10話 倉田柚希 ⑤
家に帰ってきたのは、午前0時のちょっと前だった。
部屋を覗いてみると、お母さんの隣りで、峻が寝ていた。
良かった。
2階にあがり、とおるに電話した。
「今、帰ってきた。遅くなっちゃった」
「おかえり。楽しかった?」
「うん、2次会のカラオケまで行ってきちゃったよ」
「そう!珍しいね!ストレス発散できた?」
「うん!結構大勢来ててね。楽しかったよ」
「良かったね。峻は?」
「寝てる。ばあばが寝かしてくれたみたい。よく寝てるよ」
「そっか。峻 生まれてから初めてだもんな!
ゆきが出かけんの。
ママにべったりだから、ばあちゃんも大変だったんじゃないか?」
「どうだろうね。もう寝てるから明日聞いてみるよ」
「今度、俺からもばあちゃんにお礼言うわ」
「うん、ありがと」
「飲まなかったの?酔ってる感じないね」
「あっ、飲んだけど、2次会はジュースだったし、もうだいぶ冷めた感じ」
「ゆきは酒抜けんのも早いんだよな。
あっ、俺そろそろ寝るわ!明日 朝早いんだ」
「あっ、そうなの?ごめんね!朝 起こす?」
「ううん、いいよ。大丈夫!じゃ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
「あ!ゆき!愛してるから!」
「えっ?あはは!愛してるじゃなくて、愛してるからって、なに?」
「いや……なんだろな?変だな!あはは。
愛してるよ、ゆき」
「うん、わたしも。とおる、おやすみ」
「おやすみ」
なんか、変なの?
とおる、えいちゃんのこと何も聞かなかったな。
同級会で会って、話をしたのかなんて もう気にしてないのかな。
妹の加寿の部屋へ行った。
「ただいま」
「おかえり。遅かったね」
「うん、カラオケ行ってきたよ」
「へぇ〜珍しいね!楽しかった?」
「うん、大勢集まってさ、喋りまくってきたよ」
「あはははは!良かったね。
普段お喋りの相手 峻しかいないもんね!
泣いてるだけの人!あはは!」
「あっ!峻!どうだった?」
「ぜ〜んぜん、泣かなかったよ」
「えっ?ほんとに?」
「離乳食食べて、ミルク飲んで、すぐに寝ちゃった」
「へぇ〜!」
「たぶん、ママに甘えてんだね!
男の子ってそうなのかな〜って、うちは女の子しかいなかったからわかんないけどってお母さんも言ってたよ」
「甘えてるにしては、だいぶ嫌がらせ的だけどな。あはは」
「独占欲?ママは俺のもの的な?あはははは!
怖いね。とおるさんヤキモチ妬いてない?
峻に、ねーちゃんとられてさ!」
「ヤキモチはやかないけど、とおるの面倒はみれてないな。何でも自分でできちゃう人だしね。
いろいろやってくれるよ」
「いいダンナさん!とおるさんの弟紹介してもらおうかな!あはははは」
「ねー、加寿!Realって知ってる?」
「えっ?ってゆうか!知らないの?逆に!?」
加寿は、スマホをいじる手をとめて、私を見上げた。
「うん、知らなかった。長野の人たちなんだって?」
「は〜〜〜〜!!そこからか!!
スマホでRealって検索してみ!
いっぱい出てくるよ!
確か、ねーちゃんと同い年なんじゃない?
私立の長野稜北高校だよ全員!
あの、頭いい高校!!
見た目あんま頭良さそうには見えないけど。
マジでかっこいいし、歌 最高だから、聴いてみなよ!!」
そう言うと、山積みになっているCDの真ん中辺りから、1枚器用に取り出して、私に渡した。
ラブシックネスって読むのかな。
「これに、Yoinって入ってる?」
「入ってるよ!1枚目のアルバムだからね、それ!
Yoinはデビュー曲だから」
デビュー曲なんだ?
あのバラード曲が?
「ありがと!聴いてみる」
「あっ!これと、これも!はい!!
いっぱい特集載ってるから」
そう言って本棚から、雑誌を2冊取り出して手渡してくれた。
「ありがと」
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