グラウンド

グラウンドに来た僕達は鉄棒の前で立ち止まる。


「それで、改めて頼みがあるんだが…」

「うん…」

 イノは少し恥ずかしそうにしながら、意を決した様子でこう言った。

「俺と友達になってほしい」

「……?」


 

僕は一瞬理解が追いつかず、固まってしまった。

「……ダメか?」

イノが不安そうに僕の顔を覗く。

「………あっ!?いいよ!!むしろ大歓迎!!!」

「そうか。じゃあ…」

彼は右手を差し出してきた。


「友情の握手ってやつだ。ま、よろしく頼む」

「うん!!」

彼の手を強く握った。思わず頬が緩んでしまう。

「嬉しいか?」

「そりゃあ嬉しいよ!だって、友達なんて久しぶりだもん…。ありがとう、イノ」

「ふふっ、どういたしまして」



 ふと、さっきのいじめっ子達の撃退方法が気になって聞いてみる事にした。

「ところで、イノ。あいつらに何をしたの?怪我、してたけど……」

「ん?ああ…。“魔法”だよ」

「えっ?魔法?」

「俺はさ、元々魔法を使うために必要な力…魔力が多いんだ。実際に見て貰った方が分かると思うんだが…」

そう言うと彼は目を閉じ、何かを唱え始めた。


すると冷気が彼の左手あたりから発生し始めて…。

パキッ!という音と共に氷の塊が出来た。

それはまるでクリスタルみたいに綺麗だった。


「本気を出せばもっと大きいのが作れるが、まぁ見せるだけならこれくらいで…って、リディア?」

「す…」

「す?」

「凄いよ!こんなに綺麗な魔法が使えるなんて…!いいなぁ、僕魔法全然使えないから…」

僕は目をキラキラさせてイノの魔法に食いついてしまった。



「別に魔法が使えねーなら練習すりゃいーじゃねーか」

「練習ねー……って、へ?」

「俺だって魔力があるとはいえ、最初から魔法が使えた訳じゃないぜ。ちゃんと魔道書で調べて自分に合う魔法を試しながら、これに辿り着いたんだからな」

「それ……本当?」

「ああ。本当だ。」


「じゃあ…、僕もイノみたいに魔法が使えるのかな…」

「見たところ魔力が無い訳じゃないだろうし、少し頑張れば魔法だって使えるはずだぜ」


今まで魔法に対して苦手意識を持っていたけど…、彼のおかげでやる気が出てきた!



「どうしたら使えるかな…」

「んー…。まずは色んな魔法を手当り次第に唱える事からだな。今日は忙しいから、明日の放課後なら教えてやれるけど」

僕は気がつけばイノの手を握っていた。

「ぜひ!教えて!!!イノから直接教えて貰えるなら、絶対上手くなれるよ!」

「いや、絶対とは言いきれ……」

「だって友達から教えて貰えるんだもん!!僕だって魔法が使えるんだって所をあいつらに見せつけてやるんだ!!!」

「やれやれ…」

やる気全開の僕に対し、呆れ気味のイノ。


「じゃ、明日の放課後に近くの公園で練習な」

「うん!」


約束をし、今日は家に帰った。

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