第3話
ホームのベンチに腰をどっかと下ろして空を見上げる。吸い込まれそうなほど澄みきった空にたくさんの星々。
遠くには海も見える。
「周りになんにもなけりゃこんなに見えるもんなんだな」
誰に言うともなくつぶやく。
こんな見事なものはどれだけぶりだろうか。小さい頃は当たり前に見ていたであろうこの空も長らく見ていなかったことに今更ながらに気付く。
仕事のゴタゴタにうんざりして逃げるように田舎に帰ってきた。何がイヤ、という訳ではない。全てが順調にまわっている。
表面上は。
『しばらく休みます』
部長の机の上に置いて何も言わず帰ってしまった。責任ある立場で何を考えているんだと怒られるだろうか?何も言われないだろうか?どう言って欲しいんだろ、俺は。
1つの大きなプロジェクトが終わり次のプロジェクトまで間があいてココロにまでスキマができて。廃線となってしまったこの懐かしい駅に座っていて段々とココロの整理ができているのを感じる。
『毎日、お掃除と手入れありがとうございます。またがんばろうという気持ちになりました』
ノートに書き込んでおく。
誰も書いていない、少し黄ばんだノート。
窓口にポツンと寂しく置かれていた。
「明日、朝一で謝ろう」
頭をかきながらホームをあとにする。
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