30話 中野柚希 ⑭
年が明けて、とおるの両親に紹介され、会食をした。
3歳下の妹さん、5歳下の弟さんも集まっての会食だった。
とおるが、3人兄弟の長男だってことは知っていたけど、こうしてみると、なるほど長男らしいな!と思った。
年下だけど、しっかりしていると感じるのは、そうゆうところだったのかと思った。
和やかな会食だったけど、ちょっと空気が変わったのは、話題が剣道の話になった時。
お父さんが妹さんのことを、この子はダメで、高校の途中で剣道部をやめたというようなことを言い出した。
そんなことを、こんな席で、他人の前で言われたくはないだろうなと思った。
妹さんは、下を向いていた。
やっぱり、女の子はダメだなというようなことを言い、私に高校の時の戦績を聞いてきた。
1回戦負けでした。と答えた。
ただやってただけだったかなと言われ、はいと答えた。
妹さんは、顔をあげて私を見た。
剣道を続けられる人にはわからない、剣道をやめた人にしかわからない思いってゆうのが、あるんじゃないかなと思った。
私も、もう剣道は やめちゃった人だよ。
妹さんに寄り添えたような気がした。
だけど、とおるには申し訳なかったなと思った。
せっかくの席なのに、自慢できるような彼女じゃなくて……
帰りの車でも、とおるは怒っていた。
そして、泣いた。
本当に、申し訳ないなと思った。
1月の会食で、私はとおるの結婚相手として不適格と判断されただろうと思っていた。
それが、そんなことは全くなく、とおるのご両親は、私のことをすごく気に入ってくれたということだった。
3月に、とおるとご両親が、うちへ挨拶にきてくれた。
その時に、これからの日程的な話になり、5月に結納をかわす事になった。
秋頃に結婚式を挙げたらどうだと言われた。
今からなら、十分に準備も間に合うと言われた。
が、とおるが来年の6月がいいと譲らなかった。
それだと、私の誕生日前で2人とも26歳だということと、ジューンブライドになるからいいと言った。
結婚に向けて、2人だけのことではなく、家と家とのことで、めんどうなことも多かったけど、順調に進んだ。
5月
あっ、とおるから電話だ。
「ゆき、来週 結納だね」
「うん、ドキドキするね!」
「結納って、正式に結婚の約束を交わすことだよね。
結納したら、婚約者になるわけだけど、ゆきは本当にそれでいいの?」
「本当にそれでいいの?って、どうゆう意味?」
「去年、付き合い始めたばっかりの頃に、軽井沢の教会で聞いたよね?
いつか、俺と結婚してくれる?って。
いつか、返事を聞かせて欲しいって言ったんだけど、まだその返事もらってないんだけどな」
とおるは、静かにそう言った。
えっ!!!!
驚いた!
確かに、軽井沢の返事だけど!って言うようなことは言ってはいない。
でも、もうこうやって話がすすんでるんだし、暗黙の了解みたいになっていた。
「えっ!なんで今?私も結婚したいって思ってるよ!」
「それって、誰かとじゃなくて……俺でいいの?」
「当たり前じゃん!!なに言ってんの?とおるのこと、本当にすごい大好きなんだから!!」
「ごめん。あはは。
なんかちょっと、俺、自分に自信もてなかったから。
改めて言わせてもらうよ!俺と結婚して下さい!!」
「はい!お願いします!ずっと、ずっと一緒だよ!2人で幸せな家庭をつくろうね!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1年後
6月18日大安
梅雨の時期だから仕方ないけど、夜中にすごく大雨が降っていて、朝になってもまだ降り続いていた。
あ〜あ〜!雨か〜!雨は嫌だな〜!
でも、これ絶対に、《雨降って地固まる》って、あのフレーズを言ってもらえるね!
しょうがないな〜!良いように考えよ!!
荷物を持って、家を出ようと玄関のドアを開けると、眩しい光に思わず目を閉じた。
いつの間にか、雨はやんでいて、優しい光に照らされて、濡れた道路はキラキラと眩しく輝いていた。
ありがとうございます!そう思った。
車でとおるの家まで行き、2人で式場へ行った。
家族たちは後から来る。
白無垢の着物に着付けてもらい、出来上がったところへ とおるが見に来た。
「ゆき、すごく綺麗だね。着物やっぱり似合うなぁ!!」
と、にこにこしながら言ってくれた。
「とおるも、羽織はかま かっこいいよ!!」
本当に似合っている。
「俺、ちょっと緊張してて ヤバい!!ゆきは?」
「私、そうでもないかな〜。なんか、嬉しい!
やっと結婚式だな〜って!」
「やっぱ、ゆきの方が肝すわってんだよな!」
あははと笑った。
「そんなことないけどさ!よろしくお願いします!」
「あっ!はい!!こちらこそ、よろしくお願いします!!」
あはははは!!
2人で笑った。
第3章 終
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます