第16話 後始末をしました(と言ってもやったのはマスターとカレンさん)
屋敷から帰ってきたアタシ達はギルドマスターとカレンさんにリカルドさんの話を報告すると直ぐさま依頼人に明日の昼頃に依頼について聞きたい事があるから来て欲しいと通達した。
ここからはセリエさんから聞いた話だ。
約束通り、父親と共にやってきた依頼人の貴族は最初はシラを切っていたが隠れて話を聞いていたリカルドさん(アタシ達が呼んだ)が出てきたら、あっさりと白状した。
リカルドさんの屋敷を自分の愛人にプレゼントするつもりだったらしい、それを聞いた依頼人の父親は大激怒、その場で勘当したそうだ。
「愛人が居たから勘当されたんですか?」
「いや、愛人が居ることじゃなくて、その愛人が相当ヤバい事をやらかした人だからみたいよ」
「ええ!?」
セリエさん曰く、貴族が愛人を囲うのは珍しい事ではない、政略結婚が当たり前だからこそらしいがアタシには理解できない。
で、そのやらかした内容というのは第一王位継承者である王太子にアプローチしたが無視されたのを理由に王太子の婚約者を自分を虐めたと周りに言い触らして陥れようとしたとか。
それを知った王太子は大激怒、王太子が婚約者を溺愛してるのは有名な話で怒るのは当然の事だった。
愛人は公衆の面前で断罪され、家からも追い出されてしまい、頼ったのが自分の取り巻きの一人である依頼人だったという訳だ。
「それでひっそりと暮らせるように森の中にある屋敷をプレゼントしようとしたって訳ですね」
「そういう事。貴族って本当に何を考えてるか解らないわ~。
で、依頼人が勘当されたからって処罰を与えないわけには行かないから違反金を支払うまで依頼を受け付けないって事になったそうよ。
当然、払うのは依頼人、勘当されたからには実家は頼れないから王都の強制労働所に送って払わせるって言ってたそうよ、父親が」
「それは大変ですね、まあ、自業自得なんですけど」
「本当にね~」
依頼人の話は其処までにしてムシャムシャとアウラさんが作ったカップケーキを食べながらセリエさんとのお茶会を楽しむ。
料理上手のアウラさんのカップケーキ、本当に美味しい、家族に食べさせたいな~、頼めば作ってくれるかな? いや、流石に図々しいか。
家族と言えば、まだ手紙出してなかったな。家族にパーティーを追放された事を教えるかどうか迷ってて、結局、決められないまま手紙を送れないでいる。
ちゃんと今まで欠かさず定期的に送ってたから心配してそう。でも、無理して送らなくてもいいって言ってたし、いつか追放を事を書けるようになったら送るか。
今はこの穏やかな時間を・・・・・・。
「フロル! 此処に居たのか!?」
楽しむ時間はなさそうだ。
イヴァンさんが息を切らしながらやってきた、何か問題でも起きたのかな?
「イヴァンさん、どうしたんですか? 何か起きたんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「イヴァンさん?」
ジッとアタシを難しい顔をして見て、深く息を吸って吐いてを繰り返して、漸くイヴァンさんは口を開いた。
「フロル、お前には辛いかもしれないが来て欲しい」
「アタシにとって辛い・・・・・・?」
「・・・・・・ああ、詳しい事は着いたら話す」
言い終わると着いてこいと言わんばかりに背を向けて歩き出したイヴァンさんの後をセリエさんに抜けることを詫びてから着いていく。
アタシにとって辛いってどういう意味なのだろうか? アタシにとって辛いこと? もしかして、前のパーティーの事? いやいや、流石にそれはないと思いたい。
着いた先はギルドが運営する治療院のとある一室だった。
其処に居たのは・・・・・・。
「お姉ちゃん・・・・・・?」
お姉ちゃん、アタシの実姉・マチルダがベッド横の椅子に座っていた。
お姉ちゃんはアタシに気付くと驚いた表情をしてアタシの方にやってくる、どうして此処に居るの?
「フロル、フロルなの?」
「どうして、お姉ちゃんが此処に? 怪我でも?」
「此処に来た理由は落ち着いたら話すわ。怪我はしてないわ、ワタシはね」
そこでアタシはベッドの上に誰かが寝ている事に漸く気付く。
顔は赤く腫れ上がっていて、体には蹴られた痕、何者かに暴力を振られたのだと一目で解るほど痛々しい姿で寝ているその人はアタシがよく知る人だった。
「ジャックさん!?」
ベッドで寝ていたのは幼馴染の一人、ジェシカの兄であるジャックさん、大柄な体躯の人だが温厚な兄貴分、それがジャックさん。
いつもニコニコと笑っている人でジェシカだけでなくアタシ達も妹同然に可愛がって面倒を見てくれていた、その人が今、痛々しい姿になって寝ている。
何があったっていうの?
「ジャックさん!? 何があったの!? 誰にやられたの!?」
「アレックスよ、アレックスがやったの」
聞き覚えのある凜とした声が教えてくれた。
・・・・・・なんで、彼女が此処に?
恐る恐る声がした方を見る、其処にはアタシが予想した通りの少女が、ジェシカが立っていた。
彼女の右頬は殴られたのか赤く腫れ上がっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます