第2話 追放されました②

「という訳で追放されたのでソロ活動するために新たに登録しに来ました☆」


「はい!?」


 追い出されたアタシは今、ギルドの受付に居ます♪


 いや~、ようやくあのパーティーから出て行く事が出来たからサッパリとした気持ちで此処に居ます。

 自棄になってるわけじゃないよ、気持ちを入れ替えて此処に居るの!!

 話を聞いて困惑してる受付嬢の名はセリエさん、アタシが冒険者になってからずっとお世話になっている頼りになる人。

 アレックスが入って以降は受付の対応はほぼアレックスがやっていたからアタシ達の関係が冷え切ってる事をセリエさんは知らない、だからこの反応は当然だ。


「お、追い出されたって本当!?」


「マジです」


「あんなに仲良かったじゃない!? どうして!? どうしてそうなっちゃったの!?」


「それはですね・・・・・・」


 この世界には誰かの手によって作られ、いつ作られた解らないダンジョンが無数に存在している。

 このダンジョンに挑戦する者達はまとめて冒険者と呼ばれ、冒険者を支援する冒険ギルドに登録すれば誰でも(さすがにヤバいと判断されれば面接とかやるらしい)冒険者になれるのだ。

 そして冒険者はギルドによって管理されたダンジョンに潜り、モンスターを狩り、素材を取り、ダンジョン内にしかない鉱物や植物を採取し、時にはギルドに寄せられた依頼をこなしながら生活していく。


 アタシは幼い頃に読んだ冒険小説のような冒険がしたくて、同じ夢を持つ幼馴染、ジェシカ、リコ、ミーシェの三人とパーティーを組み、仲間の強化や回復を中心とした支援型の魔術師、白魔術師として働いていた。


 アレックスが加入するまでは。


 ある日、冒険者になってから半年が経った頃ぐらいだろうか。

 リーダー格のジェシカからある提案をされた。


「私達のパーティーに新しいメンバー、男の人を募集したいの」


 その提案をアタシ達は了承した。

 この頃、女だけのパーティーというだけでバカにされたり男だけのパーティーに危ないから一緒に行こうと言ってダンジョン内で付きまわされる事が多くなり、全員、ウンザリしていたのだ。

 そして、募集して数日後にやってきたのがアレックスだった。


 アレックスは、近くに寄っただけでダンジョン内の罠を壊し、戦闘になればモンスターを弱体化させる力――守護の力を持っていた。


 最初、その力を見た時は驚いた。開いた口は塞がらず、いつも時間がかかる戦闘がほぼ一瞬で終わったのが実感できなかったほど。

 その力を持つアレックスに魅入られたジェシカ、リコ、ミーシェはアレックスが何かする度に褒め称え愛を囁くようになり、それに気をよくしたアレックスは謙虚な好青年から段々と横暴な態度が目立つようになり気に入らない事があると暴言、暴力は当たり前になっていた。

 アタシはというとアレックスの守護の力により活躍の場を奪われたせいで余り良い感情を抱いてなかった。

 モンスターは一撃で撃破できるまでに弱体化され戦闘はほんの数秒、そこにアタシの強化魔法や回復魔法は必要ない。

 罠解除に関しても罠を見つけるサーチ魔法を使う事も罠に引っかかって誰も怪我しないから必要なし。

 ことごとく出番を奪われれば凄いと思っていても良い感情を持てなかった。


 アレックスはアタシが自分に対して良い感情を持ってない事を解っていたのか、他の三人には優しい態度なのにアタシにだけ塩対応、次第に無能、お荷物と罵るようになった。

 幼馴染達はそんなアレックスを見て止めることもしないし好かれたい為かアタシを罵るようになった、そんな三人にアタシも愛想を尽かしていき、そして・・・・・・。


「追放されたという訳です。三人に対して愛想は尽かしてましたけど、やっぱり思い入れがあったから中々踏ん切りが付かなかったんです。

 だから面と向かって出て行けと言われて逆に感謝してます、踏ん切りがつけられたので」


「フロルちゃん・・・・・・、そう、貴女なりに受け入れているのね。

 でもムカつくわ~。フロルちゃん、白魔術の他にアイテム制作スキルや薬草栽培スキルとか持ってるじゃない! 貴女の活躍出来ること沢山あるわ! 彼等は知らなかったの!?」


「それがアイテムなんて守護の力があるから必要ない、薬草買う金は無駄金と言われて、アタシの金から出そうとしたんですけど奪われまして・・・・・・」


「はあ!? なにそれ!? 奪われた!?」


 よくよく思い出せばアタシって結構、理不尽なことされてるような・・・・・・。

 やっぱりそれなりに長い期間(と言っても一ヶ月ぐらい?)、冷遇されてきたから麻痺してるのかな?

 あ~、段々とムカついてきた。彼奴らにしっぺ返ししてやりたいけど、もう二度と会いたくないしどうしたもんかね。



「個人で管理する金を奪うのは例えメンバーであっても違反だ」



 凜とした声が通る。

 セリエさんの後ろにいつの間にかイケオジじゃなくてギルドマスターが立っていた。


「ま、マスター、いつの間に!?」


「すまん、騒がしいと思ってな。さきほど、聞き捨てならない事を聞いたが・・・・・・、何があったのか詳しく教えてくれるかい?」


「実は・・・・・・」


 アタシはセリエさんに話した事をマスターに話すと、マスターの顔がみるみる険しくなっていった。

 イケオジの険しい表情、怖いです。


「それは災難だったな。君がされた事は訴える事が出来る、だが証拠がないとなると厳しいが・・・・・・」


「いいえ、アタシはもう今後一切関わり合いたくないので訴えないです。逆恨みされるかもしれませんし」


 マスターが証拠がないけど訴える事が出来ると言うけどアタシは訴えないと告げる。

 言ったとおり関わりたくないし逆恨みされるかもしれないからね。彼奴、アレックスは恨んだらトコトン追いかけ回しそうだしね。


「確かに身の危険を感じるのなら、それが良いかもしれないな。

 それはそうと君はこれからどうするのかね?」


「暫くはソロ活動しようかなっと。パーティーは懲り懲りってわけじゃないですけど追放された後なのでやりづらいというか・・・・・・」


「そうか・・・・・・。ふむ、君のスキルを確認させてもらったが白魔術を中心にサポート向けのスキルをいくつか覚えてるね、これだけのスキルを覚えるのは大変だったんじゃないか?」


「アタシ、サポートスキルは覚えやすい性質だったので出来る範囲のものを覚えたんです。足を引っ張りたくなかったので」


 職業が完全サポート型の白魔術師なのは戦闘スキルが覚えにくく逆にサポートスキルを覚えやすかったからだ。

 他の三人はアタシとは逆に戦闘スキルを覚えやすい性質だったのもあったから足を引っ張らないようスキルを覚えた、一緒に冒険するんだから何が何でもパーティーのお荷物にはなりたくなかったから。

 まあ、そんなアタシの努力は追放されたことにより水の泡になったんですがね。


「君の、この努力を無駄にするのは勿体ない。

 どうだい? 我がギルドの職員として働かないかね?」


 はい? マスター、なんて言いました?


「もう一度言おう、ギルド職員として働かないかい?」

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