8話 倉田柚希 ③
1次会がお開きになり、2次会は近くのカラオケボックスということで、立花と行くことにした。
2次会は20人くらいいた。
パーティルームでもきつい感じだった。
奥へ詰めろ詰めろって言われて立花と離され、私の隣りに町山君が座った。
詰めろって言われたけど、肩あたるくらい。
こんな密着?
「中野、今 神奈川に住んでるんだって?」
そう言われて横を向いた。
顔 近っ!!思わず、少しのけ反った。
「あっ、そう。横浜」
「横浜のどこ?俺も横浜にいるんだ」
「えーーっ!そうなの?私、都筑区。町山君は?」
「俺、緑区。都筑だと、あの観覧車ある あの辺?」
「そう!!あはは!すぐそばだよ!!知ってる人に初めて会ったよ!なんか、嬉しいな」
「中野が結婚してなかったら、即 飯でも誘うとこだけど、ダメかな?」
そう言いながら、私の太ももに手をおいた。
おーっと!!これは、なんか誘われてんのか?
町山君だいぶ酔ってるからな〜。
「あっ、そうかな。子供も小さいしね。ちょっとムリかな。町山君は、独身なの?」
そう言いながら、やんわり手をどけた。
「ってゆうか、彼女もいねーよ!!誰か紹介してくれよ!!」
「うーん、向こうにいても、知り合いって、ママ友くらいしかいないからなぁ。
紹介できるような人はいないかなぁ」
「そうだよなぁ。人は、いっぱいいるけどさー!出会いってないんだよな〜!寂しいよ〜」
そう言って、私の肩に頭をのせた。
う〜〜〜〜ん
これは〜〜〜〜
やめてよ!!って突き飛ばしちゃっていいのか〜?
エロいことされてるわけじゃないけど……
甘えたいだけかな……
困った……
「町山!!悪い!ちょっと中野 借りてもいいか?」
田坂がちょっと怖い顔して立っていた。
「お、おぉ」
「なに?」
立とうと思ったけど、ソファと町山君にギュッとはさまれてて抜け出せなかった。
田坂が手を差し出してくれて、その手をつかんで立ち上がり、田坂のうしろについてカラオケルームを出た。
ホッとした。
「突き飛ばせんだろ?」
前を向いて歩きながら田坂が言った。
「えっ?」
「ってか、おじゃまだったかな?」
うしろを振り向いて笑った。
「なに?助けてくれたの?」
「中野に話があったのは本当。
あとでも良かったんだけど、見てたらだいぶ町山がヤバかったから。あはは」
「ありがとう。困ってた」
田坂、助けてくれたんだ!!
通路の奥のベンチに田坂が腰をおろした。
私も田坂の横に座った。
「おまえに話そうか、やめようかって迷ったけど、変に噂で聞くよりいいかと思って、言うことにしたわ……」
「ん?なに?」
「ひろ……離婚したんだ……」
「えっ?離婚?」
「……」
「いつ?」
「1ヶ月前くらいかな。正式には」
「なんで?」
「理由は、いろいろだろ。よくは知らないけど……」
「……そうなんだ……」
「おまえに話したのは、ひろのこと心配してやれってんじゃないから!
その逆!気にすんな!って言いたくてさ」
「えっ?」
「もうおまえには関係ないから、首突っ込むな!ってこと」
「なにそれ?」
「おまえは、ダンナと子供と、今の幸せを大事にしてろよ!」
「……」
「俺が言いたいのは、それだけ」
そう言って立ち上がった。
振り返って、
「あと、あの席には戻んなよ!続きしたいなら止めないけどさ。あはは!」
と笑った。
「うん。わかった……」
私の今の返事は、ダンナと子供と、今の幸せを大事にしてろよ!に対しての返事。
えいちゃん、まだ2年半なのに?
離婚って、なんで?
そんなこと考えても、私にわかるはずがない。
えいちゃんに会ったのは、4年前の同級会の時が最後。
あの時も話はできなかったし。
だから、えいちゃんが大学を卒業して、長野に帰ってきていて、地元で就職していたことも知らなかった。
それを知ったのは、私の結婚が決まって、招待状を棚部のうちに持って行った時。
棚部の部屋で話してて、あれっ!そう言えば、えいちゃんも確か6月だって!と突然言った。
下の部屋から戻ってくると、招待状を私に手渡した。
それは、えいちゃんの結婚式の招待状だった。
私の結婚式の1週間前だった。
棚部のうちは、えいちゃんちのすぐ近所。
お母さん同士が仲良くて、棚部のお母さんが結婚式に呼ばれたのだと。
「今、来る時、こっちの通りから来た?
えいちゃんち新居建ててるよ!」
その道はあえて通らず裏から来たから、見ていない。
ほら!って、窓から外を指さした。
あ、ほんとだ。
えいちゃんちのすぐ横の畑があった場所に、今どきの白いかわいいお家が建っていた。
こっちに帰ってきて、住宅メーカーに就職したって聞いたよ。
近所だけど、時間帯合わないのか、1回も会ったことないんだけどさ。
結婚するなら、自分ち会社でお家建てなきゃダメとかのノルマあんのかね!って、そんな話をした。
まだ、新しいあのお家に、えいちゃん1人でいるのかな。
今日も来なかったし。
元気なのかな……
大丈夫かな……
えいちゃんに、会いたい!!
『首突っ込むなってこと!』
さっきの田坂の言葉が頭をよぎった。
気にすんな!首突っ込むな!って、冷たい言い方だけど、親友だからこそ言えることなんだろう。
えいちゃんに会いたいって、私が、そんな気持ちになることを察して、釘を刺してくれたんだろうな……
さすが寺の息子!! 関係ないか……
離婚したばかりの元カレに会ったりしても、お互いによくないよな……
はぁ……
「あれー!?中野?どうした?」
大きな声でさとみが声をかけてきた。
「あ、さとみか。ちょっと休んでた」
「飲みすぎた?大丈夫?」
「うん、もう大丈夫!そろそろ戻ろうと思ってたところ」
「じゃ、一緒に行こ!」
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