14話 倉田柚希 ⑧
でも、好きな人みつけて、恋愛をする気にはなれなかった。
4年半付き合って、突然にフラレた痛手は、予想以上に大きかった。
どれだけ、えいちゃんのことを考えているだろうか。
なぜ、こうなってしまったんだろう。
あんなにも愛し合ってたはずだったのに……
何がいけなかったんだろう。
どうすればよかったんだろう。
そもそも、愛し合ってたのかな?
私は、答えの出ない自問自答の堂々めぐりをしていた。
何時間も、何日も、時間の感覚が全くない。
何をしていても、心ここにあらずだった。
きっと、私がいけなかったんだ。
えいちゃんが、東京の大学に行くなら、私も行けばよかった。
離れ離れになったなら、毎日、電話やメールをすればよかった。
連絡がとれなくなったら、えいちゃんのお母さんに聞いて、すぐに東京へ会いに行けばよかった。
もう終わってるって言われても、嫌だ!って、絶対に別れないって、泣いてすがればよかった。
私は、そのどれもしなかった。
私がいけなかった……私がダメだった……
そもそも、私は、えいちゃんの彼女には相応しくなかったんだ。
今思えば、バカだった。
あんたみたいにボーっとしてたら、矢沢くんとられちゃうよ!狙ってる子は多いんだからね!って、美紀や恵に忠告されてたのに……
でも、、、私はえいちゃんを信じてた。
いつでも えいちゃんは私を1番に大切にしてくれたし、何人もの告白を断っていた。
ゆきに、代われる人はいないって。
だから、遠距離になったからって、それは何も変わらないって思ってた。
大学の夏休みには長野に帰ってくるし、3ヶ月ちょっとの我慢だって。
会えないのは寂しいけど、電話もできるし、メールもできるしって軽く考えていた。
えいちゃんが私を運命の人だって言ってくれたように、私にとっても、えいちゃんが運命の人なんだって思ってた。
ずっと、ずっと付き合っていけると思ってた。
そんな自信をもっていたことがバカだった。
5月になって、メールの返信がこなかったり、電話しても、出てくれなくなった。それでも、忙しいのかなと思っていた。
携帯が、“現在使われておりません”になって、あれっ?って思ったけど、そのうちえいちゃんの方から連絡くれるだろうって、楽観的だった。
夏休み、いつ帰ってくるのかな?なんて、まだ呑気に考えてて、えいちゃんのお母さんに新しい携帯の番号を教えてもらって電話した。
その瞬間まで、なんの疑いもなく、えいちゃんのこと信じてた。
バカみたいに……
『もう終わってんだよ!!』
って言われて、すべてを理解した。
いや、なにも わからなかった。
『なんで終わりなの?』
『何があったの?』
『私の何がいけなかったの?』
『どうすれば、続けられる?』
何ひとつ聞くことなく、理解してしまった。
えいちゃんが終わってるって言うなら、終わってるんだな……って。
今まで聞いたこともないような、凄く冷たい言い方だった。
私の彼氏だった、彼氏だと思っていた えいちゃん。
えいちゃんにとって私は、いつの間にか彼女ではなく他人になっていた。
今の今までそれに気づかない おめでたい自分が恥ずかしかった……
“終わった……”
それが私が理解した ただ1つの現実だった。
人を信じて心を許すのは もうやめよう。
裏切られた時 つらすぎる……
心に鎧をまとって、表面上だけ にこにこして友達と付き合っていくことにした。
もうこれ以上 傷つくのは嫌だから。
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