第24話 お祭りの準備をしてました②
「うっめぇ~」
一人しかいない拠点で貰った肉だけの賄いサンドイッチを食べる。
お肉だけの賄いサンドイッチ凄く上手い!! 疲れが吹き飛ぶほど美味い!!
この中央地域のギルド食堂は美味しいって聞いてたけど、ジェシカ達と行動していた時は専らは大通りのちょっと流行のおしゃれなお店、治安維持部隊に入ってからはアウラさんの手作りを食べさせて貰ったりとかだったから、実は一度も食べたことがない。
この美味しさならヨシュアさん目当てじゃなくても通い詰めるわ。
「大口開けて食べて、そんなに美味しいのか?」
ガツガツと食べてたら、見廻りの最終確認の為に王都に行っていたカレンさんに声をかけられた。
余りの美味しさにカレンさんが帰ってきたことに気がつかなかった、反省。
「カレンさん、お帰りなさい! すみません、気がつかなくて!」
「気にすんな。よっぽど林檎の皮剥きで疲れてたんだろ? でも、そんなにガッツかないでゆっくり食べな、喉に詰まらせるぞ」
「はい、気をつけます。ところでジェシカは?」
「ジェシカなら寮に居るよ、ずっと、連れ回してたからね、休むように言ったんだ」
カレンさんの弟子になったジェシカはカレンさんと一緒に行動を共にしている。
弟子というのもあるが、今のジェシカには様々な経験をして成長してほしいと願いからだ。
ジェシカは最初は戸惑っていたけど、今はカレンさんの願いを感じ取りジェシカなりに頑張っている、周りもジェシカの頑張りを暖かく見守り応援しているようだ、最近では両親と手紙のやり取りをしていると聞いた。
当初はアタシの追い出しの件で周りがどう対応するか気がかりだったけど、アタシと深い関わりのあるセリエさん、マスター、治安維持部隊メンバー以外は追放の事は伏せられているようでジェシカはアレックスの被害者として扱われていると聞いて安堵したものだ。
確かに追放された事は心に残る出来事だしアレックス達にされた行いは消えない、だけど、それをジェシカにやり返すというのは違うかもしれないと考えている、偽善と言われるかもしれないけど自分がされた嫌な事はしたくない。
ただし、アレックス、テメーはダメだ!!!!!!
「そうだ、カレンさん、イヴァンさんから伝言があります。ここ数日、スラム街が騒がしいそうです」
「へえ・・・・・・」
色々と思い出していたら、イヴァンさんからの伝言を思い出してカレンさんに伝える。それを聞いたカレンさんの目が穏やかものから一気に鋭くなった。
スラム街には王族を異常なまでに嫌う人達――過激派が潜んでいる。イヴァンさんは王子来訪が知らせられて以降、祭りの準備と平行に過激派の動向を探っていた。
第一王位継承者である王太子とその婚約者の来訪の知らせはこの街を賑やかせた、どうもレオンハルト様とジョセフィーヌ様のロイヤルカップルは相当な人気らしく一目見たいと、この街の住人だけでなく近隣の街の人達から凄い数のお問い合わせがあった事を疲れ顔のセリエさんが教えてくれた。
これだけ大騒ぎとなるとスラム街まで来訪の件は聞こえてると考えて、イヴァンさんに偵察任務が下されたという訳だ。
「今、イヴァンは何処へ?」
「屋台の配置決めで揉め事が起きて、それの沈静に行ってます」
「そうか。まあ、今日の夜には祭りの最終チェックをするから、その時でいいか。それじゃあな、食堂の手伝い頑張れよ」
カレンさんはアタシに労りの言葉を言って去って行った、マスターの所にでも行くのだろう。
アタシは時計を見て、まだ時間があるのを確認すると、今度はサンドイッチをじっくり味わうように食べる。
さすがにガツガツ食べていたところを見られたのは恥ずかしかった。
――――――
フロルが休んでいる間、食堂では料理長とヨシュアはフロルが皮剥きした林檎を砂糖漬けにして煮込んでいた。
今は祭りの準備のため、食堂は休みにしている、そのため、昼の時間帯ならば騒がしいのだが今は調理音しか聞こえない。
「そうだ、ヨシュア。祭り当日は手伝いが入るからお前さんは休んでいいぞ」
「いいんですか? 調理人は今、俺含めて二人しか居ないのに」
フロルには話していなかったが本来は料理長、ヨシュアの他にもう一人居るのだが、ヨシュアが気に入らないと出てこなくなったのだ。
料理の腕は確かだが、性格は良いとは言えない人物でヨシュアの前に働いていた人間が実家を継ぐと逃げるように辞めていったのは、彼のせいではないかと食堂周りをよく知る人間は話す。
だが、来たばかりでそれを知らないヨシュアは自分のせいで来なくなった事に負い目を感じていた。
だから、料理長の話に嬉しさはあったものの困惑した。
「お前さん、彼奴が来なくなったのを自分のせいだと思って、俺以上に働いてるだろ、だから休め。それに、幼いお前さんの妹と祭りに行かないってのは勿体ない」
「・・・・・・料理長。解りました、ありがたく休みを頂戴させていただきます」
「そんなに御礼を言わなくてもいいぞ。まあ、楽しんでこい、ペチカちゃんもきっと喜ぶぞ」
深く御辞儀をするヨシュアに律儀な奴だなと思いながら、労りを込めて肩をポンポンと叩き、豪快に笑う。
だが、御辞儀をし顔を隠しているヨシュアは何処か苦しげな表情を浮かべていた。
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