第9話 ダンジョン調査開始しました②


「明日いや今日の夜にはキングゴブリンになっているかもしれない」


 アッシュさんの言葉に一同が静まり・・・・・・ 「ふん、久々の強敵という訳か。面白い!!」 あれ?


「カ、カレンさん、やる気満々ですね・・・・・・」


「最近、雑魚ばっかりだったし戦う気で行っても直ぐに謝罪ばっかだったからな。

 いや~、久々に暴れるぜ」


「カレンの姐さん、だからってオレの分まで奪わないで下さいよ。

 オレも暴れたりなくてしょうがなかったんですから」


「イヴァンさん?」


「も~、二人とも! お姉さんより抜け駆けは許しませんよ~!

 お姉さんだって大活躍したいんだから!」


「アウラさん?」


「おいおい、若いもんが無理するんじゃない!

 此処は老いぼれの儂の盾で大物は粉砕するから黙って見ていろ!」


「デンさん?」


 皆さん、相手が強敵だと知ってやる気が、いや、る気が凄い。

 もしかして治安維持部隊、アッシュさん以外はもしかして・・・・・・、ある言葉が頭に過ぎったのと、今の皆のテンションについて行けなくて少し傍を離れた。

 見える、殺意のオーラが見える、真っ赤なオーラが。


「あ~、彼らのあれは今に始まったことじゃないよ」


「強敵とか現れた時はいつもあんな感じなんですね?」


「彼奴らは所謂、戦闘マニアまあ戦闘狂という奴にゃ。強い奴が相手だと解ると、ああやって血気盛んになるにゃ」


 レナードさんがハッキリ言った!

 やっぱりそうだよね!!

 そうでないと此処までやる気でないよね!!

 でも、まあ、怖じ気つくよりはマシ・・・・・・なのかな?


「で、アッシュはモンスターマニアにゃ」


「レナードさん! ボクは探検家ですよ! 現場に行ってどんなモンスターが居るのか調査するのがボク達、探検家の仕事です! 仕事でモンスターを調べてるんです!

 確かにモンスターという存在はボク達、コボルトとほぼ同じような容姿のモンスターがいるにも関わらず人間やボク達のようや種族にも敵意を剥き出しにし襲いかかる、本能というべきその行動にボクは興味をそそられて・・・・・・」


「アッシュさん?」


 あれ? アッシュさん、凄い早口でモンスターについて話してない? しかも目がヤバい・・・・・・。

 そんなアッシュさんの様子にレナードさんは「また自分の世界に入ってしまったにゃ」とあちゃーというポーズをした。

 自分の世界に入ったじゃないよ!!

 カレンさん達はフフフフと闘志燃やしながら笑ってるしアッシュさんは一人でベラベラと話し続けてるし、調査隊の皆さんはそんな様子の治安維持部隊を怖がってるし、これは、アタシが正気に戻すしかない!!!!!!

 

 正気に戻す方法、それは。


「すーはー・・・・・・、皆さ~ん!!!!!! いい加減、現実に戻ってきて下さ~い!!!!!!」


 大声で叫ぶことだ。

 結構、成功率高めだったりする。



「フロル、すまない」


「正気に戻ってくれればいいんです。さあ、行きましょう」


 カレンさんが代表としてアタシに謝罪してきた、他の人達は申し訳なさそうにしているが今は調査を最優先。

 またアッシュさんとデンさんを先頭、後ろをアウラさんとイヴァンさん、真ん中に残りのメンバーという形で陣形を取り、アッシュさんが罠の気配を感じたらアタシがサーチ、見つけた罠をアッシュさんが解除しながら進む。

 地下一階も同様に進む。

 その道中、ゴブリンどころか他の低級モンスターに一切出くわさなかった。アッシュさん曰く、ゴブリンに食われたのだろうとのことだ。

 無駄に足止めされない事は良いことなんだろうけど、ゴブリンがそれだけ力を持ったという事だから良いことではない。


 地下二階につくと血の匂いがぶわっと広がる、そして広がる光景にアタシは「ひぃっ!!」と悲鳴を上げた。


 他の低級モンスターの死骸がぶら下がっていた。

 その数は数え切れないほど。


 アタシは吐きそうになるのを堪える、あの時、ダンジョン前の時と同じ失態をしたくないから。

 後ろから調査隊の嫌な匂いにゃ~、鼻がひん曲がるにゃ~、死骸怖いにゃ~という声が聞こえてくる、頑張れ! ケットシー調査隊!!


「フ~ン、彼奴ら、こうなりたくなかったら帰れって事か?

 デン、をやるから結界を」


「あいわかった、お前達、儂の後ろから出るなよ。防御術式発動!!」


 デンさんが防御術発動を確認するとカレンさんは祈るように両手を握る。

 しばらくして両手が、炎、蒼い炎が纏う。蒼い炎、凄く綺麗、高温になると蒼くなるって聞いたけど初めて見た。

 カレンさんは蒼い炎に包まれた両手を・・・・・・。


「うおりゃあ!!!!!!」


 拳にして思いっきり地面に叩きつけた!!


 叩きつけた所から蒼い炎は凄い勢いで広がり、たちまち死骸を焼き尽くす。

 これは凄い威力だ、だからカレンさんはデンさんに防御するように言ったのか。

 炎はぶら下がった死骸を灰になるまで焼き尽くすと威力は段々と小さくなり、残ったのは焦げ臭い匂いだけ。

 凄く臭い!!


「はい、一丁上がり!! これで死骸を気にせず行けるぞ」


 そう言って豪快に笑うカレンさん。

 確かに気にならなくなったけど、焦げ臭い・・・・・・。


「さて、おちゃらけるのはこれぐらいにして・・・・・・、こんだけ焦げ臭い匂いがするんだ。

 お前等、構えろ。来るぞ」


 言い終わるとほぼ同時にギィシャア!! と雄叫びを上げながらゴブリンが襲いかかる、カレンさんは襲ってきたゴブリンの頭を拳で粉砕し返り討ちにした。

 カレンさんの言うとおり奥からゴブリンがやってきた、また大量に!!


「気をつけろ! 今回はジャイアントゴブリンが近くに居る!!

 近くに居る分、強化された此奴らは外と戦ったゴブリンより強い!! 油断するなよ!!」


「「「「「にゃ~、怖いにゃ~」」」」」


「みゃ~達は安全な所に隠れるにゃ」


「「「「「にゃ~、解ったにゃ~」」」」」


 調査隊の皆さん、安全な所へ隠れていて下さい。

 此処はアタシ達がやらなきゃいけない、アタシは自分が出来るだけの事をやらなきゃ、足手まといと言われるのはもう嫌!!


「皆さんに攻撃強化アタックアップ! 更に加速強化スピードアップ! デンさんには魔力回復マナヒール!」


 今使える白魔術スキルを皆に使う、防御術で魔力をかなり消費しているデンさんには回復も。

 あとは、もしゴブリンがアタシの方に攻撃してきた場合を想定して攻撃用アイテムと疲労で回復が追いつかない時用の回復アイテムをいくつか取り出す。

 アイテム使用スキルを覚えているからアイテムでの支援も出来る。

 此処を切り抜けたらジャイアントゴブリンだ。

 絶対に切り抜けてやる!!

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