7話 倉田柚希 ②

 12月

実家に帰省した。


同級会は、18日だけど、峻を落ち着かせる為に早めに帰りなよって、15日に帰ることにした。

峻を連れて新幹線に乗るの初めて。

峻も、9ヶ月になって、それほど大泣きすることは少なくなった。

だけど、新幹線の指定席で静かに座っていられる自信なかったから、自由席を買って、出入口ドア辺りで立っていた。


前回、4年前の同級会は、とおると付き合い始めたばっかりの時だったな。

それって、矢沢先輩も来るってこと?出来れば行かせたくはないけど。って言っていた。

そんなとおるも、今回はやけに、行って来なよ!って、是非!行って来なよ!みたいな感じだったな。

えいちゃんのことも何も言わなかったし。

結婚した男の余裕みたいなもんなのかな?

会ったとしても何もないって、私を信頼してくれてるのかな?

まぁ、自信を持って、なんもないよ!!

だって、話してもらえないくらい嫌われてるからね!

私も、別にえいちゃん目当てで、同級会に出るわけじゃない。

久しぶりにいろんな人と会って話したいだけ。

だって私、今横浜で誰とも話してないもん。

とおるだけ。

あと、ひとりごと。

なんか、すごくお喋りしたいんだよな!!

えいちゃん、確か私と同じ頃に結婚したんだよな。

子供も同じくらいの子がいるのかな?

って、根掘り葉掘りオバさんみたいに聞きたくなるけど、もう私から話しかけるのだけは止めとこう!前回の反省をいかして。


峻は、新幹線の揺れがちょうど良かったみたいで、一回も泣くことなく、スヤスヤと眠っていた。

良かった〜。

実家に帰る為には、長野で新幹線を降りて、在来線に乗り換えて5駅くらいだけど、今日は父が長野駅まで車で迎えに来てくれた。



 同級会当日

 

 横浜に比べて、長野の冬はやっぱり寒いな。

こっちにいた時は、これが当たり前だったから、寒いのにも慣れていたけど、一旦離れると寒さが身に染みるな〜。


会場のホテルの広間に行くと、懐かしい顔が一斉に目に飛び込んできた。


「わー!中野!久しぶり!!」

「なに?南極でも行くの?すごい着すぎじゃない?」

入り口付近で、宮田とかおりちゃんに声をかけられた。

「久しぶり!!まじ寒いんだけど」

「都会暮らしでなまってんだよ!!あはははは!」

「あはははは!そうかも!どこ座ればいいのかな?」

「中野〜〜!!こっちこっち!!」

って、立花が手招きしていた。

「立花もう来てたんだー!」

「うん、さっき着いたとこ。座るのどこでもいいって言われたけど、どうしよっかな〜って、中野来るの待ってたよ!」

「入り口の辺 寒いから、奥に行かない?」

「何?そんな寒いの?」

「うん!すごい寒くて寒くて、見て!コート脱いでも、ジャ~ン!下にまだこんなセーター着てんの!!」

「やっだ〜!!あはは!着すぎ!こんな着てる人初めて見た!」

「あはは!1枚ずつ脱いでくよ!」


同級生はいいな。

何年も会ってなくても、一瞬で昔に戻れる。

楽しいな。


妊娠がわかってから、お酒を飲むのをやめた。

もともと、私は飲み会とか外で飲む以外、家飲みはほとんどしなかったから、結婚して引っ越して、知り合いもいないし、とおると外食した時にビールを1杯飲むくらいだった。

だから、断酒するぞ!!なんて意気込みもなく、ただやめていただけだけど。

峻を産んでからも、授乳してたから、そのままお酒を飲むことはなかった。

峻も9ヶ月になって、離乳食を食べて、哺乳瓶でミルクを飲むことも多くなって、私の母乳で生きている!というよりは、ただの安心感?でおっぱいをしゃぶっているという感じになっていた。

おっぱいをくわえながら、ウトウトと眠りにおちていく。

今日、初めてじじばばに峻をあずけて飲み会に来た。

羽目を外すほど飲む気はないけど、今日は1年半ぶりにちょっと飲むぞ!って、だいぶ楽しみだった。


同級会が始まったけど、えいちゃんの姿はなかった。

がっかりしたような、ホッとしたような、そんな気持ちだった。


「よっ!立花、中野!久しぶり!!」

田坂がお酌しにきてくれた。


「えーーっ!!田坂〜!太ったね〜〜!!」

「あはははは!ほんと〜〜!!」

「笑うなよ!俺も気にしてんだからさ!!」

そう言って頭をかいた。

「なんで〜?あはははは!着ぐるみ着てるみたいじゃん!!」

キツっ!!立花、それは結構キツイな!

「おい!!立花!おまえ そんなこと言うようなキャラじゃなかったろ!!オバサンになると言うことキツくなるなー!!」

田坂!それもキツイな!

「えー!オバサンって何よ!!」

「もうすぐ30だろ!結婚して子供うんでりゃオバサンだろうが!」

「あ〜〜〜あ、女子を敵にまわすようなこと言わない方がいいよ〜!!」

と、私が言うとギクっとした顔をした。

「あっ、まぁ、そうだな!こえ〜からな!女子!立花ごめん!中野も結婚したんだっけ?」

立花のグラスにビールを注ぎながら、私に聞いた。

「あぁ、うん!もう2年半になるよ!子供も9ヶ月になったとこ」

「そっか、おめでとうな!」

そう言うとお酌してくれた。

「ありがとね」

「もしかして、前の同級会の時に話してた後輩か?」

「あっ、そう!!よく覚えてたね!その後輩と結婚したの。いい旦那さんだよ」

「そっか!良かったな。まぁ飲めよ!!」

「あっ、田坂、修行行ってきたんだよね?」

「おう!行ってきたよ」

「それで?彼女待っててくれたの?」 

ずっと気になっていたことだ。

「あ?あ〜!あはは!おまえらが言った通りだったよ。ダメだった」

「そうだったの。ごめんね!田坂!!」

「なに謝ってんだよ?」

「大丈夫だよ!!って言ってあげられなくて。ごめん!!」

深々と頭を下げた。

「ばーか!!おまえに大丈夫だって言われたとしても、どっちにしろ無理なもんは無理で変わりねーだろー!!無意味に謝ってんなよ!」

「そうだけど……でも……」

「飲みが甘いぞ!!ほれ!もっと飲めよ!!」

あははと笑った。


田坂……彼女待っててくれなかったのか……

かわいそうに……




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