第15話 とんでもない事実が発覚しました

 唸り声を上げ、アタシ達を睨付ける狼のような獣。

 完全にアタシ達を敵と見なし、威嚇している。


「嘘でしょ!? クーシー、妖精の番犬・クーシーが此処に居るなんて!?」


 信じられないとアウラさんが騒ぐ。

 アウラさんはあの獣の正体を知っているみたい、此処に居るのが信じられないという事は。


「アウラさん、あの獣は自然界の妖精なんですか?」


「ええ、そうよ。クーシーは妖精の番犬の通称通り、妖精の住処を守る狼型の妖精なの。屋敷に居るような存在じゃないわ」


「本当はこの場に居るのがおかしい存在なんですね」


「お二人さん、のんびり会話してる場合じゃないぜ」


 クーシーはブラウニーを口から離すとアタシ達に襲いかかってきた!! やっぱりこういう展開になりますよね!?

 イヴァンさんがクーシーを迎え撃つ、双剣をクロスに構えて噛みつき攻撃を躱す、クーシーは攻撃を躱されたのが不満だったのかイヴァンさんを標的に定め、執拗に攻める。

 妖精の番犬と呼ばれているせいか鉄で出来た剣に臆することなくイヴァンさんへ容赦のない攻撃で攻める、段々とイヴァンさんが押され始めた。


防御強化ガードアップ!! 更に攻撃強化アタックアップ・中!!」


 このままではヤバいとアタシはイヴァンさんの防御と攻撃力を上げる。

 ダンジョン調査後、攻撃強化スキルを中級に上げた、前より攻撃力が上がるからクーシーとやりあえると思う。

 アリアさんは先ほどの光魔法で魔力をかなり消費してるだろうから魔力回復と疲労回復をかける、これでアウラさんも十分に動けるはず。


「フロルちゃん、ありがとうね♪

 イヴァンちゃん! お姉さんがサポートするからクーシーは倒しちゃダメよ! 気絶させて! 倒したら妖精達の報復が待ってるわ!」


「了解!! うおりゃっ!!」


『グルッ!!』


 攻撃力が上がったからか押され始めたイヴァンさんが押し返す、だけどクーシーも負けじとその場で踏ん張る。

 アウラさんは弓を構えながら様子見をしている、今はイヴァンさんとクーシーの力のせめぎ合いになっている、迂闊に手を出せないんだろう。


「クゥ!! そこまでだ!!」


 長期戦になるだろうと考えていたら、クーシーを制止する声が響く。

 声を聞いたクーシーはイヴァンさんへの攻撃を止めると声の主の元へと行ってしまった。


「いやぁ~、見事見事、君達、今までの刺客と違うね~。

 君達以外は泣いてすぐに帰って行ったのに、でも、妖精に詳しいエルフが居るんじゃ仕方ないか」


 白衣を着た長い黒髪を1つに束ねた女性がアタシ達に拍手をしながら歩いてくる。

 彼女の背には身長よりも長い杖が、あの杖、本で見たことあるような・・・・・・。


「その杖・・・・・・。貴女、妖精使いフェアリーテイマーね」


 アウラさんの言葉で思い出した!! あの人が持ってる杖、妖精と会話する為の特別製の杖だ!!

 ん? 此処に妖精使いが居るって事は・・・・・・。


「ご名答、流石はエルフって所かな? そう、私は妖精使いのリカルド。

 この屋敷、君達を襲ったブラウニーとクーシーは私と契約した妖精達さ」


 やっぱり、この人が、リカルドさんがこの幽霊騒動の元凶か!!

 でも、アタシ達に向かって『刺客』って言ってなかったけ? 何か勘違いしてる?


「そうか、アンタが幽霊騒動の元凶か。

 オレの名はイヴァン、此奴らは弓使いのエルフのアウラと白魔術師のフロルだ。

 何か勘違いしてるようだから言っておくがオレ達と今までこの屋敷に来ていた冒険者達は刺客じゃない」


「刺客じゃない? 彼奴は私が出て行かないなら刺客を送ると言っていたが違うのかい?」


「ちょっと待て、それはどういう意味だ? 詳しく教えてくれ!!」


 リカルドさんが語るには。

 この屋敷はリカルドさんの師匠である妖精使いの一族が建てたお屋敷で自分は旅に出るからと弟子であるリカルドさんに譲ったという。

 だけど、ある日、身なりの良い貴族だと名乗る男が現れて、この屋敷を譲れと言ってきた。

 リカルドさんはそれを拒否、突然、現れて此処を譲れと言ってきた男に譲る気は一切無いとブラウニー達を使って追い返した、その去り際に男は「刺客を送って追い出してやる!!」と叫んで帰って行った。

 それから数日後、男の言うとおり刺客がやってきた、どうやって追い出そうかと考えていたら、刺客の一人が屋敷の内装を見て幽霊が出そうと言っているのを聞こえ、それで妖精達を使い、怪異現象を起こさせて追い返した、そして今に至るという訳だ。


 リカルドさんは最後に屋敷譲渡の書類を見せてくれた、書類にはしっかりと元の屋敷の人の署名でリカルドさんに屋敷を譲ると書かれていた。


「あ~・・・・・・、これはアレだな、黒だな」


「そうね、完全に黒だわ」


「そうですね、黒ですよね・・・・・・」


 依頼人はリカルドさんを追い出すために依頼を出したのだ。

 ギルドは人を害する依頼は禁止されているから「モンスター討伐」と偽の依頼を出し、冒険者達を使って追い出そうと考えたに違いない、最悪!!

 リカルドさんはまだ状況を理解出来てないのか、アタシ達を不思議そうに見ていた。


「黒ってどういう意味だい? 君達や今までの彼らは彼奴の刺客じゃないって事で良いんだね?」


「ああ、そうだ、オレ達は調査の為だが屋敷に居着いたモンスターの討伐依頼として冒険者達は此処に来ていた。

 偽とは言え、貴女に多大な迷惑をかけたギルドとして謝罪を」


 イヴァンさんの言葉に続いてアタシとアウラさんも頭を下げ、謝罪をする。

 当のリカルドさんはまだ理解出来ていないらしく、謝罪するアタシ達を不可解そうに見ていた。

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