6話 倉田柚希 ⑥
【あなたの、将来はズバリ!こんなミライ!】
イエスかノーの診断テスト。
たどりついた結果が気に入らなくて、迷った場所に戻って、今度は逆のノーにしてみた。
そして、最終的にたどりついたのは、また同じ診断結果。
人生には多くの分岐点がある。
どの服を着て行こうか。
髪は束ねようか、おろしていこうか。
大抵の場合、分岐点だなんて意識もしていない。
毎日、そんな些細な選択肢を何気なく選んでいる。
今までの人生を、私は最善を選んで生きてきたと言えるだろうか?
思い返すと、後悔が残る場面がいくつかある。
あの時、あぁしてれば、こうしてたら……
そんな、タラレバをやり直しても、それでも最終的にたどり着くところは同じなのだろうか。
運命ってゆうのは、もう全部 最初から決まってるのだろうか。
結婚したとおるが私の運命の人だったとして、どんなにえいちゃんとうまくいっていて、続いていたとしても、やっぱり とおると結婚することになっていたのだろうか。
ずっとずっと、心の奥にあって、いつまでも消えずにいた田坂への想い。
田坂の幸せをずっと祈ってた。
結ばれることはなかったけれど、お互いに初恋の人だったなんてね。
あの初恋を実らせることはできなかったのか。
診断テストのように、もう1度戻って、そこからやり直すことは出来ない。
あぁしてれば良かったのに、と思う後悔も、もしかしたら、そうしなくて正解だったと思えるようになるかもしれない。
「後悔があるから、今の幸せがあるんじゃないのか」
って、田坂が言ってくれたこと大事に生きていこう。
田坂と出会えたこと、えいちゃんと出会えたこと、大切な宝物だ。
人生は何が起こるか わからない。
って、人生を語れるほどじゃない。
まだ折り返し地点にもいっていないのかもしれない。
出会いってゆうのは、ものすごく多いようでも、本当に心を通わせられる相手は数少ない。
そんな少ない確率の中、出会えた人たちを大切に思いたい。
とおると結婚したことに 何の後悔もないし、
とおると結婚して良かったって思ってる。
愛し愛されている とおると、これからも一生添いとげる。
愛しい我が子の成長を2人で見守りながら。
今、私は 幸せだ。
ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−ー−
何年、何十年も繰り返し続いている このサイクル。
何もなかった細い枝に小さな固いつぼみができ、少しずつふくらみ、やがて可憐な花を咲かせる。
花は散り、柔らかな若い葉が青々と茂り、涼やかな木陰をつくってくれる。
木もれびがキラキラと水面を輝かせる。
秋になり、やがて色づく。
真っ赤に染まったその葉は、いつか落ちていく。
隣同士で寄り添っていた葉も、その時がきたら別々に落ちる。
枝から いったん離れたら、あとは風に身を任せるだけ。
遠くに飛ばされるのか、クルクルと回りながら真下に落ちるのか わからない。
落ちる葉には意志はなく、
ただ ひらひらと舞い散るだけ。
真っ赤に色づいた葉が ひとひら、風に舞い水面に落ちて優しく円を描いた。
その円が儚く消えてなくなりかけた時、それを追うように一葉 ひらひらと舞い踊りながら、水面に落ちて、先ほどの葉の上にぴたりと重なり再び波紋が広がった。
最後の最後に 一緒になれたことを歓ぶかのように、円は幾重にも幾重にも広がり水面を揺らした。
ただ、ひらひらと風に舞い散る 何千何万もの葉の中で、それは奇跡的な、しかし、それは運命 だった。
そして、また静かに 何事もなかったかのように、時は過ぎていく。
優しく。
すべての出会いが、縁で結ばれているのか。
現世で結ばれることはなくても、それも運命。
お互いがお互いを想っていたら、いつか また
どこかで出逢う。
運命の人に。
ただ ひらひらと舞い踊る ひとひらであっても
ーー 完 ーー
ただひらひらと舞い踊る ひとひらのように 彼方希弓 @kiyumikanata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます