第6章 1話 倉田柚希 ①
田坂と2人で飲みに行ってから、1年ちょっと過ぎた夏。
私のもとに田坂から封書が届いた。
それは、結婚式の招待状だった。
中に手書きの手紙が一緒に入っていた。
倉田柚希様
“久しぶり ご無沙汰してます。
去年の3月、おまえと会って、不思議なんだけど、勇気をもらった気がした。
結婚のこと諦めるなって、いい相手みつかるって言ってくれただろ!
その時は、そんなの無理だよって思ってたんだ。
だけど、5月に母ちゃんが見合いの話を持ってきて、いつもなら断ったりしてたんだけど、見合いしてみるかなって気になって することにしたんだ。
相手は、7こ年下で、上田の寺のニ女でさ、兄ちゃんがその寺は継いでるんだ。
寺で育ってきたから、寺へ嫁ぐのも、なんの抵抗もないって。
にこにこしてて、初めて会ったのに、なんか、懐かしい感じがしたんだ。
おまえが言ってた【なりゆき】って、ちょっと意味がわかった気がしたよ。
あれよあれよと話が進んで、秋に式 挙げることになったよ。
中野に披露宴に出てほしいんだ。
おまえが俺の背中を押してくれた。
だから、結婚を決めることが出来たんだ。
俺が、幸せな家庭をつくるスタートを祝ってくれないか。 田坂朋徳 ”
田坂、良かった!!
本当に、良かった!!
電話してみようかな。
「もしもし田坂?中野です。今、話せる?」
「おぅ、平気だ。着いたか?」
「うん!おめでとう!!」
「ありがとな!びっくりしただろ!」
明るい声だった。
「うん!びっくりしたよ!
でも、ほんと良かったねー!いい人みつかって!!」
「あぁ、メールでも先にしようかと思ったけど、いきなり手紙送って驚かすかと思ってな!」
ハハハと笑った。
「ね〜、私なんかが出席していいの?
異性とか呼ぶのNGなんじゃないっけ?」
「あはは!異性か!そういや異性だな。
うち、檀家さんとかも大勢呼ぶから、俺の方に女性がいても全然違和感ないと思うけどな。
出てくれよ。
彼女にも親にも、おまえのことは話してあるし。中野のお陰で結婚決まったようなもんなんだからさ!」
「そんな!私はなんにもしてないじゃん!」
「マジで、おっきい勇気もらったよ」
「ありがとう!田坂の結婚式に出れるなんて、すっごい嬉しいよ」
「出てくれるんだな?」
「うん」
「サンキュー!」
「ね〜、7こ年下なんて いいじゃん!若くて!ラブラブ?」
「まぁ それなりにって感じだな」
ハハハと、照れたように笑った。
「いいじゃん!結婚前にラブラブじゃなきゃ困るよ!!」
「中野の席、ひろの隣りでいいか?」
「えっ!えいちゃんの隣り!?」
言われるまで、全く気が回らなかった。
そりゃ、そうだ。
親友のえいちゃんが田坂の結婚式に呼ばれるのは、あたり前なことなのに。
「変に離れて座るより、いっそ 隣りの方がいいだろ!」
「う〜ん……そうゆうこと?
気〜回さなくてもいいんだけどな」
「この間、招待状持って、ひろん家 行ってきたんだ。
去年、おまえと2人で飲んだ話したよ」
「そう。えいちゃんなんか言ってた?」
「ゆき、元気か?変わってないか?って言ってたな」
「えいちゃんは元気だった?」
「あぁ、あいつ若いよ!変わってねーな!
子供、年中さんだって。
すげー元気な娘さんだったよ。
名前が、美咲ちゃんだって!
偶然、俺の彼女と同じ名前でお互いにビックリしたよ。
奥さん、今2人目妊娠中だってさ。
秋には生まれるって言ってたな。
パパらしくなってたよ」
「そうなんだ〜。
へぇ〜、なんか不思議な感じ。
えいちゃんがパパかぁ」
「おまえだって、立派に2人の子のママだろうが!!」
「そうなんだけどさー」
「それで、言っといたぞ。中野がひろに “ありがとう” って “幸せでいてね” って言ってたって」
「わ!よく覚えてたね!
伝えてくれてありがと。
それだけ伝えてもらえれば、私もう話すこともないんだけどな」
「いい機会だろ。お互いの近況でも話せよ!
久々にゆっくり世間話でもしろよ」
世間話ってワードに笑ってしまった。
「まさか、えいちゃんと世間話できる日がくると思わなかったよ!あはは!
田坂ありがとね」
「いいんだよ。
ひろも、おまえも俺にとっては大事な友達だよ」
「やだ!なんか泣きそう!
田坂の結婚式で私 号泣してたら、変に誤解されちゃうよね!」
「あたりまえだろ!!あはは!
泣くなよ!笑ってろよ!!」
「わかった。じゃ、いろいろ準備も大変だろうけど、頑張ってね」
「おーサンキュ!遠いところ来てもらうのも悪いけど、よろしく頼むわ!」
「うん!じゃね、バイバイ」
「じゃな」
電話を切った。
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