第14話 災厄の最亜……でもない

 翌朝、私は早く起き出して、下の食堂で地図と睨めっこしていた。

「……赤竜洞か。レッドドラゴンしかいない洞窟だね。また、面倒な指示がきたよ」

 私は昨日届いた黄色い封筒の中に入っていた便せんを眺めた。

 マーケットに行く前に確認したが、それは父王からの命令分に近かった。

 通常の連絡は白、こういった命令文は黄色、黒い封筒は……ちょっといえない仕事で、他にも色々な色があった。

「はぁ、寄りによって赤竜洞か。レッドドラゴンしかいない洞窟……。応援呼ぼうかな、今のメンツじゃ勝てない可能性が否定出来ないんだよね。まあ、それでも回復がしっかりしているし、医師まで同行してるとなれば、やってやれない事はないか」

 私は苦笑した。

 実は、国王命令で一度赤竜洞に潜った事があるのだが、ここはレッド・ドラゴンのたまり場で、三頭に囲まれた私は腰に帯びたドラゴン・スレイヤーでなんとか切り抜けた経験がある。

「……みんなに負荷は掛けられないか。先に出よう」

 私はオバチャンに言づてを頼むと、外に止めてあった自分の馬に飛び乗った。

 そのまま街道にでて、私は馬を飛ばした。


 特になにもなく、行き交う馬車や車と手を上げて挨拶を交わし、私は曇ってきた空の様子をみた。

「こりゃ降るな。急がないと」

 次の宿場町までは丸一日かかるが、それまで天気はもちそうになかった。

 私はマントを体に巻き付け、ポンチョのようにして街道を走った。

 途中、街道パトロールが検問をやっていて、身分証明証を提示すると慌てた用に検問ゲートが開き、私は笑みを送ると、検問所を通過してそのまま街道を抜けた。

 しばらく進むと街道の交差点があり、私は地図を開いて確認した。

「まっすぐ行けば近道だけど、治安が悪いんだよね。ちょっと時間は掛かるけど、左に行こうか。でも、時間が惜しいな。よし、真っ直ぐ行こう」

 私はナイフ取り出し。道標に矢印を書いた。

「追いつけないとは思うけど、念のため。さて、いこうか」

 私は馬を走らせ、先を急いだ。

 途中で空模様が怪しくなり、小雨が降り出した。

 マントで体を包んで雨対策をして、少し荒れている石畳の上を走っていった。

 そのまま進むと、革鎧を着込んだ私の腕になにかが当たって弾けた。

「……ショートボウだ。早速お出ましか」

 私は馬を加速させ、滑って転ばない程度に加速した。

 マントを突き抜けた矢が時々突き刺さり、その痛みを誤魔化しながら進んで行くと、盗賊の群れが待ち構えていた。

「……百人くらいか。ファイア・ボール!!」

 私は攻撃魔法を唱えた。

 しかし、魔力の空打ちに終わり、凄まじく臭くなった。

「……あれ?」

 私は剣技には多少自信があったが、こんなに大勢でこられると、さすがにしんどいものがあった。

 その百人が一斉に呪文を唱え、火球だの稲妻だの様々な攻撃魔法が飛んできた。

「なんの!!」

 私は防御結界を展開して、それを完全に防いだ。

 防御魔法と防御結界の違いは、前者は身動きを取れるようにシャボン玉のように対象者をくる物で、私の場合はこちらを使う事が多い。

 対して防御魔法は、膜ではなく障壁を展開し、その場から動けなくなる欠点があるが、私は研究の結果、防御結界を張ったまま移動出来るようになった。

 しかし、私はあまり魔法が得意ではなく、魔法使いと名乗っていいか疑問に感じていた。

 これにはさすがに予期していなかったようで、逃げ惑う盗賊を群れを次々に弾き飛ばしながら、私は呪文を唱えた。

 無数の光りの玉が浮かび、私の方が驚いた。

「……あれ、呪文間違えた?」

 無数の光球はフワフワと飛んでいき、人や地面に当たると小爆発を越して、場は大混乱になった。

「だから、攻撃魔法は苦手なんだよ。今さら爆発してもね」

 私は苦笑した。

 盗賊団を跳ね飛ばして進むうちに、人に紛れて見えなかったが、旧式の装甲車が二台出てきて、街道を塞いだ。

「やばい!!」

 私は馬の速度を落とし、装甲車から発射された重機関銃弾を弾き飛ばすため、防御結界を重ねがけした。

「昨日、寝る前にパステルからもらったこれ、ちゃんと使えるかな」

 私は馬上で対戦車ロケット弾を構え、慣れないながらも一発撃った。

 大きな発射音と共に発射音が響き、結界壁をすり抜け一台の装甲車に向かって飛んでいった。

 私が放ったロケット弾は、上面装甲を軽く掠めただけで弾かれ、明後日の方向に飛んでいった。

「……これはもう降参だね。ヘタに攻撃して刺激しない方がいい」

 私は馬から下りて両手を挙げ、普通は馬を逃がす所だが。仲間を信じて馬の手綱を近くの木に結び付けた。

「はいはい、分かったからなにがご要望で?」

 私は声を上げた。

「いいからついてこい。乗れ」

 私は息を吐き、後部ハッチが開いた装甲車に乗った。

 なにもいわず、中に乗っていたならず者一名が私を後ろでに縛った。

 装甲車が走り出すと、私はひっそりつぶやきながら、進路を小さな魔法陣で示した。

 見張りなのだろうか。中には武装した人が二人いて、ずっと無言だったので、私は刺激しないように無言を貫く事にした。

 一定間隔で魔法陣を床越しに落としながら、私はそっと縄抜けを始めた。

 どうやら縄使いは素人のようで、比較的簡単に縄抜けは終わった。

 私は腰のナイフをそっと抜き、まずは横にいる見張りの横腹を刺した。

 その悲鳴で、慌てた様子で私に拳銃を銃を向けた見張りその二を倒した時、私の横腹に焼け付くような痛みが走った。

「っつ……」

 クラクラする視界の中、操縦手が拳銃を手にしていた。

「こ、この……」

 私はナイフを構えたまま、操縦手の首を突き刺し、助手席にいたもう一人を倒した。

「い、痛いなんてもんじゃない……」

 私は急いで回復魔法を使ったが、止血程度ほどに役に経たず、さらに上位の回復魔法を使おうとしたが、視界が歪んで吐き気を催したので、慌てて途中まで構成が終わっていた魔法をキャンセルした。

「ダメだ……。さすがに、強気にはいけない……」

 私は急停車した装甲車のリアハッチを開ける体力もなく、その場に横になるのが精一杯だった。

「……こりゃ死ぬかも」

 止血した箇所からまた出血がはじまり、咄嗟に使った回復魔法が不十分だと知った。

 それからどれほど経ったか、装甲車のリアハッチが開き、みんなが飛び込んできた。

「さぁ、ヒーラーの出番だよ。この出血量は、かなりヤバい!!」

 アイリーンが叫び、アメリアが冷静に私の服を切り、傷口を確認しているようだった。

「内臓に弾丸が残っています。回復魔法が使える方、全員協力して下さい」

「あのさ、ここに医師が何人いると思ってるの。ビスコッティ、ここでオペするしかないよ!!」

 スコーンは手を消毒して、黒い鞄を開けた。

「ビスコッティ、探査魔法」

「はい、師匠」

 さすがに姉弟関係にあるだけあって、二人の息はピタリ合っていた。

「麻酔掛けるよ。パトラなら持ってるかもしれない。ある?」

「あるよ。ちょっと待って」

 パトラが鞄から薬瓶を取り出した。

「かなり衰弱しちゃってる。早くしないと、手遅れになるよ」

「分かってるよ。マリー、動かないでね」

 スコーンが注射した瞬間、私は猛烈な眠気に襲われた。

「無理しないで寝て。弾丸は取り除いたし、後は傷口の縫合だけだから」

 スコーンが笑みを浮かべ、私は絶えられずに眠ってしまった。


 ふと目を覚ますと、後部扉が明け放れたままの装甲車の床に寝かされ、シルフィが笑みを浮かべて顔を覗き込んだ。

「とんだ災難でしたね。もう動いても大丈夫です。傷口は綺麗に治っています。いい腕していますね」

「あれ、記憶が……ああ、やられたんだ。私とした事が」

 私は苦笑した。

「今は外でたき火の準備をしいています。マリーの馬もちゃんと連れてきていますよ」

 シルフィが笑みを浮かべた。

「そっか……迷惑かけちゃったね。よっと」

 私はそっと起き上がった。

「もう動いても平気ですが。あまり派手な動きをしない方法がいいですよ。衰弱気味なので、倒れてしまします」

 シルフィが笑みを浮かべて外に出たあと、ビスコッティが入ってきた。

「なんで仲間を置き去りなんですか。ビシバシします!!」

 ビスコッティが強烈な往復ビンタをしてきた。

「だって、レッド・ドラゴンだよ。私にきた命令書で巻き込むわけには……」

「ダメです。なにを遠慮しているんですか。もう一発ビシバシしましょうか?」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「遠慮しておく……。結局、全員集合になっちゃたか」

 私は苦笑した。

「はい、宿の方に聞いて、急がないとと馬も若いものに変えたんです。今、パステルがここからの近道を探していますよ」

 ビスコッティは笑みを浮かべ。装甲車から降りていた。

 外では、これからたき火という感じで、空は夕焼けに染まっていた。

「あっ、起きたんだ!!」

 アメリアが笑った。

「うん、お陰様で命拾いしたよ」

 私は苦笑した。

 まだなんとなくフラフラする足を気合いで整え、焚き木の脇に座った。

 誰が持っていたのか、屋外用コンロも出され、パステルが料理していた。

「なにか食べても平気ですか?」

 ナーガが心配そうに問いかけてきた。

「うん、大丈夫。食欲はあるし、もう大丈夫だと思うよ」

  私は笑みを浮かべた。

「まだ油断は禁物ですよ。今晩は大人しく寝ていた方がいいです。生命力がかなる消耗しているので。ちゃんと睡眠が取れば、明日には元に戻るでしょう」

 アメリアが笑みを浮かべ。

「そうだ。あの盗賊団、街道パトロールの事務所に連絡して、叩き潰した方がいいよ」

「はい、もう無線連絡してあります。明日の朝には、綺麗に片付くでしょう」

 近くにきたビスコッティが笑みを浮かべた。

「仕事が早いね。これで、この街道も少しはマシになったかな」

 私は笑った。

「おーい、メシが出来たぞ」

 リナが声をあげ。パステルが作った料理がテーブルに置かれた。

「いくらポケットに収めてあるとはいえ、限界があるので先に生鮮食品から使いました。冷蔵機能も作ったのですが、容量が一杯で」

 パステルは苦笑した」

「焼きマシュマロやりたい」

 スコーンが笑った。

「師匠、ありますよ」

 ビスコッティが、熱々の木の枝に刺した焼きマシュマロをスコーンの口にねじ込んだ。

「ぎゃあ、熱い!!」

 スコーンが地面を転がった。

「私も一つ……」

 ビスコッティが、ゆっくり冷やして食べた。

「なにしてるの?」

 私は笑いながら聞いた。

「マシュマロ責めです。面白いので、お一つどうぞ」

 焼きマシュマロを受け取った私は、近くでボンヤリしていたアイリーンの口に焼きマシュマロをねじ込んだ。

 すると、立ち上がってナイフを抜くと、ボーッとしながら私に斬り付けてきた。

「うぉっと……」

 その刃を避け私は剣を抜いた。

 次に振り下ろすように突き出されたナイフを剣で弾き飛ばし、返す刀でアイリーンの肩を斬り付けた。

 アイリーンは寝ぼけたまま、投擲用のナイフを投げた。

 私はそれをマントで素早く弾き飛ばし、アイリーンに蹴りを入れて向きを変えた。

 アイリーンはそのまま行く先にいたマルシルに向かって行く途中で、地面に倒れて寝てしまった。

「あれま、寝ちゃったよ。被害者が私だけでよかった、寝起きが超絶悪いから」

 私は革鎧の上に着ている白衣の襟についているボタンを押した。

 すると、迷彩機能が働き、私はアイリーンの上に座った。

「動作はするね。これ遠くからじゃ、空気椅子してるようにしか見えないね」

 私は笑った


 川がそばにあるので、眠気が醒めた様子のアイリーンとパトラが釣りに出かけた。

 夜釣りでも釣れる魚はいるのは知っていたが、私はやった事がなかった。

「まさか、こんなところで野営とは……」

 私は苦笑した。

「ここから次の町はしばらく先です。特になにもないので通過しましょう」

 パステルが小銭袋を見せながら笑った。

「ここは通行料取るからね。田舎過ぎて、まだクローネが普及してないんだよ」

「大丈夫です。金貨時代のエルダは持っています」

 パステルが笑った。

「それは助かる。私も持ってるけど、金貨は全部両替しちゃったから。

 私はエルダを全て金貨を両替したが、なにかあると困るので銀貨と銅貨は持ち歩いていた。

「旧金貨があっても、今はゴミ屑以下ですよ。記念に取って置きましょう」

 パステルが、金貨が詰まった袋の中を見せて笑った。

「ゴミ屑か……まあ、無理したからね」

 私は苦笑した。

「はい、主に商人が使っているクローネが、そのまま世界共通通貨になってしまった歴史がありますからね。なんだかんだで、結局これが一番信用されている通貨ですからね。私も世界中旅しましたが、これのお陰で面倒な両替をやらなくて済むので楽です。

 パステルは通行滞在証を、私に手渡した。

「へぇ、色々いってるね。大洋を越えて反対側までいってる。よくビザが取れたね。あまり交流がなくて閉鎖的だから、大変だったでしょ」

「まあ、コネを色々……」

 パステルが笑った。

「そっか、大変だけどそれも旅のうちなんでしょ?」

「はい、これも冒険です。ところで、あちらでビスコッティが呼んでいますが……」

 パステルの言葉に、私は慌ててたき火に向かった。

「し、師匠が……」

 地面に倒れているスコーンの口からマシュマロがはみ出ているのをみて、私は無線機を広帯域に設定した。

「メディック!!」

 すると、F-35Bが垂直に降りて来た。

「違う、それじゃない!!」

 今度はブラックホークが降りてきて、中から軍医が掃除機を背負ってやってきた。

「よろしく!!」

「はい、何個詰めたんですか。これは、大食いですね」

 軍医はスコーンの口に掃除機の吸い込み口を当て、電源を入れた。

 ズボボっと音がして、止まっていたスコーンの呼吸が回復した。

「では……」

 軍医は急いでブラックホークに飛び乗り、そのまま去っていった。

 F-35Bも撤収して欲しかったが、エンジントラブルで離陸出来ないようだった。

「全く……アメリア。よろしく!!」

「はい!!」

 アメリアが呪文を唱えると、故障が直った戦闘機が離陸していった。

「これでよし。最低限の跡で済んだね。戦闘機がくるとは思わなかったよ」

 私は苦笑した。

「ビスコッティ、直った!!」

 スコーンが起き上がって、またマシュマロを焼き始めた。

「直ったではありません。もう一個もあげません!!」

「えー、なんで?」

 などとやってると、釣りチームが帰ってきた。

「まあ、大量かな。アイリーンがバケツの中を見せた」

「イワナか。串焼きにすると美味しいよ」

「うん、下ごしらえするから、ちょっと待ってね」

 パトラがなにやら調理を始めた。

「アイリーン、さっきの続きやらない?」

 私はナイフを抜いた。

「ああ、なんか寝ぼけてやったな……いいよ」

 アイリーンはナイフを抜き、笑みを浮かべて構えた。

「勝てると思ってるの?」

 アイリーンが不敵な笑みを浮かべた。

「さぁ、どうだか……」

 私はナイフを構え、一気に間合いを詰めた。

 それを蹴りで返そうとしたアイリーンの背後に回り込み思い切り蹴りを入れ、体勢がくずれたところをナイフで寸止めした。

「はい、死んだ!!」

「この野郎、もう一戦だ!!」

「いいよ、いくらでも付き合うよ。元プロなんていわせないからね」

 私は笑った。

 ナイフを片手に突っ込んできたアイリーンに、マントを翻して刃を止め。手刀でナイフを落とすと、そのまま思い切り一本背負いでぶん投げた。

「……また負けた」

 アイリーンが泣き始めてしまったので、私は踵を返してその場を後にした。

「次はビスコッティだよ。頑張って」

 私は背中でアイリーンに声を送った。

「ビスコッティ、ちょっと揉んでやって!!」

「え、えっと、ナイフを持つと本気しか出せないので……」

 私は模擬のナイフをビスコッティに放った。

「三本勝負。終わったら、次はマルシルっだから。その甘えを直す!!」

「えっ、私ですか。ナイフ格闘なんてやった事ないですよ」

 マルシルが目を見開いてポカンとした。

「好きなスタイルでいいよ。アイリーンなら、勝てるはずなんだけどな」

 私は小さく笑った。

「は、はい、やれといわれればやりますが……どうやれば」

 涙を拭いて、異様な殺気を放つアイリーンに向かって、マルシルがおっかなびっくり模造ナイフを構えた。

「ま、マルシルなら勝てるかもしれない……」

 アイリーンが呟いた。

「当たり前です。私が勝てたらおかしいです」

 マルシルが笑った。

 二人同時に間合いを詰めると、マルシルの一撃でアイリーンのナイフが飛んだ。

「やば……」

 アイリーンの声が聞こえ、腰の後ろに挿していたナイフを素早く抜いて、マルシルの一撃を防いだ。

 予想に反して、マルシルが凄まじく頑張っているようで、アイリーンの鳩尾にマルシルの膝が食い込んだ。

「うげ……」

 動きが止まったアイリーンの首を切る真似をして、マルシルは満面の笑みを一瞬だけ浮かべ、慌てて回復魔法を使った。

 ……結局、マルシルが二本取り。アイリーンは一勝で対決は終わった。

 その他、ナイフが得意なパトラが地面に埋まっていた石に蹴つまずいて転び、その空き隙にアイリーンが勝利を収め、最後の強敵であるビスコッティにコテンパンにやられた。

「どう、プロの味が戻った」

 私は笑みを浮かべた。

「それは自分で決めるもんじゃないよ。採点結果は?」

 アイリーンが笑った。

「そうだね。オマケでC。厳しくするとDプラスくらいだね」

 私は笑みを浮かべた。

「厳しすぎるよ。そりゃヘボだったけど」

 アイリーンが笑った。

「だって、もう何回死んだの。最初の私でもうお亡くなりだよ」

「そりゃそうだけど……アー悔しい!!」

 アイリーンはナイフを取りだし。せっせと磨き始めた。

「さて、晩メシだね。ごめんね、無駄足踏ませて」

「いえ、無駄とは思っていません。ここからだとマーケットが近いので、ちょっと寄りましょう」

 パステルがカンテラを片手に笑った。

「そうなの。みんないく?」

 私が声を掛けると、みんなが頷いて笑った。

 私は無線で芋ジャージオジサンを呼んだ。

「ちょっとマーケットに行ってくるから、荷物をみてて!!」

『うむ、分かった』

 私は無線電源を省電力モードに切り替え、バッテリの予備を買っておかなきゃなと思った。

「あの、ゆで卵作ったんだけど、食べてから行かない?」

 パトラが笑みを浮かべた。

「分かった、パトラのゆで卵の腕をみよう」

 私は笑って、パトラからもらった少し温めのゆで卵をナイフで切った。

 中心部がほんのり半熟で、黄身が完璧に中央にある究極のゆで卵だった。

「うん、美味しい。塩とバターはある?」

「あるよ、塩はともかくバターなんて通だね」

 パトラが持ってきてくれた塩で下ごしらえをして、軽くバターを塗って口に入れた。

「うん、美味しい。ありがと」

 パトラは笑みを浮かべ、ゆで卵をみんなに配り始めた。

「さて、食べたら行くよ!!」

 私は笑った。


 全員が馬に乗り、パステルを先導に夜の草原を走り始めた。

「ここからだと、マーケットまで三十分くらいかな」

 私は地図を持って、無線の省電力モードを解除した。

「アルファワンよりシードラゴン。念のためポイントVに一機飛ばして。荷運びだよ!!」

『ラジャー、スタリオンか?』

「そんなデカいのいらないよ。チヌークで十分過ぎるかな……ブラックホークで」

『分かった、コマンダーだ。買い物か?』

「よし、たまには俺が飛ばす。隊員たちのメシが切れてしまってな。ラーメンでも買っていこう」

 私は苦笑して、衛星電話を取った。

「えっと、金欠だからお小遣い頂戴って事で」

 私は文字情報を送った。

『バカ者、命令を達成してからだ……といいたいがDS弾が欲しいのだろう。一緒に運ぶから任せよ』

 私は小さく笑って、衛星電話をしまった。

「こりゃチヌークかスタリオンだな。弾丸がデカいから何発積めるか……」

 私は笑った。

 馬の隊列は、しばらく進むとマーケットの巨大な建物が見えてきた。

 そのまま入り口になだれ込み、パステルが遮断棒を叩き折って、私たちは市場内の駐車場に入って、馬用の棒に繋いで止めた。

「さて、買い物しようか。これは銃弾の問題なんだけど、全員対物ライフを買ってね。オススメはへカートⅡかな。あれ、よく出来てるから」

 私は笑った。

 実のところ、かなりマイナーな銃だったが、襲撃が拳銃弾程度に抑えられるほどに工夫されていて、こういう物を好む冒険者と呼ばれる仕事をしている人には、かなり重宝がられていた。


年中無休で開いているマーケットは、時間も時間なのでかなり空いていた。

私たちは真っ直ぐライフルコーナーに向かい、店員にへカートⅡの在庫を聞いた。

「はい、ありますよ。十二丁ですか。お持ちします」

 しばらく待つと、店員が台車に山積みにされたへカートⅡを押してきた。

「弾丸が特殊なので、サービスで一丁に付き百発おつけします。滅多に出ない銃なので、こちらとしても助かります」

 店員が笑った。

「それは嬉しいね。あとはスコープとか色々買わないと」

 私は台車を押し、必要な物を揃えた。

「こんなデカい銃いてるかな」

 スコーンがため息を吐いた。

「慣れれば大丈夫だよ。大きくて重いから、逆に銃が跳ねなくて当たりやすいんだよ。会計を済ませたらヘリポートに行くよ。海兵隊のヘリを呼んであるから」

 私は笑った。

「あの、対戦車ロケット弾の在庫が少なくなってしまったので、補充したいのですが……」

 遠慮がちにパステルがいった。

「分かった、すぐそこだしここで待ってるから、いってきて」

 パステルは笑みを浮かべ、重火器コーナーにいった。

「いらないと思っていたけど、私も買っておくかな。重機関銃くらいないとダメぽいから」

 私も重火器コーナーに移動して、世界中で最も使われている、信頼性が高い重機関銃の前で店員を呼んだ。

 二人がかりでなんとか台車に積み込むと、私はみんなが待っている場所にカートを押していった。

「こりゃまるで戦争だね」

 スコーンが笑い、ビスコッティが私の顔をビシバシした。

「いりません、返して下さい」

「ヤダ、欲しいもん」

 しばらくビスコッティとの睨み合いが続き、最後に折れたのはビスコッティだった。

「分かりました。師匠なら容赦しませんが、必要なら買って下さい」

「よし、勝った!!」

 私は笑った。

 重機関銃なので、運用に三人必要だが。十二名もいれば十分だと計算は上がっていた。

「これデカいけど、三人もいれば十分運用出来るから、リナ、アメリア、マンドラで運用してね。細かい扱いは、どうしても行くと聞かない芋ジャージオジサンに任せておくからしっかり聞いておいてね」

 私は弾丸が入った箱を十個お、カートにおいたいた。

「あとは……あれ、スコーンがいないな……」

「はい、さっきまでいたのですが、師匠がどこかに行ってしまって」

 ビスコッティが困った顔をした。

「なにか、お気に入りでも探しにいったんじゃない。あっ、帰ってきた」

 スコーンは帰ってくると、コンパクトモデルの拳銃を見せた。

「これいい。鞄にも入るし十発も装填出来るんだよ!!」

「師匠にしては、珍しくまともなチョイスですね」

 ビスコッティがポカンとした。

「うん、みんなに勧めようと思って。ダメかな」

「いや、いいと思うよ。買いにいこうか」

 私たちは台車を押し。拳銃コーナーに入った。

「みんな同じになっちゃうけど、コンパクトタイプって作っているメーカーが少ないからね」

 結局、私たちはコンパクト拳銃も買い、レジに向かった。

 覚悟はいていたがなかなかの金額になり、私は小切手を切った。

「さて、これでよし。ヘリポートで海兵隊のヘリが待ってるから」

 私は笑みを浮かべ、台車をゴロゴロ転がしていった。

 ヘリポートにはブラックホークが駐まっていて、操縦席にキャンプを張った場所の座標を書いた紙を渡した。

 操縦席の二名にも協力してもらい、買いそろえた武器を全て積んで離れると、ヘリコプターがローターを回して離陸していった。

「さて、キャンプを張った場所に帰ろうか。もうじき夜明けになっちゃうよ」

 私は笑った。

「そんな時間なんですか。急ぎましょう」

 マンドラが呟いた。

 私たちはマーケットを出ると、馬に乗ってカンテラを持ったパステルを先頭に、草原を走った。

 三十分少々でたき火を焚いたキャンプ地に戻り、一人待っていた芋ジャージオジサンがヘリからの荷下ろしを手伝っていた。

「ここを守るというミッションは完遂した。ついでに荷下ろしもな」

 芋ジャージオジサンが笑みを浮かべた。

「これは契約外だね」

 私が小切手帳を取り出すと、芋ジャージオジサンはそのまま暗闇に消えていった。

「これはサービスなんだ」

 私は笑みを浮かべ、小切手帳を鞄にしまった。

 ついでにコンパクトタイプの拳銃をフル装弾でしまい、みんなでへカートⅡを下ろす作業を手伝った。

 全て終わった頃には、夜明けの時間を迎え、荷下ろしは完了した。

 運んでくれたヘリが離陸し、そのまま夜明けの空に向かって飛んでいった。

「さて……」

 私は衛星電話を取り出し、文字データを送った。

 しばらくして帰ってきた返信は『健闘を祈る』だった。

「なんだ、あのクソオヤジ。丸投げかよ」

 私は苦笑した。

 芋ジャージオジサンたちが、飯ごう炊さんで炊いた白メシをひっくり返して蒸し上げ、鍋ではブリ大根を作っていた。

「これは期待出来るね。もうちょっとかかるかな」

 私はノートを取り出すと、新しく魔法を開発しはじめた。

「おりゃあ!!」

 私は出来たばかりの魔法を夜空に向かって放ち、空に綺麗な花が咲いた。

「今のが六尺玉クラスだから、次は八尺玉クラスを狙うか」

 私は呪文の不等関数を弄り、頭を抱えた。

「どうしても六尺になるね。かけ算苦手なんだよね……」

「どうしたの?」

 スコーンが近寄ってきて、不思議そうに聞いてきた。

「うん、花火を打ち上げようと思ったんだけど、これじゃ小さくて」

 私は苦笑した。

「みせて、八尺玉を狙ったの。これ、簡単そうで難しいんだよね。魔道因数が二百五十六って事は、ここで等式を入れてさらに二元一次方程式をぶち込んで……」

 しばらく考えていたスコーンが、満面の笑みを浮かべた。

「出来た!!」

「よし、行くよ。どりゃあ!!」

 凄まじい光量を放つ火球が撃ち出され、夜空に大輪の花を咲かせた。

「これだよこれ、ありがとう」

「うん、マグロ猟に比べれば楽なんじゃない。あんな大きな魚を釣り上げるんだもん」

 スコーンはビスコッティの所に行き、ビシバシされていた。

「なにすんだよ!!」

 今度はスコーンがビスコッティをビシバシはじめた。

「あっ、喧嘩発生!!」

 パトラが消火器を持って、泡がビスコッティとスコーンを塗り撫した。

「あれ、なにしていたか忘れました」

「私も忘れた。さて、そろそろいいかな」

 スコーンが地面に伏せてあった飯ごうをヒックリ返し、カニ穴があいたご飯を軽く混ぜ、茶碗によそいはじめた。

「ブリ大根も出来上がったね。もう一つ欲しいな」

 私が呟くと、芋ジャージオジサンたちが大きな鹿を運んできた。

「獲れたてピチピチだ。これから解体する。見たくないものは見ない方がいい」

 私はみたくないので、ノートパソコンを開いたが、スコーンとシルフィ、ビスコッティが食い入るように見つめていた。

「へぇ鹿の内臓ってこうなってるんだね。これは勉強になるな」

 スコーンがスケッチをはじめた。

 しばらくすると、鹿の刺身が出来上がり、さらに塩焼きも完成した。

「さっそくテーブルにお皿が並べられ、私たちは椅子に座った」

「頂きます」

 私は挨拶をして、まずは痛みが早い鹿の刺身に手を付けた。

 特に癖はなく、なんとなくマグロの歯ごたえに近い感じだった。

「これ美味しい!!」

 スコーンが笑った。

 その時、車が近寄ってくる音が聞こえ、泥まみれの小さな軍用車が列をなしてやってきた。

「呼ばれてきたんだが、これは美味そうだな」

 運転していたコマンダーが降りて、海兵隊員が次々に下り始めた。

「早く食べないと、なくなるよ!!」

 私は声を上げた。

 結局、大規模パーティになってしまった会場は、時々ちかよってくるゴブリンを海兵隊員がぶちのめし、とりあえず平和な晩餐は終わった。

「ありがと!!」

「うむ、こちらこそだな。また呼んでくれ」

 海兵隊の車がUターンして戻って行くと、ジャージのオジサンたちは、残った骨を使って出汁を取っていた。

「ドラゴンと比較して、どっちが美味しいかな」

 ビスコッティがボソッと呟いた。

「ドラゴンだよ。だから、わざわざ狩りに行くんだよ。何十名も連れてね」

 私は笑った。

「そうですか……。楽しみになってきました。特に肩の筋肉の付き具合とか」

「それはいいことだけど、装備が足りるか心配です。食料と水が問題で……」

 ビスコッティが笑った。

「……早くドラゴンに遭いたいな」

 スコーンが呟き、小さく息を吐いた。

 食事が終わり、片付けが終わると、スタイリッシュジャージ軍団は去っていった。

「馬の整備終わりました」

 クランペットとアリサが、報告書を纏めて持ってきた。

「分かった、お疲れさま」

 私は小切手帳を開き、定価より少し色を付けて金額を書き、クランペットに手渡した。

「あれ、こんなに……。ありがとうございます」

 クランペットが笑みを浮かべて去っていった。

「これから裏仕事だぞ。あんなに食べちゃって平気かな」

 私は苦笑した。

 スコーンファイル755。それは、絶対に表に出してはいけない物だった。

「755、163、980……全く、機密が多い国だこと」

 私はもう存在しない研究所の機密ファイルに、ちょっとだけ思いを馳せた。

「さて、あとは周辺施設だね。F-15Dが大挙して押し寄せている頃だね」

 私は苦笑した。

「さて、寝ようか。ポヨンポヨンするシートも敷いたけど、一人用のテントなんだよね。 私は手近なテントに入ると、魔力灯を付けた。

「オレンジ色がいいな。少し暗めで」

 魔力灯の色が変わり、私は静かに目を閉じた


 翌朝、起きてテントを出ると、芋ジャージオジサンたちが朝食を作っていた。

「おはよう」

「うむ、異状なしだ。あり合わせだが、朝飯を作った。口に合えばいいがな」

 遅れること数分で、みんながテントから這い出て聞いた。

「今日は芋ジャージオジサンたちが、料理を作ってくれたよ。ゆっくりもしてられないから、かなり前から作ってくれたんじゃない。みんな、ちょっと早めに食べよう」

 私はみんなに声を掛けた。

「アリーンがまだだね。相変わらず寝起きが悪いこと」

 私がアイリーンのテントを覗くと、自分で髪の毛を切って、ベリーショートにしていた。

「それだよ、ハウンドドッグ。またの名を犬姉!!」

「それ廃業したんだけど、どうもダメだね」

 私は笑った。

「さて、もうちょっと待ってて。納得いかないなぁ」

 私はテント内に入ると、アイリーンの髪の毛をバサバサ斬りはじめた。

「はい、出来た!!」

「うん、これでいい。動きやすくなった」

 アイリーンが笑った。

「全く……このふわふわシートは自分で片付けてね」

 私は苦笑して、テントから出た。

 その間に朝食が出来上がり、早めの用事があったのだろう。ジャージ軍団が、手早く朝食を済ませ、食器を洗ってからサッとどこかに散って行った。

「目的地はここです。街道に戻るより、このまま草原を進んだ方が早いです」

 パステルが笑った。

「そっか、ここはどこ? って感じだから、任せるよ。

 私はテントを片付け、馬の鞍の後ろに縛った。

 安全のためゴーグルを付け、革鎧の下に着た白衣のボタンを押して迷彩モードにした。他のみんなは迷彩になっていなかったが、仲間内で迷彩になっては困るので、そういう仕様にしたのだ。

 馬が走り出し、ゴーグルに土や小石が当たり。殿ならではと苦笑した。

『下が石畳ではないので、全力で飛ばせます』

 無線でパステルの声が聞こえた。

「了解、まだ慣れていない馬だから無茶しないでね」

 しばらくすると、ドカーンともの凄い音が聞こえた。

「なんかいたな」

 音に反応したか、馬の隊列が乱れたが、すぐに元通りに戻った。

『パステル、もっと速度上げられる。どうも狙われてる気がする……」

 私は無線でパステルに呼びかけた。

『はい、両舷全速。出力最大でいきます!!』

 馬の動きが速くなり、私の馬は徐々に離れはじめた。

「速いな。いいなぁ」

 そこそこ距離が開いた時だった。

 空が暗くなるほどの矢が私目がけて飛んできた。

「うわ!?」

 私は馬を歩かせ呪文唱えた。

 防御結界五枚掛けが私と馬を覆い、そこに雨のように矢が当たった。

「どこのバカよ……」

 私は呪文を唱え、周辺探査の魔法を使った。

「……いた。何人いるんだか」

 私は無線を広域モードにした。

「エマー、G87ポイント」

『こちらレンジャー。指定ポイント確認。一分待ってくれ』

「了解。粉々に粉砕しておいて」

 私は飛び盛る矢の中、防御魔法が切れたら張り直すを繰り広げ、レンジャーの到着を待った。

 しばらくして、レンジャーのマークをつけた攻撃ヘリが飛来し、機首の機関砲を発砲しはじめた。

 それとほぼ同時に、チヌークヘリコプターが到着し、後部からロープラペリングで隊員の降下がはじまった。

 矢の攻撃が収まったため、私は結界を解いて。馬を全速力で走らせた。

 しばらく進むと、馬の隊列が駐まって待っていた。

『大丈夫ですか?』

 無線でパステルの声が聞こえた。

「うん、大丈夫。邪魔が入っただけだから。しつこい盗賊だよ」

 私は苦笑した。

『間もなく街道に戻ります。街道パトロールがしっかりしているので、大丈夫でしょう』

「了解」

 再び進み始めた馬の隊列は、草原から街道入り、少し速度を落とした。

 いくつかの検問を突き抜け。私たちはノンストップで、近くの町に入って休憩する事にした。

 パステルと無線でやり取りしながらその町に入ると一体のオークが暴れていた。

 オークとは通称『鬼』と呼ばれる魔物で、群れになると手がつけられないほどの面倒なヤツだった。

 私たちは馬から飛び下り、普通の剣を抜いてオークに向かって行った。

 力任せに棍棒を振るオークに背後に回り、アイリーンがオークの攻撃をかわしてぶん投げた。

 そこにマルシルの剣が喉笛を貫き、そのまま首を跳ね飛ばした。

「あっけなく終わったね。さて、休憩」

 私はオークの死体を瞬間凍結させ、剣でひたすら叩きまくって粉々に粉砕した。

 近くに入った飯屋に入ると、割引チケットをもらい、私たちは空いている席に座った。

「まあ、適当に頼もう。私は唐揚げ定食でいいや」

 それぞれが注文を済ませ、もっと大事な馬の世話をここまで追ってきたいつもの馬屋が世話をはじめた。

「よう、見てたぜ。いい腕してやがるな」

 ヨレヨレの黒スーツを着て、黒い帽子を被った男性が声を掛けてきた。

「俺は流しのガンマンをやっていてな。剣なんざゴメンだが、一発勝負しねぇか?」

「えっ、勝負?」

 アイリーンが笑みを浮かべた。

「いや、お前じゃねぇ。リーダは誰だ?」

「いいけど、勝ったらここの払いはあんた持ちね」

 私は椅子から立ち上がり、ホルスターから拳銃を抜いて動作チェックをし、再びホルスターにしまった。

「ルールは簡単だ。お互いに背を合わせて十歩歩いたところで撃つ。それだけだ」

「まあ、お手柔らかに」

 私と男性は店からでて、誰もいない通りで背を合わせた。

 そこから十歩歩き、私は素早く拳銃を抜き、引き金を引いた。

 肩に痛みが走り、私は剣を抜くと、同じく被弾した様子の男に接近して、切っ先を顔面に向けた。

「これで満足?」

「ああ、いう事ねぇ。俺も焼きが回ったもんだな」

 男は口笛を吹き、やってきた馬に乗って、町の外に出ていった。

「イテテ……誰だか知らないけど、あんたもいい腕してるよ。しかし、痛い……」

 店からアメリアが飛びでてきて、慌てた様子で回復魔法を使った。

「あれ、効かない!!」

 むしろ、傷口が広がった気がすると、ビスコッティが飛びでてきた。

「あれ酷い傷ですね。師匠を呼んできます」

 ビスコッティは店内に入ると、白衣モードにしたスコーンが駆けつけてきた。

「ぎゃあ、なにしたの。どんどん傷口が広がってる。縫合したくても、これじゃダメだよ。ケチャップライスを食べてるマンドラでもなんでも、とにかく回復魔法出来る人呼ばなきゃ!!」

 ビスコッティが店内に入り、さながら戦場のようになってしまった。

「酷く撃たれたね……でも、こんな広がり方するなんて」

 スコーンが鞄から注射器を取り出し、持っていたアンプルから注入した。

 ぴゅっと針の先から薬剤を出し、それを私に皮下注射した。

「痛み止めだけど、ないよりマシでしょ」

「ありがと。ぶっちゃけ、痛い」

 私は苦笑した。

「おかしいな、どんどん広がって出血も酷いよ。ビスコッティ、あれ作って!!」

「分かりました」

 ビスコッティが自分の鞄に入れている鞄から、魔法薬の材料を取り出しはじめた。

「えっと……」

 ビスコッティオリジナル魔法薬レシピを見ながら、乳鉢を取り出しゴリゴリと生薬を作りはじめた。

「出来ました!!」

 ビスコッティが作った生薬を、私の傷口に塗り始めた。

 今までじわっとした出血が、いきなり噴水のように吹き出た。

「ダメだ、手に負えない。圧迫止血!!」

 ギルモアがタオルをで私の傷を抑え、あっという間にタオルが真っ赤に染まった。

「あの、そろそろ意識が……」

「ダメ、ビスコッティ。ビシバシして起こして。

「分かりました」

 ビスコッティが私の頬に往復ビンタした。

「えっと、こういう時はパトラしかない。呼んで来て!!」

「もういるよ」

 パトラが小さく笑みを浮かべた。

「ちょっとタオルを退けて。これ、逆魔法だよ。私の止まるんですEXで出血は止まるから」

 パトラが薬瓶を取りだし、私に苦い液体を飲ませた。

「あっ、出血が止まった。あとは縫合だね」

「拳銃で撃たれたわりには広範囲だね。これ、難しいな」

 スコーンが私の傷を縫合しながら、額に汗をかき始め、それをビスコッティが拭いた。「傷口が広すぎるな。これは、縫合出来ない」

 スコーンは縫合を諦め、パトラを見た。

「うん、こんな時のために、治るんですVSOPって作ったんだけど効くかな」

 私は痛みで逆に眠くなる寸前で、パトラの薬を飲んだ。

 肩全体にまで広がった傷口が治っていき。最後の一差しでスコーンが縫合をはじめた。「しばらく動かない方がいいけど、この街は医療施設がないし、この時間じゃ宿も空いてないし……」

 パトラが新しい薬瓶を取りだして、私に渡した。

「マンドラゴラをすりつぶして、色々調合した体力回復薬今が飲み時だね」

 パトラは小さな薬瓶を私に飲ませた。

「すげぇ苦い……ありがと」

「うん、マンドラゴラは苦いから。少しでもマシなようにしたんだけどね」

 私はゆっくり立ち上がり、体が動くか確認した。

「よし大丈夫。もう冷めちゃってるだろうけど、昼ご飯食べよう!!」

 私は笑った。


 本当は宿が開いたら休めとスコーンにいわれたが、ただでさえ遅れている旅程を消化するするために、私は肩の痛みを気にしながらも、パステルを先頭に街道を馬で走りはじめた。

「今日はタルミスまで行ける?」

 私はトークボタンを押してパステルに声を掛けた。

『はい、余裕です。しかし、急ぐ旅に変わってしまったので、通過して野営しましょう。タルミスの税金は高い事で有名なので』

「分かった、任せるよ」

 私は苦笑した。

 しばらくなにもないまま進むと、反対車線を進む商隊の隊列に出会い、お互いに手を上げてそのまま通過した。

 景色は草原地帯から砂漠に変わり、どうしても夜がくる前にここを抜けたかった。

『規模は小さいですが、砂嵐が接近中です』

「分かった」

 私はみんなに連絡して、自分も赤い尾灯を付けた。

 パステルが馬の速度を上げ、そのまま砂嵐の街道に突っ込んだ。

 前の尾灯だけが頼りで進むと、砂嵐を突き抜け。今度は中規模な砂嵐が私の目にも見えた。

「こりゃついてないね。突撃あるのみか」

 私たちは今度は中規模の砂嵐に突入した。

 凄まじい風が渦巻き、馬ごと持っていかれそうな中、私たちは迅速に馬を走らせ続けた。 どのみち急ぐ予定だったので、砂嵐なんざ関係ないと爆進を続けた。

 しばらく馬を飛ばして、砂嵐を抜けると私たちは馬の速度をさらにあげ、二百四十キロほど続くカラカリ砂漠を街道に沿って突き進んだ。

 途中の村で馬を休ませながら、私たちは夕焼け空の下、なんとか砂漠を横断しきった。「よし、なんとかなったね。再び景色が草原地帯に変わり、私は胸をなで下ろした。

「そろそろ今夜の準備しないとダメだよ」

『分かっています。この辺りの草原にしましょう』

 パステルの声に私たちは街道の石畳を外れ、草原にテントを張り、たき火を焚いてキャンプ用ガス台をセッティングした。

 程なく日が暮れて、たき火の赤々とした火が温かく感じた。

「砂漠が近いので、気温差があります。眠るときは寝袋を使って下さい。

 夕食の準備をしながら、パステルが笑った。

「アレ面倒なんだよね。でも、確かに寒くなってきた。温かい物を食べたいね」

 私は笑みを浮かべた。

「今日はクラムチャウダーです。初めて作るので、味は保証しませんよ」

 やがていい匂いが漂いはじめ、ビスコッティがパンを切り始めた。

「ビスコッティ、無理やり縫合したから糸がなくなっちゃった。持ってる?」

 スコーンが元気なくいった。

「はい、持ってますよ。使って下さい。

 ビスコッティが笑った。

「よかった、今後なにが起こるか分からないから……

 スコーンがため息を吐いた。

「まあ、これも『冒険』だよね」

 私は笑った。

「はい、冒険です。どこが旅人ですか!!」

 パステルが笑った。

「うん、最近冒険者に近寄ってきたなって思うけど、あくまでも旅人だよ。好きで危険に挑んでいるわけじゃないからね」

「はい、分かっています。しかし、今回は冒険者です。赤竜洞なんて、素敵じゃないですか!!」

 パステルが笑った。

「まあ、一応は冒険者の身分証明証は持っているんだけどね。そうしないと、入れてもらえない場所があるから」

 私は鞄から冒険者の身分証明証を取り出した。

「随分年季が入っていますね。実は、冒険好きでしょ?」

「まあ王位継承件をもって城を徘徊してるだけでも、ある意味冒険だけどね。やたらと誘拐されるから」

「それです、それが冒険なんです。どっかの王女が誘拐されないかな……」

 パステルは笑みを浮かべた。

「それ、この前の私だよ。ヘボいヤツらでよかったけど」

 私は笑った。

「いっそ、装甲車と一緒に対戦車ミサイルで破壊しようかと思ったのですが、なんとか自制しました」

「あぶね……。そういうのは、大事に取っておきなさい」

 私は苦笑した。

「分かっています。ほんの冗談です。さて、夕食も出来たようですし、食べましょう」

 パステルは大鍋から小ぶりの器に中身を移し、私はそれをテーブルに置きはじめた。

 特有の香りが漂う小鉢とパンが揃うと、私たちは頂きますをして食べはじめた。

「これ、本当に初めて作ったの? 美味しいよ」

 パトラが笑った。

「うん、美味い……」

 ビスコッティが、お代わりを次ぎに小鉢を持って、鍋の方に行った。

「縫合痕が残っちゃう。そんなにヘボい自信はなかったんだけどな……」

 クラムチャウダーを食べながら。スコーンが小さく息を吐いた。

「だから、気にしない。名誉の勲章だと思っておく。決闘を申し込むだけあって、さすがにいい腕してるね」

 私はポケットに何か入っているのを見つけ、それを取り出した。

「お宝は頂いたぜ。ルパン三世」

「な、なんじゃこりゃ!? お宝ってなに?」

「うん、さっき赤ジャケットの変なヤツがきて、杖を持って逃げていったよ」

 パトラが笑った。

「バカ、あの杖いくらしたと思うんだよ。わざわざ特注したのに……」

 私はため息を吐いた。

「また作って貰えばいいじゃん。あれはチンケなこそ泥じゃないね。プロの仕事だよ」

「そうなんだけど、扱ってる店が少ないんだよね。税金ばっかり高くて、杖代はせいぜい三十万クローネくらいなんだけど」

 私は苦笑した。

「まあ、杖なんて滅多に使わないからね。儀式魔法を使うときには、私が予備を一本リナに預けてやればいいよ。滅多にないけど」

 パトラはニヤッとした。

「パトラの杖はさらに変なんだよ。私じゃ使えないな」

「うん、わざとそうしたから。木の杖だけど、中に金属が……おっと」

 パトラが笑った。

 私たちは夕食を終えると、パトラが食器を洗い始めた。

 私はたき火の前に座り、イワナが焼けるのを待っていた。

「なに、まだ食べるの」

 マンドラが笑って隣に座った。さらにフェメールも座ると、程よくイワナが焼き上がった。

「このまま食べよう。小骨が多いから気をつけて」

 私はイワナを食べはじめ、小骨はペッと吐き出して、一匹食べ終えた。

「そういえば、二人とも冒険者許可証持ってる?」

 私が問いかけると、二人とも頷いた。

「私の家では必須なんです。どこでも行けるように」

 マンドラが頷いた。

「嘘こけ、勝手に取ったんでしょ。マンドラも王位継承件をもってるんだから、出来れば城で過ごさせたいはずだから。フェメールは?」

「私は城が嫌いな妃なんです。ヘタに出歩くと見張りと護衛を兼ねた者がつくので、こっそり抜け出すのは大変だったんですよ」

 フェメールは笑った。

「そりゃそうだろうね」

 私は笑みを浮かべた。

 しばらく雑談していると、イワナを食べにきたと思われるアイリーンが、一瞬固まって逃げようとしたが、あっさりフェメールにとっ捕まった。

「……なんですか?」

 アイリーンがため息を吐いた。

「いつかは飛び出すと思っていましたが、ついに見つけました。帰りますか?」

「……嫌です」

 アイリーンの元気があっさり奪われた。

「そうですか。まあ、そう思ってるのは、私だけではないはずですけどね。まだ準備中ですが、いずれ共和国になるでしょう。むろん、盟主国はフィン王国ですよ。私たちは自国を守るだけです。よって、王位継承件をもっているのはこの子です。頑張ってくださいね」

 フェメールは笑った。

「共和国……結局今までと大差ない」

「違うよ。私は逃れられないけど、分裂していた国を一つにしただけだから。一国を統治するんじゃくて、周辺五カ国が集まって会議で物事を決めるんだよ。だから、せいぜい地方領主くらいの扱いになるよ。もっとも、国王が逝去されたら、次はあなたですってなるけど、女王になるのは嫌でしょ?」

 私は笑った。

「女王なんて冗談ではありません。第二王女にすればいいじゃないですか」

「そうはいきません。領主になるだけで、あなたも高い段に座る事になります。楽しみですね」

 アイリーンは、ため息を吐き、そのまま逃げていった。

「女王より楽だと思うのですが……まあ、今はナイフ野郎マクガイバーでいいでしょう。ところで、皆さんはフィン王家と聞いています。元々、王女だった者を除いて。リナさんはコロン王国。すなわち一人っこなので、拒否権はありません。地域の盟主となるのは当然です。あとは我が国はアイリーンがいます。マンドラさんも……王家の者が多いので省略しますが、この国を見聞するのはいいことです。大事な事は足で稼げ。エルフの基本です」

 フェメールが笑った。

「あの、アイリーンが逃げちゃいそうな勢いですが……」

 私は苦笑した。

「心配ありません。馬の手綱をちょっと弄っておきましたので、あの子には解けないでしょう。さて、、様子を見てきます。ヤケを起こすと、すぐになんか撃ったりナイフを持って暴れたりしますので」

 フェメールが笑みを浮かべて、静かに歩いていった。

 よく見ると、エルフのシンボルのような白いサンダルを脱ぎ、完全無音だった。

「怖いな。あれで忍び寄られたら、気が付かないよ」

 私は苦笑した。

「イワナは?」

 パトラがやってきて、なにもないと指を咥えてそのまま自分のテントに戻り、泣き声が聞こえた。

「……数が足りないよ」

 マンドラが苦笑した。

「……穴ぼこ」

 私は呪文を唱え、無駄な穴ぼこを空けた。

 そのまましばし二人で焚き火を見ていると、パトラがソーセージを串に刺して持ってきて、ジワジワ焼きはじめた。

「どこで見つけたの?」

「うん、ポッケに入ってた!!」

 パトラは笑みを浮かべ、適当な所で食べはじめた。

「……傷んでいたかも」

 パトラはポケットから薬瓶を取り出し、『下剤』と書かれた魔法薬を一気に飲み干した。

「……ん?」

 パトラが変な顔をした。

「あれ、なんだかお腹が……」

 パトラからお腹がキュルキュルいう音が聞こえた。

 パトラが薬瓶を投げ捨て、テントの陰に隠れた。

「あれシールが剥がれてる」

 そっとシールを剥がすと片方は三つ星が描かれ、もう片方は星が十個並んで張ってあった。

「なんだ、この星マーク」

「おーい!!」

 アイリーンが隣に座った。

「なんかパトラが大変な事になってるみたいだけど……」

 私は拾ったパトラが飲んだ薬瓶をアイリーンに渡した。

「ああ、これ下剤だね。星十個!?」

 アイリーンが転けそうになった。

「なにそれ?」

「下剤の中でも最強のヤツだよ。私も慢性便秘対策で飲んでるけど、星三つだよ。これが、薬の強さを示すんだ。今頃、パトラのヤツ、腹痛で死んでないかな。ちょっと探してくる!!アイリーンが自分のテントからトイレットペーパーを持って、パトラを探しにいった。

すぐにアイリーンが戻ってきて苦笑した。

「倒れて泡吹いてた。トイレットペーパーだけおいてきたよ」

「それはご苦労様。ねぇ、そろそろニックネームの犬姉が恋しくなってきたでしょ?」

 私は笑った。

「まぁね。ずっと使っていたから、本名なわけないけど、そっちの方がしっくりくるよ」

「じゃあ、触れ回ってくる。ついでにパトラの容態をみに、医師チームを派遣するよ」

 私は笑って、各テントを回った。

「これからアイリーンの事を犬姉て呼んで。本人の希望だよ。ニックネームみたいなものかな」

 こんな調子で私はテントを回り、医師チームを連れて現場へ向かった。

「あっちゃあ、気絶してます。これを直す薬は……」

 スコーンがなにやら注射すると、パトラの意識が回復し、弱々しい声で「見ないで」と呟いた。

「これで大丈夫です。あーあ、服までべったり。洗いましょう。応急的な担架を作ります ビスコッティはその辺の太い枝をチェーンソー切りはじめた。

 私は無線を広域チャンネルに切り替えて、海兵隊に緊急連絡をした。

「空きがないからチヌークでくるって。十分も掛からないって」

 私は笑みを浮かべた。

 ベタベタパトラの服を着替えさせていると、チヌークヘリコプターがバタバタと飛んできた。

 草地に着陸すると、軍服を着た人たちと白衣を着た医療班が大勢降りて来た。

「うむ、このまま緊急搬送するぞ。なんだってこんな目に遭ったんだ?」

 いつも無休のコマンダーが声を掛けてきた。

「大丈夫。もう治る……くっ」

 お腹の中を全て吐き出したのだろうか、パトラは垂れ流しながら意識を失った。

「おい、運ぶぞ。これはマズいかもしれんな」

 チヌークと軍服姿のみなさんは、パトラを担架に乗せて、乗り遅れた医療班を残し、そのまま離陸していった。

「あの肩こりとか腰痛はありませんか?

 困った様子で、置き去りにされた医療班の一人が聞いた。

「うん、肩こった。いい薬ある?」

 私は苦笑した。

「はい、注射なのでチクッとします。大丈夫ですか?

「うん、平気」

 私は注射を打ってもらい、なんだか身が軽くなったような、そうでもないような変な感覚を覚えた。

「これダメだよ。強すぎる!!」

「そうですか。あっ、ヘリの音……」

 バタバタと音を立て、ビスコッティが大きく円を描いて真ん中にHマークを特殊チョークで書いた。

 ビスコッティが逃げると同時にに、着陸灯を点灯させたブラックホークが着陸してきた。大急ぎで医療班を回収し、ブラックホークは飛び立っていった。

 しばし沈黙が流れ、誰かが私の方肩を叩いた。

  振り向くと重武装のスラーダが立っていた。

「帰りなのですが、なにか大騒ぎが起きているので、心配してきたのです」

 迷彩服を着たスラーダが笑った。

「実は……」

 私は事の顛末を話した。

「そうですか。災難でしたね。よりによって、星十個ですか。あとでぶん殴っておきましょう」

 スラーダが笑った。

「ぶ、ぶん殴る!?」

 スコーンが声を上げた。

「はい、それだけの実力があって、魔法薬の精製許可をしているのです。よりによって、自分の薬でこの有様では、なにもしないわけにはいきません。ぶん殴ってから十日前後の魔法薬精製を禁止しますので、当たり前の事だと思って下さいね」

 スラーダが小さく笑った。

 小一時間ほど立って、チヌークヘリコプターが戻ってきた。

「治ったよ」

 パトラがため息を吐いた。

「パトラ、ちょっと来なさい」

 スラーダがパトラを呼び寄せ、一発顔面にパンチを叩き込んだ。

 吹っ飛んだパトラをゲシゲシ蹴飛ばし、無理やり立ち上がらせると、鳩尾に膝を叩き込み、思い切りぶん投げた挙げ句、さらに蹴り転がせてキュウリで頭を引っぱたいた。

 折れたキュウリを口とお尻にねじ込み。スラーダの説教がはじまった。

「あっ、すぐ終わりますよ。パトラ、一週間魔法薬の精製を禁止します。分かりましたね」

 最後にハイキックをパトラにお見舞いし、さらにお尻のキュウリを糸で縫い付けて、それを蹴飛ばして叩きおり、スラーダは去っていった。

 あまりの事に、私たちが近づけないでいると、パトラが血まみれでやってきた。

「ほら、怒らせると怖いんだから。ここまでは、滅多にないけど」

 パトラが笑った。

「な、なにもいえない……」

 私は唖然として呟いた。

「とりあえず、傷の手当てしよう」

 なんとかお尻のキュウリを引き抜くと、立ち去ったはずのスラーダがオモチャを取り出し、パトラのお尻に突っ込み鍵を掛けた。

「真っ先に抜くと思ったので、様子を見に来ました。体調もあるので、一時間で許します。あとこれか……」

 スラーダはパトラに首輪と手枷を後ろ手にはめ、鍵を掛けると適当な木に鎖を回し。鍵を掛けた。

「こっちは何時間か分かりませんよ。朝まででやめない可能性もあります。どうせ、今日は食欲なんてないでしょう」

 スラーダはパトラの上に座り、私を手招きで呼んだ。

「オモチャの振動調整リモコンです。あなたに預けますので、疲れたら上に座って下さい「……はい」

 断ると怖そうなので、私はいわれた通りリモコンを受け取った。

「あとは尿道カテーテルと……」

 スラーダは容赦なく、パトラに尿道カテーテルを突っ込んだ。

「水はいりません食べ物も抜きです。最大で、明日の朝までにします。可愛がってくださいね」

 スラーダはさらパトラをに蹴りまくったあと、どこかにいってしまった。

「……どうしよう」

 私は取りあえずリモコンを最大にして、困ってしまった。

「鎖が長いから、これでもやるかな。趣味じゃないんだけど……」

 私は抱きかかえるようにして、パトラ自身の排泄物まで連れて行き、その上に顔面を押しつけた。

「こうなったら、ヤケだ。自分の糞だろ。食え!!」

 私は頭をぎゅっと押しつけ。小さなため息を吐いた。

「ほら、ちゃんと食べろ。綺麗にしろ。いいな?

 パトラがなぜか素直にいうことを聞くので、お尻のオモチャもちょっと弄って遊んだ 「なんでやねん。もう、困ったわ!!」

 思わず生まれ故郷の方言を出しつつ、パトラの頭を強く押し。途中でトイレットペーパーで顔を拭き、何度も繰り返した。

「あーあ、私もちょっと……これは生理現象だからね。やりたくてやってるわけじゃないから」

 完全にヤケクソになった私は、パトラの頭の上におしっこをした。

「ポケットに下剤が入ってるよ。三つ星のちょっと濃いやつ。飲めばいっぱつだから、うんこして!!」

 私はもう鬼になって、パトラのポケットから三つ星の下剤を飲んだ。

 しばらくすると、止め用のない凄まじい量の排泄物が吹き出し。アー私って便秘だったんだと、変に冷静になってしまった。

「ありがとう、これで朝まで過ごすよ。スラーダは朝までっていったら朝までこれだから。あと少しで、お尻のオモチャをとりにくると思うよ。みんなはご飯にいって。ごめんね。スラーダは遊ぶ相棒を決めて、ずっと付き合わせるから」

「それはいいんだけど、これどうしよう。ついブチ切れてやっちゃったけど、シャワーはないんだよね」

「それがいいんだよ。このまま「赤竜洞」にいこう」

「それはダメ。出来る限り汚れを落として……パステル、この近くに公共浴場がある場所は?」

「は、はい、あと十分くらいの場所に町があります。早朝に出ましょう。私が髪の毛を洗うので」

「それは私の仕事だよ。なんか、パトラが可愛くなってきた」

 私は苦笑しした」

 しばらくすると、スラーダがやってきて、お尻のオモチャを取り外し、そのまま笑みを浮かべて去っていった。

 こりゃ、本当に朝までこれだね。みんな、眠かったら寝ていいよ。私が抜擢されたみたいだから、このまま見張りとお相手するから」

 私は苦笑した。

「ゴメン、もう三時だから寝るね。明日は早いってパステルから聞いてるし」

 犬姉があくびをしながらテントに向かって行った。

「あの、師匠どうしましょう」

「うーん、マリーがいれば大丈夫だと思うけど、なにかあったら叫んでね。バタバタしてたから、寝不足になりそうなんだよ。じゃあ、よろしく」

 ビスコッティとスコーンがテントへ向かった。

 結局、みんなテントに戻り、静けさと虫の声が辺りを支配していた。

「もうなんかやるっていわないでね。疲れるから」

 私は地面に座り、苦笑した。

「そう、ならこうしよう。私の排泄物舐めて。美味しくはないけど、気分を共有しよう」

 パトラが真剣な目でいった。

「そ、そんな、マジにならないでよ……」

「この手枷。ぶっ壊れてるから、簡単に外せるんだよ」

 パトラが手枷を自分で外した。

「マジでやるの?」

「うん、冗談じゃいわないよ。ほら四つん這いになって」

 私はどうしていいか分からず、とにかくパトラのいうことに従った。

「混ざっちゃったから、自分の分もあるよ。舐めて」

「こわいな。なにか考えてるでしょ」

 しかし、さっきパトラにやった引け目もあるので、私はそっと舐めた。

 パトラが私の顔をギュッと地面に押しつけ、顔がベタベタになった。

「これやっったの。凄いな……」

「うん、なかなかやれる人がいなくて。やってみると、面白いよ」

 パトラは、排泄物で塗れた手で私の顔を拭いた。

「いいねとはいえないけど、これのどこがいいのか……」

 開いた私の口にパトラが指を突っ込んだ。

「どう、お味わ?」

 パトラが笑った。

「あら、仲良く遊んでますね」

 足音もなく近づいていたスラーダが笑った。

「まあ、定期巡回です。さすがに、ずっと放置は出来ないので」

 スラーダが笑った。

「パトラ、これはお仕置きですよ。遊んでどうするんですか。マリーさん、ごめんなさいね。この子はこういう所があって、これはという方にお願いしたのです。暇になると、すぐこういう遊びをしてしまうので、嫌なのは重々承知していますが、あとでそれなりのお礼はしますので、可愛がってあげて下さい」

 スラーダが笑みを浮かべて去っていった。

「さて、次はなにやりたいの?」

「うん、仰向けに寝て」

 私は言われたとおりにした。

 エルフは下着を履かないというのは本当だった。

「じゃあ、行くよ」

 パトラは私の顔におしっこをかけ、そのまま顔に座った。

「綺麗にして。ただ舐めればいいから」

 私はいうとおり、パトラの性器を舐めた。

「もうちょい左、ああそこ」

 パトラが笑った。

 そのまま何分か経つと、パトラは私の顔から降りた。

「今度は逆やる?」

「いいよ、下着履いてるし、おしっこなんてそんなに出ないよ」

 私は苦笑した。

「関係ないよ。下着なんて脱がせちゃうから」

 パトラが私の下着を脱がし、局所を舐めはじめた。

「こら、気持ちよすぎて死ぬ!!」

「へぇ、面白いな。こんなもんじゃダメだよ。今はマリーがオモチャだから」

 そのまま何回アレしたか分からないが。ようやくパトラが飽きた頃には、私はもうヘトへとだった。

「あのね、限界があるっての!!」

「うん、分かってる。でも、いい声出してたよ。

 パトラが笑った。

「そりゃ、一応大人だからね……まさか、パトラにやられるとは」

 私はよっこらせと身を起こし、ため息ついた。

「これでも得意なんだよ。スラーダとよくやってるから」

「へぇ……まあ、里はどこか閉鎖的だから、機会がないか」

 私は苦笑した。

「ねぇ負けたんでしょ。罰ゲームやろう。もう一回横になって。

「はいはい、もう慣れたよ」

 私が仰向けに横になると、私の口にお尻を当てた。

「エルフだから臭いかもね。どうも、お腹の調子が……」

 パトラは私の口に汚物をぶちまけた。

「こっちの方が味が分かるでしょ。あまり下剤ばかり使うと毒だから、マリーはなしね」

「やれっていわれて出来るか!!」

 私は苦笑した。

 軽く足音が聞こえ、スラーダがやってきた。

「仲良くしてますね。あと二時間で夜明けです。これはサービスです。デザインは悪くないと思うのですが」

 スラーダが私の首にチェーンを巻き目立たない小さな鍵を掛けた。

「ほんのお近づきの印です外したくても、私がその気にならなければ外せませんよ」

 スラーダは笑みを浮かべ、パトラの鎖に私を鍵で繋いだ。

「パトラとも仲がいいようですし、悪くはないでしょう。二人とも。シャワー車を用意してあります。その有様では、外出は出来ませんからね……二時間とはいわず、もうやめにしましょう。

 スラーダは木から鎖を外し、そのまま引っ張って歩いた。

 いつの間にか手配されていたシャワー車にくると、スラーダはパトラの首輪を外した。「狭いですが、二人は入れます。なるべく汚れとニオイを落として下さい」

 私とパトラはシャワー車に入り、顔を丁寧に洗い、頭も洗ってスッキリした。

「これ、なかなかニオイが取れないんだよね。必死こいて磨いても、三日はなんか臭いって感じだから」

 パトラが笑った。

「そんなに掛かるの。 まあいいや。次は浴場でしょ。むりやり落とす!!」

 私は笑った。

 一通りシャワーが終わり、私たちは外にでた。

 待っていたスラーダが私と同じような鎖の首輪を付けて、小さく笑った。

「マリーさんが里に生まれれば面白かったのですが、それはかなわぬ夢ですね。では、私は里に戻ります」

 スラーダが馬に乗り、シャワーカーをおいて馬で帰った。

 取り残されたシャワー車に、早起きが趣味の犬姉が飛び込み、シャワーを浴びる音が聞こえてきた。

「まさか、いえないよね」

 私が呟いた時、首輪がキュッと締まって苦しくなった。

「なにこれ、リモコン操作?」

「さぁ、私もわからないけど、これでやっと信用されたよ」

 パトラが笑った。

 寝起きなのか、パステルがフラフラ歩いてきて、隣の女性用シャワールームに入った。

「あっ、女性用なんてあったんだ」

 私は苦笑した。

「さすがに臭いね。なんとなくだけど」

 パトラが笑った。

「誰よ、こんな事考えたの」

 私は笑った。

「勢いでやっちゃった。まさか、あそこまで遊べるとは思わなかったよ」

 パトラが笑った。

 私たちはシャワーを終え、テントや荷物を片付けて馬の背に乗り。草原から街道にでた。 それほど走らないうちに、次の町が見えてきたが、シャワーを浴びたのでそのまま通過し、赤竜洞に通じる山道を登っていった。

 峠の茶屋で最後の一服を取り、下り坂をゆっくり馬を走らせると、いかにもそれっぽい洞窟の出入り口を見つけた。

「ちょっと行ってきます」

 パステルが洞窟の入り口に入った途端、猛烈な炎が外に吹き出た。

 パステルが慌てた様子で飛び出てきて、両手で×マークを作った。

「ダメです。とても入れません。入り口にいる一匹が荒れているようで、とても近寄れません。撤退です!!」

 私は頷き無線電話で文字情報を送った。

「パステルが撤退ということは、手がつけられないね。残念だけど、撤退だよ。旅にはたまにはこういう事がある。手が施せないものは手が施せない山を下りるよ」

 私は小さく息を吐き馬をUターンさせ、山を下りはじめた。

『せっかく武器を買ったのに、撤退か……』

 スコーンが残念そうにいった。

「まあ、他にも役に立つよ」

 私は無線で返した。

 街道に出ると私たちは馬の速度を上げた。

 シャワールームの脇を駆け抜け。街道の坂を勢い良く下り、草原のを走っていくと、馬屋がスラーダの馬を見ていた。

「どうしたの?」

 私は馬を止めて蹄鉄の交換を行っていた。

「もう直ぐ終わります。よっと」

 クランペットとアリサが作業を終えて、私が小切手を切って渡した。

「毎度です。では」

 クランペットとアリサが馬車で去っていった。

「あれ、みんながいない。先にいっちゃったかな」

 私が無線のトークボタンを押そうとすると、笑みを浮かべたスラーダがそっとそれを取り上げた。

「たまには私と旅しましょう。リーダーは疲れるポジションですからね」

「いいけど、当てはあるの?」

「はい、あそこに見える森の中に、私たちの隠れ里があるんです。

 スラーダが笑みを浮かべた。

「隠し里か、いったことないな……」

「はい、ご案内しようと思って。ほとんど森の中ですが、平和でいいですよ」

 私たちは街道の先に見えるこんもりした森に向かった。


 スラーダを先頭に私たちは森の小道に入り、しばらくして開けた場所に出た。

 小規模な里で、小屋を建てる筒音が聞こえてきた。

「あれは倉庫を建てている小屋です。三十名程度の小さな里ですが、地図にもないので探すのは困難かもしれません」

 スラーダは小屋の脇を抜け、見晴らしのよい白く塗られた小屋の前で止まった。

 私もとまると、スラーダは小屋の扉の鍵を開け、私を優しい笑みで招いた。

 スラーダ床屋に入ると、水を入れた樽と軍用レーションがたくさん積まれていた。

「ここがあなたの家と言ったら?」

 スラーダが笑い、私の首に巻いたチェーンに鍵で部屋の床に留められた長い鎖を留めた。

「私は少し里の様子を見てきます。快適なようにエアコンも付けてあります。それでは、少々お待ちを」

 スラーダが小屋の鍵を閉めた。

 鍵が掛かる音が聞こえ、私は鍵を確認したが、外とおなじでサムターンもなく、外から開けてもらわないと外に出ることが出来なかった。

 続いて窓を確認したが、全ての窓がはめ殺しで開けることは出来なかった。

 こんな状況ではあるが、小腹が空いたので、たくさんあるレーションを一箱取って、もそもそ食べはじめた。

「しばらくっていつだろ?」

 さすがにちょっとだけ不安になった頃、スラーダが小屋に帰ってきた。

「どうですか、居心地は。それが、そのレーションが今日からあなたのご飯です。水が入った樽はいくらでも運んできますので、そこはご安心下さい。

「こんなところに閉じ込めて、一体なにがしたいの?」

 私は苦笑した。

「そのうち分かります。ベッドなんて上等なものは与えませんよ。床で寝て下さい」

 それだけ言い残し、スラーダは扉の鍵を閉めていった。


 窓の外が夕焼けに染まると、私は変わらずレーションを食べた。

「意外とおいしいんだよね。これ」

 私は食事を終え、水が入っている樽からヒシャクで水を飲んだ。

 他にやる事もないので、私は床に寝そべって、ボンヤリした。

「なんかスラーダの機嫌を損ねたかな。まあ、いいや。寝るには早いし、どうしたもんだか」

 私はボンヤリしていると、そのまま寝てしまった。


 深夜に目が覚めると、鎖の許す限り部屋の中を動き回った。

「暇でしょうがないなぁ。お腹も空いてないし……あれ、レーションの数がもの凄く減ってる。スラーダが寝ている間に持っていったのかな。もう三つしかないや……」

 私は小さく息を吐くと、結局やる事がないので、そのまま二度寝にチャレンジし、なんとか寝る事ができた。


 翌朝、私はレーションの朝食を終え、水を飲んだ。

「スラーダがこないな。なにかあったかな……」

 私が呟いた時、小屋の扉が開いて、スラーダが入ってきた。

「どうしたの?」

「いえ、野暮用で。さて、そろそろ鎖を短くしましょう」

 スラーダは私が床に寝そべるくらいまで短くし、鍵を何個も付けて留め。鎖で足を巻いて鍵を掛けた」

「これでいいでしょう。あなたはもう私がいないと、水も食料も取れません。では、また」

 スラーダは小屋から出ていき扉に鍵を掛けた。

「……なんだこれ?」

 私はため息を吐いた。

 時計もないため時間が分からないが、空腹と乾きを抱えて、いい加減嫌になってきた時、スラーダが小屋に入ってきた。

「どうですか、ご気分は」

 スラーダは笑い、レーションを二個目の前においた。

 そのうち一個をスラーダが食べ、小さく笑みを浮かべた。

「これは、私が上という概念をぶっ壊すためにやった事です。そのままでは可哀想だので、まずは食事を摂ってください」

 スラーダは私の口に優しくレーションを入れた。

「これ、きついよ。なにか悪い事したら謝るけど……」

「はい、わざとキツくしたのです。あなたが悪いわけではないのです。こんな私ですが、嫌いな言い方ですがペットになって頂けますか?」

「いいけど……具体的になにをやるの?」

「私は時には命令しますが、あなたとイーブンな関係を築きたいのです。まあ、相棒と思って下さい。私を許せますか?」

「最初から信用していたし、今もそれは変わらないよ。相棒なら喜んで」

 私は苦笑した。

「分かりました、ありがとうございます。では、、鎖を解きますね」

 スラーダは手早く鎖を外し、小さく笑った。

「なにかと思ったよ」

「はい、大事な無線機と衛星電話です。お返ししますね」

 スラーダは私に無線機を手渡した。

「聞こえるかな………」

 私は無線を広帯域に切り替え、みんなに通信を試みた。

「マリーだけど、心配かけたね。聞こえる?」

『はい、ビスコッティです。どうしたんですか?』

「うん、みんな先にいっちゃったから、スラーダとデート。そっちはどこ?」

『分かりやすく、スラーダの里でお世話になっています。これますか?』

「うん、大丈夫。これから、向かうから一時間くらいかな」

『分かりました。お酒でも飲んで待っています』

 ビスコッティのホッとした声が聞こえた。

「スラーダも嫌じゃなかったら同行する」

「バカおっしゃい。私は里の長ですよ。行けるわけないでしょ!!」

 スラーダが笑った。

「じゃあ、里まで行こう!!」

「はい、行きましょう。日記にかかないと」

 私たちは街道にでて、スラーダの里に向かった。


 スラーダの里に着くと、みんなが駆け寄ってきた。

「これこそ冒険です!!」

 パステルが笑った。

「もう、代わりに支障をボコボコにします」

「よし、かかってこい!!」

 ビスコッティとスコーンが殴り合いの喧嘩を始めた。

 こうして、私たちは無事にスラーダの里に着いたのだった・

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