第3話 少し理解

「とりあえず外に出ようよ。

 はい靴。」

と言って靴を手渡してくる。

,,,,,なんでサンダルなんだよ。

靴下を履いたままサンダルを履いて外へ出た。

「とりあえず、どうすれば思いを得られると思う?」

「知らん。」

即答する。

だって分からないのだから。

「それは相手を思うことだよ!」

どういうことだ?

相手を思うからこちらもだと?

「相手を思いあうってことだよ。

 たとえばそこの池に人がおぼれていたらどうする。」

「,,,,,わからん。」

「ダメだよそれじゃあ。

 すぐに飛び込んで助けてあげなきゃ。

 それが相手を思うこと。」

何でそんなことをしなくちゃいけないんだ。

僕はクズ野郎なのだろうか?

するとユーが池の前に立って、

「思いやりを理解してみよう。」

と言って池に飛び込んだ。

「バッカ!何してんだ!」

「溺れちゃうよー。

 タスケテー。」

「自分で戻れるだろ。」

「思いやり、理解してみようよ。」

そんなことを言われるとやるしかないじゃないか。

「分かった待ってろよ!」

掛け声とともに思いっきり池に飛び込む。

とりあえずユーを水の中で背負う。

「少しぐらい泳げよ。」

重い。

「思いやり思いやり。」

そしてゆっくりと陸に上がる。

「はぁはぁ、つ、疲れた。」

ユーを置いて肩で息をしていると、

「ありがとね。」

と言われた。

言われると何だかえーっと、何て表現すればいいんだろうか。

「胸の奥の辺りがジーンって温かくなったでしょ?」

確かに言われるとそんな感じだ。

「何だか,,,,,悪くない。」

しいて言うなら良い感じだ。

「それが思いやりだよ。

 相手から思いを込めてお礼を言われると心が温かくなるでしょ。」

これが思いやりか。

思い、思われるのは悪くないかもしれない。

「けど君の方はねぇ、全然心に来なかったよ。

 思いが足りてないよ!」

「うっ,,,善処する。」

実際相手を思うというのは難しい。

僕は何もユーに対して何も思わずに、ただただ運んだだけだった。

「相手を思う、思いやりの大切さを理解できた?」

「あぁ、理解した。」

「君は今まで何に関しても無関心で思いやりが無さすぎたの。

 だから、人並み以上に何かを思う心を持てたら生き返らせてあげます。」

「え?僕の命って君が握ってんの?」

これは知らなかった。

とりあえず、『思い』についてもっと理解できるように頑張りますか。


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