第7話 反隔離/ディスプリズン

「持続はそんなに長くない、せいぜい一日前後だから待てばそのうち解除されるが」

「乙女を捕まえておいて一日も放置!?」


 乙女。

 いやいや。

 御冗談を。

 そんな言葉が脳裏をよぎったが、あえて飲み込む。

 こいつ相手なら飲み込む必要はないかも知れないが。


「うーん……、こういう時あいつがいればあっさり出れたりするんだが……」

「あいつ?」

「【反隔離ディスプリズン塔坂京とうさかみやこ。隔離する、閉じ込めるといった概念に対する対抗能力持ち」

「へー……」

「で、誰かに縛られることを極端に嫌う自由人で、あと約束というものを一切守らない」

「またダメ人間じゃん!」


 なんなら一秒前に交わした予定を忘れるところまである。

 元々、家庭環境の都合で非常に抑圧されていた反動だと思われるが、それにしたってはっちゃけ過ぎだ。

 【反隔離ディスプリズン】の能力も相まって、本当に捕らえることが出来ない。

 能力発動状態だと部屋に鍵を掛けることが出来ないレベルで束縛することが出来ないのだ。

 どんな状況からも脱出を可能とする能力に、この性格が重なることで……、じっとしていられない多動な人物になっていると言える。


 あと【反隔離ディスプリズン】の応用で約束を反故にしても許されるらしい。


「とりあえず電話してみるか」


 そう思ってスマホを取り出し、京宛に電話を掛けてみる。

 ……が、何度コール音が鳴ろうが相手につながることはない。


「ああ、これは」

「ん?」

「あいつスマホを携帯してないわ」

「ええー!?」


 こいつはSNS依存症なのでスマホを常に持っていないと不安になる人種だからか。

 スマホを携帯しないということが信じられないのだろう。

 ……京はそういう、自身を束縛する概念や思想も嫌いなのでスマホを持ち歩くという考えも存在しない気がするが。


 こういう状況に対処できるレアな概念干渉型の能力なのでつなぎを作ってあるのだが、必要なときにつながらないならあんまり意味がない。


「ううむ、どうするかな」


 【反領域ディスエリア】で閉じられるのは路地を基準とした地面だけなので、上空から逃げようと思えば逃げられる。

 問題はその上空をカバーする範囲だ。

 上方向におおよそ300メートルほど能力の射程があるため、この範囲を飛び越えない限り、路地の形状に沿って強制的に迷子にさせられる。

 それは地上で迷子になるよりも危険だ。


 300メートル垂直跳びは……まあ出来なくもないが。

 やると(未来が)死ぬのであまりやりたくない手段ではある。


「敵さんの登場を待つしか無いかね」

「えー……やだ~!」





■■■■■

 能力者名:塔坂とうさか みやこ

 能力:隔離、捕縛など閉じ込める、拘束する概念に対抗することでその状況を瓦解させる【反隔離ディスプリズン

 主な用途:自由人。約束を反故、社会的束縛の無視、密入国など。

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