第9話 倫理無き科学世界/サイバーシフト
突飛な発言のようにも聞こえた。
なんて?
結婚してくれって?
「まあ、お兄様も突然のことで驚きのご様子。
それは当然ですわ?
これまで私はこの思いを秘してきましたから」
いや、ずっとバレバレだった。
私に向ける感情が兄妹のそれを超えて、偏愛のそれになっていることも。
これ以上一緒にいればそれが危険な形になるであろうことも。
だからこそ距離を置いたのだが、手遅れだったようだ。
魔王と呼ばれていても、この体たらくである。
身内への甘さが、このような状況を作り出してしまった。
かわいい妹だったので甘やかしすぎたというか、構い過ぎたというか。
「なあ、うた?
なんかの気の迷いとかそういう、そういうヤツじゃないのか?
あるいはドッキリとか……」
わかっていながらそんな否定の言葉を投げかける。
私は詩に可愛い妹でいてほしいだけなんだ。
執拗に兄に求愛してくるヤンデレ妹になってほしくないだけなんだ。
「ひどいですわ、ひどいですわお兄様。
私はそんな軽い気持ちで心根を打ち明けたわけではございませんの」
そこで、彼女の気配が変わる。
能力を起動し、その力を発揮するための変化。
戦うものならば、誰もがその匂いを嗅ぎ分け理解するだろう。
一切の闘争を忌避しない、戦士の気配。
「ですから。
今日は、力ずくでもお兄様に婚約してもらおうかと思いまして」
「ッ! 〈
「さあ、おいでまし。〈
瞬間、あたりが一瞬で溶解した。
10万分の1秒の激しい閃光が彼女から放たれ、それが辺り一帯を照らしたからだ。
超強力なレーザーのように研ぎ澄まされた光はあらゆるモノを溶解させるに足る。
とっさに展開した〈
光を捕食してエネルギーに変える生物の力を引き出す事もできたが、とっさのことだったため最速で出せる防御行動を取らざるを得なかった。
〈
【
その能力は至極単純である。
あらゆる発想を完成させ、自身の身に実現させる。
あらゆる文明の終点をその身に宿し、自在に引き出すのが〈
それによって引き出される兵器の数々は、一つ一つが世界を滅ぼすに足る凶悪な代物なのだ。
はっきり言ってSFで語られるような技術はすべて、その体から引き出せる。
文明が積み上げた技術というものの価値を唯一人で否定してしまう強大な能力である。
あらゆる生命の起源を否定してその形を歪める兄に似て、凶悪な能力だと言えよう。
で。
それがこっちに向けられていて。
こっちには足手まといもいる状況。
どうしよう。
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能力者:皆崎
能力応用:あらゆる発想を完成させ、自身の身を以て具現化する〈
主な用途:兄に婚約を迫る
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