第8話 ダンジョン調査開始しました
出てくるゴブリンをカレンさんが拳で粉砕する、イヴァンさんは2つの剣で切り刻み、アウラさんは魔力を込めた矢で仕留め、アッシュさんはナイフで的確に急所を狙う。
アタシは状況を見極めながら回復魔法や強化魔法を使い、デンさんはアタシ達、支援職にゴブリンが寄ってこないように防御術を展開しながら盾でゴブリンを倒す。
日が暮れ始めた頃、ようやくゴブリンがダンジョンから出てこないのを確認するとアタシはその場に座り込んでしまった、今日で二度目。
「ふう、もう出てこなくなったな。フロル、大丈夫か?」
「大丈夫です、カレンさんは大丈夫ですか? 怪我はありませんか?」
「大丈夫だ、怪我はない。フロル、初めてにしては冷静に対処したな、よく頑張った!!」
「痛い! 痛いですよ! カレンさん!」
バンバンと背中を叩くカレンさんに抗議を入れるとカレンさんは悪い悪いと言いながら今度はワシャワシャと頭を撫でられる。
髪の毛が乱れる!! けど怒れない!!
「そちらは大丈夫ですか? お怪我は見たところないようですが・・・・・・」
アタシと一緒に戦っていた白いフードを着た白魔術師が話しかけてきた、その後ろにはデンさんと共に戦っていた黒い鎧の剣士、あとは白い鎧に身を包んだ女性と露出が高い魔術服を着た攻撃型の黒魔術師がいた。
此処に来る途中にデンさんと一緒に調査隊も先に来てるって言ってったっけ。この人達が調査隊?
「いや、此方は大丈夫だ。
それより、SSランク冒険者である貴方方のご協力に感謝する、彼等を、新人冒険者達達を救助し、いち早くダンジョンの異常を報告してくれたのも貴方方だと聞いております」
え? この人達は調査隊じゃなくてSSランク冒険者!?
「俺達は別に御礼を言われるような事はしてねえよ」
「それに私達は彼等を、新人達を助けるのに精一杯でジャイアントゴブリンを討伐出来ず、ギルドに負担をかけてしまった事を謝罪します」
「いや、ダンジョンの異常を解決するのはギルドの役目、貴方方は立派な活躍をしました。だから頭を下げず前を向いて下さい。
此処からは私達、ギルドの仕事です。ゆっくりと次の冒険に備えて体を休めてください」
カレンさんと会ってそんなに経ってないけど敬語を使うカレンさんに違和感が・・・・・・。
一緒に戦っていたのはSSランク冒険者だったのか、悲鳴を聞きつけてジャイアントゴブリン率いるゴブリン達に襲われた新人達を助け出すとは物語のヒーローみたい!!
それはそうと調査隊は何処に?
「お~、おみゃ~ら、此処に隠れていたのにゃ!」
「「「「「にゃ~、リーダー! 怖かったですにゃ!」」」」」
レナードさんが草むらから呼びかけるとゾロゾロとケットシー達が出てきた。
もしかして、調査隊って・・・・・・。
「みゃ~達、ケットシーは魔導機の扱いに長けてるけど戦闘はからっきしなのにゃ」
「だからボク達、治安維持部隊が護衛として付いて行ってるんだ」
「「「「「にゃ~、ボク達は戦うのきらいにゃ~!」」」」」
アッシュさんに続くように調査隊と書かれた帽子を被ったケットシー達が胸を張って言う台詞じゃない台詞を言う。
そこは誇れる所じゃないような気がする、でも可愛いから許す!!
「さて、日が暮れそうだが・・・・・・、ダンジョン調査を始めるぞ!!」
カレンさんが声を上げた。
アタシとって初のダンジョン調査が始まった。
――始まりのダンジョン・1F
SSランク冒険者達は何が起きるか解らないからと入り口で待機しているという、いや、アタシが言っちゃうのもあれだけど頼もしいかぎり。
ダンジョンに入るとあれだけゴブリンが出てきたにも関わらず閑散としている、とても静かだ。
「・・・・・・静かですね。あれだけのゴブリンが出てきたのにジャイアントゴブリンも居ない」
「恐らく、地下二階の巣に逃げたんだろう」
アタシの疑問に先頭で歩くアッシュさんが答える。
逃げた? 聞いた話だと大量のゴブリンを従えていたのに逃げる必要があるのだろうか。
やっぱり体は大きくても臆病な性格なのは変わらないのかなと言うとアッシュさんは否と答えた。
「恐らくだけどボク達を返り討ちする為に力を蓄えているんだとボクは推測している。あの大量のゴブリン達は時間稼ぎと言ったところかな。
ジャイアントゴブリンは此処まで来ていたんだ、居てもおかしくはない。だけど、此処まで静かという事は、獲物だった冒険者に逃げられた事で増援を呼ばれるのに勘づいた可能性が高い」
「増援に勘づいた!? ジャイアントゴブリンって、そんなに頭が良いんですか!?」
「いや、群れを従える能力はあるけど、其処までは・・・・・・。
だが、例外はある。フロルちゃん、キングゴブリンって知ってるかい?」
キングゴブリン、上級モンスターの中で一番有名かもしれない。
その名のとおりゴブリン達の王様的な存在で知能が高く中には人間の言葉を理解し話す個体も居るらしい。
確かジャイアントゴブリンの中で一番優秀なのがキングゴブリンになれるとか。
一番優秀なジャイアントゴブリン、そこでアタシは気付いた。
此処、始まりのダンジョンに出現したジャイアントゴブリンは・・・・・・。
「正解、此処に居るのはキングゴブリンに近い、いや、いずれキングゴブリンになるジャイアントゴブリンだ」
「それは厄介だにゃ~。キングゴブリンになられたら、このダンジョンは狭いからきっと、ダンジョン外、この辺りを通る人間にも被害が及ぶにゃ」
レナードさんがアッシュさんに続けて言うと後ろに居る調査隊達が怖いにゃ~と泣く、可愛いな君達。
調査隊を守るために後ろに居るアウラさんなんて、余りの可愛さにウットリしてるしイヴァンさんは顔がにやけないように必死だ。
「レナード殿の言うとおりそれは厄介な事になりますな、ですが、1つ疑問が。
キングゴブリンになるにはある一定のゴブリンを従えているのも条件の1つ、繁殖能力が高いとはいえジャイアントゴブリンが現れた所であれだけのゴブリンが出てくるのはおかしい」
アッシュさんと共に先頭で歩くデンさんが口を開いた。
デンさんの話からするとキングゴブリンになるには能力が高い事と率いるゴブリンの数が満たさなければなれない。
確かにこの狭いダンジョンはゴブリンの主食である鉱物は乏しい、だから、ゴブリンの数は限定される、退治しても居なくならないのは繁殖力が高いからだ。
つまりキングゴブリンになれる要素がこのダンジョンにはないのだ、デンさんの言うとおり、おかしい。このダンジョンに何が起きているのだろうか。
「・・・・・・それはボクにも解らない。それを知るためにも地下二階にと言いたいところだけど、フロルちゃん、サーチ魔法をお願いしてくれないかな?」
「解りました。サーチャー発動!!」
杖を掲げ、サーチ魔法を発動する。
杖に付けられた魔石が赤く光り、辺りを照らすとアタシ達の目の前に暗い空間が見つかった。
これは!?
「やっぱりね、それ!!」
アッシュさんが近くにあった石を投げると地面に大きな穴が!!
間違いなくこれは落とし穴だ、底には無数の先端が尖った石が並べられていた、殺意が高い!!
「このダンジョンには罠がないはずじゃ・・・・・・」
「きっとゴブリン達だね、ジャイアントゴブリンが指揮して作らせたに違いない。
これは本当に早くしないとヤバいぞ。
明日いや今日の夜ぐらいにはキングゴブリンになっているかもしれない」
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