第4話 寮に案内されました

 ギルド職員寮。


 ギルド事務所の東に位置するこの場所は、冒険者達から見えないように柵に囲まれていて普段は外から見えないようになっている。

 だから、どんな風になっているのか全く解らない。

 無理矢理だとはいえ初めて来る場所だから緊張する。


「フロルちゃん、緊張してる。お姉さんが少し癒やしてあげようか?」


「い、いや、大丈夫です!」


「そう? 大丈夫じゃ無かったら直ぐにお姉さんに言ってね、しっかり面倒見てあげるから♪」


「あは、はははははは・・・・・・」


 弓使いのエルフ、名前はアウラさんだっけ? はアタシの事を心配してくれるのはありがたいけど、ぐいぐいくるこの感じがちょっと気になる。


「アウラは50人兄弟の末っ子でね、年下、特に女の子の面倒を特に見たがる奴だから気にしないでくれ」


 アタシがアウラさんに引いてるのが解ったのかカレンさんがアウラさんのアタシに対する態度の理由を教えてくれた。

 へえ~、50人兄弟の末っ子か・・・・・・。50人!? 多過ぎでしょ!?

 エルフは不老不死と言って良いほど長生きする種族でもあるけど多産の種族でもあるの!?


「お姉さん達、エルフは女性の方が多く生まれる種族だから一夫多妻制なの。

 お姉さんの父親は賢者と呼ばれる偉い人だから、たっくさんお嫁さんを娶って、その結果が50人というわけ」


「そ、そうなんですね。全然知らなかったです」


「うふふ、エルフの事で教えて欲しい事があったらお姉さんに聞いてね♪」


「その前に先ずは寮の案内が先だ、ほら、立ち止まってないで入るぞ」


 アウラさんにエルフの事情を教えてもらっていたらカレンさんが寮に入ろうと催促して寮へと入っていった。

 慌ててカレンさんの後に続いて寮に入る、寮の中は安いという理由でよく利用していた宿舎を想像していたけど・・・・・・。


「凄く綺麗なところですね」


 最初に目に入ったのは綺麗に磨かれた床だった。

 宿舎の床もそれなりに綺麗だけど、宿舎とは違って輝きが違う、しっかりと掃除されてるのが解る。

 窓には誰かが育てているのか植物が置かれていて、皆、綺麗な花を咲かせていた。


「寮は皆が使う場所だ、当番制で掃除を行ってるんだ、ギルド職員たるもの先ずは自分の周りをしっかり管理しなきゃな。

 それに驚くのはこれだけじゃないぜ、もっと驚く物が置いてあるんだ♪」


 ニヒヒと笑いながら案内された場所はロビー、其処には。


「こ、これは、ソファーですよね!? 貴族しか手に入らない高級家具のソファーですよね!?」


 ドーンと大きいソファーが置かれていた!!

 見ただけでフカフカだと解るそれは高級だというオーラが!!

 す、座りたい!!


「このソファーはギルドのお得意様の貴族が贈ってくれたものでな、折角だから、皆に座ってもらおうとロビーに置いたんだ」


「あの、座ってもいいですか?」


「悪いが今は案内している最中だ、終わったら好きなだけ座って良いぜ、さあ、次行くぞ」


「ええ!?」


「もうカレンったら、意地悪なんだから~」


 そ、そんな!? こんなに近くにあるのに座れないなんて!!

 アウラさんがアタシの気持ちを代弁してくれたけど言わせてもらう!!

 カレンさんの意地悪!!!!!!


 次に案内されたのは部屋だ。

 1人一部屋らしく、宿の一人用部屋ぐらいの広さかな、ベッドもフカフカして気持ち良さそう、小さいけどキッチンもあるんだ、ん? あれは⁉️


「か、家庭用魔導機‼️」


 キッチンに家庭用魔導機の魔導レンジと魔導冷蔵庫が置かれていた。

 貴族や少し裕福な家庭でないと手に入らないと言われているものがあるなんて‼️

 ソファーといいギルド職員寮って一体なんなの⁉️


「ふふふ、この寮には各部屋に一つずつ魔導レンジと魔導冷蔵庫が設置しているんだ」


「各部屋に⁉️ そんな贅沢な‼️」


「と言っても、自炊する人は殆ど居ないのよ~。

 でも、お姉さんは自炊する方よ! もし良かったら、お姉さんがフロルちゃんの為にお料理作ってあげるね」


 有っても使わない人が多いと⁉️

 勿体ない‼️ 勿体なさすぎる‼️

 まって、冷静に考えればアタシも料理しない方だ。

 でも折角あるんだから、アウラさんに料理でも学ぼうかな・・・・・・、いやいや、何を考えてるんだ、冷静になれアタシ!!

 なんか治安維持部隊に入る気まんまんになってるじゃないか!?

 いかん、これはいかん!!


「そうそう家庭用魔導機だけじゃなく冷暖房魔導機も設置してあるから暑い時は涼しく寒いときは暖かく出来るから快適に過ごせるぞ」


――冷暖房完備、快適に過ごせる。


「あとシャワーだけど、この寮のシャワーは魔導機のお陰で常に暖かいお湯が出るから何時どの時間でも使えるんだ」


――暖かいシャワー。


「だけど、この寮に入れるのはギルド職員だけなんだな~、これが」


――寮に入れるのはギルド職員だけ。


「でさ、貴女からハッキリと入るかどうか聞いてなかったね。

 どう? 職員、我がギルドの治安維持部隊のメンバーにならない?」



「治安維持部隊・黄昏のメンバーになります!!」



 アタシはカレンさんに向かって御辞儀をした。


「よく言った!!」


「まあ~、フロルちゃん、よろしくね~」


「カレンさん、アウラさん、よろしくお願いします!!」


 負けた、負けたよ。

 ギルド職員寮の設備に。

 こうして、アタシはギルド職員、治安維持部隊・黄昏に入った。


――――――


 夜。

 他のメンバーとの顔合わせは明日という事になり、アタシは早速いつでもお湯が出るシャワーで体を洗い寝間着になってフカフカのベッドにダイブしていた。


「あ~・・・・・・、凄くフカフカ・・・・・・、そういや、ベッドに寝たの久しぶりな気がする」


 前のパーティーの時はアレックスにお前みたいな奴がベッドに寝る資格ないとか言って宿舎からよく追い出されて野宿ばっかだったけ。

 追い出された理由は十中八九、ベッドの上であの三人と仲良くする為だと思うけど・・・・・・。

 思い出したらムカついてきた、折角のフカフカのベッドの上で思い出すことじゃないな。

 それにしても明日からギルド職員か、実感がないな、働けば実感するのかな?

 とりあえず、新人なんだから早起きしないといけないな、もう寝よう。

 故郷に居るお父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん、おやすみなさい。


 家族の事を考えながらアタシは目蓋を閉じた。

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