第19話 崩壊まであと・・・・・・
「はあ!? 俺は逮捕するだ!! 俺は悪くないのに!! それに逮捕されるのはお前・・・・・・ 「黙れ、クソガキ」
アレックスの顔スレスレに思いっきり踏みつけるように足を置くとアレックスは小さな悲鳴を上げた。
その姿にカレンは馬鹿にしたように笑うと馬鹿にされたと解ったアレックスはカレンを蹴り上げようとしたが避けられてしまい、舌打ちをした。
「逮捕するのは当たり前だ。一般人、彼、ジャック・スミスに対しての暴行はしっかりと証拠がある、パーティーメンバーに関してはジェシカ・スミスから聞いただけでこれからだが」
「そんなんで逮捕するのかよ! それにお前は何の権限があって捕まえるつもりだ! 俺は冒険者だぞ!!」
「ああ、紹介がまだだったな、私はギルド本部所属、治安維持部隊・
治安維持部隊と聞いて、威勢を張っていたアレックスも流石に顔が引きつらせた。
ギルドに所属している冒険者が治安維持部隊を知らない訳がない、知らなかったら冒険者と偽り略奪を行う者達だけだろう。
分が悪いと判断したアレックスはあれ程、悪態をつきまくっていたというのに人懐こい笑みを浮かべた。
「あのカレンさんでしたか、何かの間違いじゃないんですか? 其処の彼の見間違いではないのですか? それに俺はパーティーメンバーに暴力を振るっていたなんて事は一切ありませんよ。今日は彼女達は労って好きな物を・・・・・・」
「今更、取り繕うなんて遅い」
取り繕うとするアレックスにカレンが今まで聞いたことがない低い声を放つ。
軽快に喋っていたアレックスもカレンから発する怒りを感じ取り、喋るのを止め、冷や汗を流した。
「あれだけ、私の前で悪態をついていた癖に今更だ。お前、馬鹿なんじゃないのか? いや、正真正銘の大馬鹿野郎か。
お前、彼を、ジャックを殴ったときにギルドは冒険者の味方だと言っていたらしいが正確にはお前のような愚かな冒険者は対象外なんだよ。
いいか、我々、ギルドが求める冒険者は戦う力を正しく使える奴だ。決して、お前のように力を持っているから上だと勘違いする奴じゃない。
ハッキリ言わせてもらう・・・・・・、お前のような屑が冒険者を名乗るな!!!!!! 恥を知れ!!!!!!」
大通りにカレンの声が響く。
アレックスはカレンの覇気に怯えた、敵わないと本能で悟るとリコとミーシェを置いて逃げようと考える。カレンに気付かれないようにそっと辺りを見渡し逃げる算段をするが、此処でアレックスは周りに人が集まっている事に気付く。
あれだけ騒いだのならと思うが、様子が違う。皆、アレックスを睨付け、逃がさないとばかりに囲んでいた。
その様子にアレックスは理解した、周りを取り囲む者達がカレンの、治安維持部隊の協力者である事を。
そして、ジェシカは足止めであり最初から仕組まれていた事だと解ると顔を歪ませた。
「その様子だと漸く気付いたって所か。
そう、ジェシカは足止め、お前には愛想尽かしたとさ! 周りに居る彼らは冒険者達だ、協力を頼んだら、皆、快く承諾してくれたよ。お前の悪行は冒険者達に知れ渡っていたからな」
勝ち誇った笑みを浮かべるカレンにアレックスはクソババアと心の中で吐き捨てたが、こんな状況の中で勝てる算段が出来た事を喜んでいた。
──恐らく、俺を捕まえるために周りの奴等が動くだろう。その時に‼️
誰にも気付かれないよう、気を落としたフリをしてアレックスは大勢の人間が倒れる様を思い浮かべてニヤリと笑い、すぐに逃げられるよう懐に忍ばせた煙玉を手に取った。
「私は大勢でたった一人をボコるなんて趣味はない。此処は一対一の勝負をしようじゃないか」
逃げ出す準備をしているアレックスにカレンはそう言って練習用の木の剣を投げ渡す。
予想外の行動にアレックスは煙玉を落とし呆然とする、そんなアレックスの様子を気にとめることもなくカレンは拳を構えた。
「さあ、剣を取れ、一対一の勝負、決闘をしよう。どうした? 剣を取れ、細工なんて一切してないぞ? 私にも守護の力とやらを見せてくれよ」
挑発するもアレックスは剣を取らない、顔を伏せ、どんな表情をしているのか解らないが焦っている事は解った。
――――――
「あのアレックスが挑発されているのに剣を取らない・・・・・・」
ギルド内部の治安維持部隊拠点からアタシ、お姉ちゃん、アウラさんと共に通信水晶から映し出されているカレンさんとアレックスのやり取りを見ていた。
イヴァンさん、デンさん、アッシュさんはカレンさんの近くで待機、アタシはカレンさんから私達が全てやるから安全な所にお姉さんと一緒に居ろと言われてしまい、アウラさんを見張り役兼護衛として拠点に待機という事になったのだ。
この対応はありがたかった。ジェシカ達、幼馴染にもアレックスにもどう接していいか解らないし怖い。例え、今、この水晶越しでもアレックスを見るとされた事を思い出して頭が痛くなる。
でも、頭が痛くても、アタシは今行われているやり取りを見る事を願い出た。追い出されたとはいえ、所属していたパーティーがどうなるか、この目で見たいと思ったからだ。
水晶には未だ剣を取らないアレックスが映る。
あの怒りやすい性格を考えると挑発を受ければあっさりと剣を取る筈だ、それなのに取らないという事は・・・・・・。
「やっぱり、レナードさん達が言ってた事は当たってたって事かな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます