達に声をかけてきた。

 ふんわりとした金色の髪に白い肌、宝石のルビーを彷彿とさせる赤い目の幼い少女が不思議そうに見ていた。

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