11話 倉田亨 ⑥

 「愛してるから」

って、文脈おかしなこと言っちまったな。

それを、突っ込まれて焦った。


愛してるから、今日1人でライブ行ってきたこと許して!ってこと。

別に、ゆきはダメなんて言わなかっただろうけど。

ってか、俺、今夜 眠れねーな!!

明日、朝早いんだけど〜。

これ、今寝ろって、無理だって!!


 oneのライブ!最高だったーーーー!!!!

オープニングのJet motionのジョージのギターリフから、鳥肌だった!!

58歳なんて思えない若々しさで、衰えを感じさせないエレンの歌声。

シャウト。

ロングトーン。

ほんとに凄くて大興奮だった。

最初から最後までRealがサポートバンドで演奏していて、RealのボーカルのRYUSEIがコーラスを入れていた。

そのコーラスが、エレンの歌声を邪魔せずに引き立てるような、良いコーラスだった!


ライブの中盤に、衣装チェンジと休憩を兼ねてだろうけど、oneが抜けて、Realが場を繋いだ。

oneの曲を2曲やった。

往年の大ヒット曲、In the shadowを忠実に完コピで演奏し、エレンの高音にも劣らないボーカルRYUSEIのシャウト。

続けて Get up!get up!get up!をアレンジを変えて演奏していた。

それがまったく嫌な感じじゃなくて、これはこれでいいな!!って感じだった。

全部英語の歌詞を、難無く歌い上げるRYUSEIの歌唱力。

oneの元歌には入っていないピアノの旋律も、アレンジャーとしてのShunのセンスが光っていた。

そして、なんといっても、keigo、須藤桂吾!

こいつはヤバイ!!

華がある!!

スポットライトを浴びたヤツは、マジでかっこよかった!!

ギターのテクニックも凄い!

わざと、ジョージのクセを真似て笑わせてみたり。

それが、馬鹿にしてるわけじゃなくて、リスペクトしてるのが伝わってくる感じでイヤミがない。

エンターティナーだ。

これは、oneのライブだから、ほぼRealのファンはいない。

そんなアウェイな状況なのに、いつの間にか、会場内のみんなの心をつかんでいる。


oneのメンバーが衣装を変えてステージに戻ってきた。

ステージ中央に椅子が5脚並べられ、カフェスペースみたいになった。

oneのメンバーが4人座り、えっ?俺?って頭をかきながら、須藤桂吾がジョージの隣りに座った。


「えっと〜、oneのファンの皆さんは、全編英語の曲でノリノリだから、英語はヒヤリングばっちりですよね!?

皆さん、うんうんって頷いると思うんですが、1名くらいわからない!って人もいるかと思うので、通訳させてもらいます!」


ワーーーーー!!!!って凄い歓声が起こった。

須藤桂吾が、ドラムのデービスに話を振った。

デービスが喋って、その後で

「来日公演は18年ぶりだけど、また来ることができて嬉しいです。

日本のファンのみんな、お待たせして、ごめん!!どうもありがとう!」

と須藤桂吾が言って、

ワーーーーーーと拍手と歓声。


次に、ベースのシュウィンが喋って

「今までこんなライブはしたことなかったから、俺自身、超楽しい!みんなも楽しんでね!!」

と訳して、ワーーーーーーと拍手と歓声。


次に、ボーカルのエレン。

歌声は力強い高い声だけど、話す声はちょっと低めの声でボソボソと話す。マイク入ってる?ってくらい聞き取れない。

エレンが話終わって、須藤桂吾が何かエレンと喋って笑った。

「皆さん、エレンの生声で聞きたかったと思うんですが、歌う時以外はエレンはこんな感じなので、すみません。

にしても小さい声だったなぁ」

と言って笑わせた。


「訳します。

前回日本に来たのは18年前の俺たちの20周年ツアーだったんだけど、その後なかなか日本に来ることができなくて、今回こうして桂吾が俺たちを呼んでくれて嬉しかったです。

楽しい企画を考えてくれて、Realのメンバーもありがとう。

皆さん、今夜は楽しんで下さいね!」

ワーーーーーーと歓声。


やっぱり、須藤桂吾が呼んだんだ。

最後にジョージの番。

ジョージが喋り、須藤桂吾が喋り、ジョージが喋りって、だいぶ2人で会話をして

「すいません!これ楽屋で話せよ!って話。

あはは!あのね!う〜ん、訳せる話じゃないな!これ!!」


聞きたーーーーい!!

いいタイミングで客席から声がとんだ。


「聞きたい?聞きたいですか?」

須藤桂吾は、ジョージの耳元でヒソヒソ話みたいに何か話し、メンバーみんなで笑ってる。


「ほぼエロ話だったけど、じゃ、エロ部分カットでね。

8年前になるけど、桂吾が俺らのファンの前で、10年後は超有名人になっちゃってるから楽しみにしてて!って笑わせてたけど、ほんとに俺らを呼んでくれて嬉しかった!

このライブ、演出をRealにお願いしたけど、20代の彼らの、俺らにはない発想で楽しいステージを考えてくれてほんとにありがとう。

oneのファンはRealも応援してあげてね!

って、俺が話 盛ってるみたいになっちゃってるけど〜!」

どっと笑いが起きる。


「ちょっと、皆さん不思議に思ってると思うので、今更の説明になっちゃうんですが、8年前、21の頃に俺、ロンドンにいまして、ジョージのアパートメントに住まわせてもらってました。

半年くらいかな。

oneの演奏を学ばせてもらいまして、oneのメンバーには本当にお世話になりました。

いつか日本でデビューしたら、oneを呼ぶから!って約束したんですよ。

ほんとは、おまえが来いって言われてましたけど。

Realがデビューしてもうすぐ4年になるんですが、oneのスケジュールは5年先まで決まってるので、かなり無理言ってお願いして、今日のワンナイトライブを入れてもらいました。

本当に、なかなか日本でみることができない貴重なライブです。

俺らみたいなかけだしが、一緒のステージに立たせてもらうのは、大変おこがましいですが、oneの足を引っ張らないように、全力でサポートさせていただきたいと思います!

メンバーもだいぶ休憩できたと思うので、そろそろ、こっから後半戦!皆さん盛り上がっていきましょう!!

よろしくお願いしまーーす!!!!」

と叫んで、ワーーーーーー!!と歓声が起こった。

そのタイミングでデービスがカウントとって曲が始まった。

そこから、後半怒涛の10曲。

アンコールで2曲。


oneを堪能した2時間半だった。

これ、3万円は高くないわ!!

こんな盛り上がったライブは初めて。

DVDでしか観たことなかったけど、いつものoneのライブとは大分 演出が違っていた。

公演の全体的な演出構成をRealのDaikiが、舞台装置や企画監修をU-yaがしたということだった。

いつも通りの骨太のロックを聴かせながらも、温かみのあるいいステージだった。


ここに集まったoneのファンは、oneを堪能してそしてRealのファンになったに違いない。

俺もその1人。

須藤桂吾に心をつかまれた。

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