第7話 帰ってきたら大変な事になってました
ふらつく体をイヴァンさんに支えられながら帰ると・・・・・・。
「怪我人は何人だ!?」
「一人が軽傷、他の四人が重傷です!!」
「ダンジョンに残っている冒険者は!?」
「居ません! 確認したところ、今日、あのダンジョンに潜っていたのはこの五人だけです!!」
「そうか! 怪我人はどうしてる!?」
「今は治療院で治療中です!!」
マスターを中心に何やら騒いでいた。
ギルド内は騒然としていて受付嬢達を始め人が彼方此方にバタバタと走っている。
「これは一体・・・・・・?」
「おおっ! 帰ってきたのか!!」
「ボス! 何があったんだ!?」
「話してやりたい所だが今は忙しい身だ、すまないが詳しい話はカレンに聞いてくれ。今はダンジョン管理課のレナードと会議室で話し合いをしている」
「解った。フロル、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。行きましょう!」
こんな騒ぎの中で凹んでる場合じゃない。
イヴァンさんと共にカレンさん達が居る会議室へ向かった。
イヴァンさんが慌ただしくノックをしてから会議室へ入ると出迎えてくれたカレンさんがイヴァンさんの頭、脳天辺りに思いっきり拳骨をお見舞いした。
いきなりなぜ!? 今は緊急事態なのでは!?
「イヴァン!! お前、通信機を忘れただろう!? 何度言えば解るんだ!!
まだフロルの分の通信機は出来てないから絶対に持って行けと言っただろ!!」
「す、すみません・・・・・・」
凄く痛かったのかイヴァンさんは涙目になりながら謝罪した。
拳骨の理由はイヴァンさんが通信機を持って行かなかった事らしい、この様子だと常習犯だな。
しかも緊急事態が発生して連絡が取れない状況がカレンさんの怒りを増長したって所かなと冷静に判断してみる。
「ったく、早めに帰って来くれたから良かったものの、いいか・・・・・・ 「あの! カレンさん!! 今、何が起きてるんですか!?」
説教が始まる雰囲気を阻止すべく割って入るとカレンさんはこほんと咳払いして入れと促され、ようやく会議室へ。
会議室にはデンさん以外の治安維持部隊のメンバーと魔導歩行機に乗った白衣を着た白黒のブチ模様のケットシーが居た、ケットシーはアタシを珍しそうに見ると「君が新しいメンバーかにゃ?」と声をかけてきた。
「はい、白魔術師のフロルです」
「そうかそうか、前にいたメンバーも白魔術師だったにゃ、懐かしいにゃ~。
ミャーはダンジョン管理課課長のレナードにゃ、よろしくにゃ」
ニコッと笑うケットシーのレナードさん、可愛い。
毛並みもモフモフしてそう、触りたいけど今はそれどころじゃないから抑えておこう。
アタシが椅子に座るのを確認するとカレンさんは全員から見られる位置につくと口を開いた。
「さて、全員、揃った所で改めて会議を始める。
始まりのダンジョンと呼ばれる初級ランクダンジョンに・・・・・・
ジャイアントゴブリンの出現が確認された」
――ジャイアントゴブリン。
ゴブリンが一回りどころか二回り大きな体を持つゴブリンのリーダー格。
このジャイアントゴブリンが居るだけでゴブリンの数も強さも違うと言われ、驚異と考える冒険者も多い。
だけどジャイアントゴブリンが生まれるには条件が必要で、初級とランク付されたダンジョンにはゴブリンが主食としている鉱物資源が乏しく力を蓄えられないから、ジャイアントゴブリンが生まれないと言われているのだが。
「条件を満たしていないにも関わらずジャイアントゴブリンが出現したということですね?」
「ああ、そうだ。今現在、ジャイアントゴブリンが出現した原因はまだ解らない。
その原因を探る為にダンジョン管理課の調査隊と共に我ら治安維持部隊はそのダンジョンに潜るぞ。
フロル、今日から治安維持部隊に入ったばかりのお前には多少厳しいかもしれないが頼むぞ」
「・・・・・・はい、解りました。白魔術師として皆さんの補佐を務めます」
「ああ、頼んだぞ。ダンジョンには先にデンと調査隊が行っている。行くぞ!!」
――――――
――始まりのダンジョン。
冒険者になって初めて潜ったダンジョン、新人の冒険者で溢れ賑やかだった事を覚えている。
あの時は何もかも新鮮で楽しかったな。
思い出に浸りながらやってくるとダンジョンの入り口は酷い事になっていた。
「どっせい!!」
デンさんが巨大な盾でダンジョンから出てくるゴブリンを押しつぶす、グチャッと音が聞こえると抵抗していたゴブリンはピクリと動かなくなった。
「ふう~、やれやれダンジョン外まで出てくるとは・・・・・・」
「ドワーフのおっさん、アンタの仲間達が来たぜ!」
「おお、ようやく着たか! 待ちくたびれたぞ!」
こっちを向きながら盾を使ってゴブリンを退けるデンさん、そのゴブリン達をデンさんに話しかけた黒い鎧の剣士が切り刻む、綺麗な連携に感嘆する。
デンさん達には見たところ怪我はないようだが、辺りはゴブリン達の死骸や血で悲惨な状況になっている。
モンスターの死骸には慣れているけど、濃い血の匂いにアタシは吐きそうになった。
「ぅぅ・・・・・・・」
「フロルちゃん、大丈夫?」
「ごめんなさい、アタシ、こんなに濃い血の匂いは初めてで・・・・・・」
「仕方ないわ、フロルちゃんは冒険者になって半年経ったぐらいなんでしょ。お姉さんも冒険者成り立ての頃、これと同じ状況になったとき吐いちゃった事あるわ。
・・・・・・今は慣れちゃったけどね」
吐き気を抑えるアタシにアウラさんは優しく宥めてくれる、イヴァンさんといいアウラさんといい新人のアタシに優しい人ばかりで泣きそう。
アッシュさんもアタシの様子に気がついたのか、駆け寄ってきて大丈夫と聞いてくる、本当にマジで泣きそう、いや泣きたい。
「フロルちゃん、大丈夫かい? ほら、この薬を飲んで少し気分は良くなるし血の匂いも気にならなくなるよ」
「アッシュさん、ありがとうございます。本当にすみません」
「助け合いは当たり前だよ、ボク達はそうやって生き抜いてきたから」
助け合いは当たり前か・・・・・・。
またパーティーの事を思い出す、ことある毎に思い出すのが癖になってる止めなきゃ、引きずるのは止めなきゃ迷惑がかかる。
アタシはアッシュさんからもらった薬をグイっと飲み、アウラさんとアッシュさんに笑顔を向けた。
「気を遣ってくれてありがとうございます! アタシ、頑張ります! 足を引っ張るかもしれないけど頑張ります!」
「・・・・・・フロルちゃん、無理はしないでね。お姉さんとの約束ね」
「はい、アウラさんもね」
「ええ、そうね。お互いに頑張りましょう」
まだ入り口からどんどんとゴブリンが出てくる。
先ずはこれはどうにかしないといけない。
デンさんを始め、何人か疲れが出ているのが解る、白魔術師もいるけど疲れからか対応出来てないようだ。
この状況でアタシが今できることは・・・・・・。
「リフレッシュ!!」
アタシは疲れを取る呪文を展開した。
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