第6話 吹奏楽部のお手伝い
九月は意外と行事が多い。
学校行事だけではなく、部活動も夏の間に三年生が引退し、一、二年生がメインで秋の大会に臨んだりする。
勿論、結果を残している部では、三年生も引退せず、続けている生徒もいる。
「白石、ちょっといいかい。」
担任の高野七海先生に呼び止められた。
七海先生は可愛らしく、三十歳と聞いているが、二十代前半にしか見えない。
明るく茶目っ気があり、生徒達にも人気がある。だけど、怒るととっても怖い。
音大を出ているらしく、音楽の先生をしているのだが、声が良くとおり、怒ると迫力がある。
確か、吹奏楽部の顧問もしているはずだ。
「白石は、ピアノを習ってたよね。」
「はい、今も週一で通ってます。」
それを聞いて、うーんと考え込むような表情をすると、
「確か、高等部の連中がやっている古典研究部に入ったとか。日曜日も部活があるのかな。」
「今のところは無いです。文化祭が近くなると分かりませんけど。」
今でも演技指導に余念がないのに、文化祭が近づいたらどうなるのだろう。
恐ろしい。
自分の考えに浸っていると、
「じゃあ、お願い出来るかな。今週の日曜日なんだけど、うちの吹奏楽部が、他校の吹奏楽部と合同で演奏する事になってるの。市民フェスタで、向こうの学校の先生と一緒にやろうって事になってるのよね。ちょっと人手が足りなくって、生徒に応援を頼んでるんだ。なるべくなら、音楽が分かる人の方がいいだろうって事で声を掛けてる。手伝い、お願い出来るかしら?」
そう言われてじっと見られると、小心者の私としては断りずらい。
日曜日は暇だし、この学校の吹奏楽には少し興味がある。
「分かりました、お手伝い致します。」
先生もニッコリ笑い。
「宜しくね。手伝いの内容は、イスの出し入れとか、楽器の搬入、後は、市民フェスタの会場でやるから、余計な雑事も頼まれるかもしれない。でも、快く手伝ってあげてほしい。十一時の出番なので、九時までには来てね。出番が終わって、楽器の片付けが済めば解散。それまでは宜しく。後は、フェスタを楽しむも帰宅してくれても構わないからね。」
私の肩を、がしっと掴むと、
「助かるわ、ありがとう。合同でやる相手の学校は、新光理科大付属中学校。中高大の一貫校で、まぁ、頭の良い学校ね。男子校だから、こんな機会でも無いと、男女で何かする事なんでないでしょう。お互い県で金賞もとってるし、いい刺激になると思って、では、宜しくね。」
そう言うと、職員室がある方に去って行った。
自分としては、多少のめんどくささはあるが、この学校の吹奏楽部が強いのも知っている。
やはり、音楽は何にせよ、好きなのだ。
それに市民フェスタってお祭りだよね。意外に楽しみかも。
そう思うと、案外楽しみにしている自分に笑ってしまった。
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