第6話 反領域/ディスエリア
バーガーショップから数分歩いた地点で、私はふとその足音に気がついた。
「つけられてるな」
「だから言ったじゃん~。包囲しようとしてるって」
「栄庵突っ込んできたから忘れてた」
いやいや、魔王や逸脱者と言っても所詮ベースは人間だ。
いきなり殴り込みされてそれに意識を持っていかれないほうが変である。
なにせあのガタイがこちらを殴ろうとしてくるのだから。
「で、数は……お前の目に見えるわけ無いか」
やっぱこの未来視役に立たねえ~!
近い因果なら意識しなくても見えるが、遠い因果を見るにはそれなりに集中が必要である。
そしてそれを完璧に制御できるような頭をしていないのだ、この女は。
「ちょっとひどくない!?」
「自分の人間性を顧みてから言え」
とはいえ、明らかに尾行されている状態はまずい。
これからスーパーの特売にも寄らないといけないというのに、尾行があったのでは落ち着いて買い物も出来ないではないか。
振り切るだけなら未来を抱えて走るだけでも十分だが……。
……いや、違うか。
もう私達は罠にかかっている。
見覚えのある建物に、無数に広がった見覚えのない路地。
そして、その路地の向こう側には私自身の背中が見えている。
その場を開くことで閉じ込める【
一言で言えば、現実の地図をめちゃくちゃに作り変える能力。
そのめちゃくちゃは非ユークリッド的、つまりまっとうな接続をしていない。
はあ、まさかこいつを出してくるとは。
かなり厄介である。
どれくらい厄介かというと、【
「ダンナ~? それ厄介の方向性違わない?」
解除されない限り脱出することがかなわないという意味では厄介である。
道順を膨大に発散させることで逃さないということは、それだけ体力を浪費させられるということでもある。
場所は開けているのに閉じ込められる。
そのような矛盾を抱えた能力だと言えよう。
「で……攻略法だが」
「あるんすか!?」
「ない」
能力者がその迷宮の中に居る必要もないし、なんなら隣の県からでも使用できる。
使用する際に本来の道を認識している必要があるが、それも地図を覗き込みながら使えばいいだけの話だ。
対象を逃さないようにするだけなら非常に強力な能力だと言える。
「綺譚のダンナ、これどうするわけ!?」
「えー、どうしよっかなぁ……」
この場にいるなら殴れば止まるんだけども。
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能力者名:三上
能力:道の数と繋がりをめちゃくちゃにすることで迷宮化する【
主な用途:嫉妬からカップルのデートの邪魔をする。
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