第3話 スカウトされました

――ギルド職員にならないかい?


 ギルドマスターから出た言葉、これって、アタシ、スカウトされてる?

 いやいやいや、少し冷静になろう。


「あの、ギルド職員って聞こえたんですけど?」


「ああ、君のような仲間思いな努力家は是非、我がギルド職員になってほしいと思っている」


 うわぁ~、本当だった。

 それにアタシの事をベタ褒めすぎない? ただ、足を引っ張りたくないから出来るスキルを覚えただけだから仲間思いというより自分のためだし・・・・・・。

 職員として働く、魅力的ではあるけど、アタシの能力で働ける部署ってあるのかな。


「マスター! ギルド職員って事はフロルちゃんを受付嬢としてですか?」


 セリエさんがマスターに良い質問してくれた!

 もし働くとしても彼奴らと会うような事は避けたい、アタシみたいな平凡な女がギルドの花と呼ばれる受付嬢にはならないと思うけど・・・・・・。


「いや、治安維持部隊として働いてもらいたい」


 治安維持部隊?

 初めて聞く言葉にアタシはマスターにどんな所なんですかと聞いたら、マスターじゃなくてセリエさんが目をキラキラさせて。


「治安維持部隊ってのはね、契約違反した冒険パーティーを取り締まったり、ギルドが管理するダンジョンで異変が起きたときに調査したりする、簡単に言っちゃえばギルドで起きた問題を処理する部署なのよ!!

 正式名称は治安維持部隊・黄昏トワイライト

 マスターは元は治安維持部隊の前隊長で、今はカレンさんっていう女性ひとが隊長を務めているわ、凄く優秀な人よ。他の隊員さんは個性的な人が多いけど皆、優しいし頼りになる人達だから、きっとフロルちゃんの事を大切にしてくれるわ!!」


 マシンガントークで教えてくれた。

 セリエさんから教えてもらった事をまとめると治安維持部隊・黄昏が正式名称でギルドで起きた問題に対処するのが仕事、今の隊長はカレンさん、他の隊員は個性的で良い人と・・・・・・。

 うん、なんか濃いな。物語に出てくる冒険パーティー並に濃いな。創作ですか? って聞きたい。


「おいおい、セリエ、お前さんは黄昏のファンだというのは知っていたが流石に言い過ぎだ。

 まあ、隊員は隊長を始め個性的だがフロル、君を追放したような者ばかりじゃない。今すぐにとは言わない、検討してはくれないか?」


 正直に言うと・・・・・・、そんな凄そうな所では働ける自身はない!!

 それに契約違反の冒険者を取り締まるのも仕事みたいだから、彼奴らにも会いそうな気がするし。

 申し訳ないけどお断りさせてもらおう。

 本当はもの凄く興味あるけど、ゆっくりと自分のペースでやっていこうと決めたからね。


「あの申し訳ないんですが・・・・・・ 「マスター、こんな所で何をしてるんだ?」


 アタシの言葉を遮るように炎を彷彿とさせる赤い髪の女性が割って入ってきた。

 女性の後ろには弓を携えた綺麗なエルフの女性、巨大な盾を背負うドワーフ、如何にも探検者な格好をしたコボルト、夕焼けのような髪色の青年が居た。

 赤い髪の女性を始め、そこに居るだけなのにオーラが凄い、なんて言えば良いのか強者のオーラを、一度だけすれ違った事があるSSランクの冒険者並のオーラを感じる。


「おお、カレンじゃないか。皆、揃っているという事は例の件は終わったのか」


「ああ、全員で乗り込んだおかげかちっとばかし脅したからか相手さん方、土下座して許してくれの大合唱さ。

 謝るぐらいだったら他のパーティーの邪魔するんじゃねえっての!」


「それはそれは・・・・・・、で、そいつらは?」


「牢屋にぶち込んどいた、後はマスターの仕事だろ?」


「ああ、後は俺の仕事だ。ご苦労だった、いつもの業務に戻ってくれ」


「りょーかいと言いたいとこだけど、そこの嬢ちゃんと話し込んでいたみたいだが何かあったのか?」


 チラリと赤い髪の女性――カレンと呼ばれた人がアタシの方を見た。

 深い海のような目がアタシを射貫くように見つめる。

 会話の意味の半分は解らなかったけど、この人達が治安維持部隊で間違いないと思う。

 こんな人達と一緒に働くなんて無理だよ。


「ああ、この子か。パーティーを追放された冒険者なんだが、豊富なスキルを持っていてね、勿体ないと思って治安維持部隊にとスカウトした所なんだ」


 マスター!!!!!!

 アタシみたいなちんちくりんな冒険者をスカウトしたとか言っちゃう!?

 信用問題に発展しない!?

 ほら、カレンさんも驚いたって顔してるじゃん!!

 更に視線が、カレンさんだけじゃなくて他のメンバーさん達からの視線がアタシに突き刺さる。


「アンタ、名前は?」


「ふ、フロル、で、す」


「ふ~ん」


 カレンさんがぐっと顔を近づけさせて覗き込むようにアタシを見てくる。

 怖い、けど何か言ったら更に怖い事になりそうだから黙っておこう。


 ジロジロと見られて数分経った頃にカレンさんの口が開いた。


「うん、アンタ、気に入った! マスター、この子を連れて行くね。

 じゃあ、私はこの子を寮に案内するからアンタ達はマスターの言われたとおり業務に戻りな」


「カレン、待って。お姉さんも良い?」


「はいはい、アンタは絶対にそう言うと思った」


「あ、あの、アタシは・・・・・・」


「名前言うの忘れてたな、私の名はカレン、で、一緒について行こうとしてるのは弓使いのエルフのアウラだ、変わりもんだが面倒はきっちり見てくれる奴だから安心しろ。

 ほれ、行くぞ!!」


「あわわわわわわ」


 ズルズルと引きずられながら寮へと向かう。

 力が強すぎて振りほどけない!!

 待って! アタシはまだ了承してないというか断るつもりなんですが!!

 チラリとマスター達を見るとにこやかな顔で手を振ってる、助ける気ゼロ。


 今のアタシは心の中であ~れ~と言うことしか出来ず、そのまま寮へと向かうしかなかった。



「やれやれ、相変わらず強引な奴だな」


「でも、フロルちゃんは断る気でいましたし、ああでもしないと無理だったんじゃないんですかね」


「そうだな、さて、一仕事する前に・・・・・・。

 セリエ、彼女、フロルが在籍していたパーティーの資料をパーティー管理課に俺の元に持ってくるようにと伝えてくれ」


「はい、賜りました」

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