27話 中野柚希 ⑬

 ホテル出るの遅くなっちゃったから、ヤバいと思ったけど、6時50分に着いた。

良かった!間に合って!

あれで、また始めちゃったら無理だったな、やっぱ。

とおる、デッカクなっちゃってたけど……

シラフで見たら、サイズ感、わりと大きかった。


7時半に2階の朝食会場だから、少しまだ余裕がある。

とりあえず、服 着替えたり、身支度しよ。


あー!あ〜あ。

あはは!キスマークいっぱい!

タートル持ってきて良かった。

それにしても、とおる、激しかったな。

いつもは、もっと落ち着いたセックスできるって、そんな言葉初めて聞くよ!

落ち着いたセックスってなんだろ。

おっかしい。

私も普通じゃ恥ずかしくて出来ないようなこと、お酒の力を借りてやっちゃったな。

すごく気持ち良かった!

今までの誰よりも良かった!

テクニックや経験、大きさとか、いろんな要素があるだろうけど、私のことを本気に、一番に愛してくれてるのが伝わってきた。

セックスの最中に、あんなにも大好きだ!愛してる!なんて言われたことない。

あんな、何度もイッちゃって、どうなっちゃうんだろうって思ったけど、最後力尽きて寝ちゃうなんて、それも初めて……

結婚って、セックスの相性も重要だってゆうけど、その面ではクリアだな。


とおるはどう思っただろう。

女の私の方から、“抱いて” なんて言って……

H好きの淫乱女みたいだったかな……


トントン

ドアをノックする音が聞こえた。

時計を見ると、7時15分。

後輩の谷川さん、まだちょっと早いんじゃない?

そう思いながらドアを開けると、そこにいたのは長井さんだった。


「えっ、なんですか?」

グイっとドアを開けると、強引に中に入ってドアを閉めた。


「誰かに見られたらマズいからさ。

朝帰りだった?」

綺麗なままのベッドを見ながら、そう言って座った。


「いえ、そんなことないですけど」

じっと目を見られて、思わず目をそらした。


「昨日、外へ飲みに行く時、中野さんは彼氏と、待ち合わせです。

って谷川が言ってたけどな」


「あの、前も言いましたけど、長井さんに関係ないじゃないですか!」


フッと笑うと、私の手をつかんだ。


「去年の韓国、一晩中俺の部屋にいたよな。

その前の伊勢志摩も、他の人の目を盗んでHしたろ。

超ドキドキしたじゃん!」


「長井さん!もうやめて下さい!

私 今 彼氏いるんですから!!」


「去年もいたじゃん!別の彼氏。

でも、俺と続けてただろ。

離れられないくせに」


「去年と今とで決定的に違うのは、長井さん結婚したじゃないですか!

私、いくらなんでも奥さんいる人とはムリですから!」

 

「そんなの関係ねーだろ!!」

ギッと睨みながら立ち上がった。


「奥さんって言ったって、ずーっと昔から付き合ってる彼女だよ!

彼女と付き合ってる時には、俺と普通にセックスしてて、奥さんになったらしないって、結局うしろめたいことしてたんだぜ!

結婚した人とは不倫になるからイヤだって?

今更、きれい事言ってんなよ!!」


「どうして結婚したんですか?」


「あっ?まぁ、いろいろだけどな。

ついに、責任とらなきゃなんね〜ことになったってのかな。

結婚してやりゃ丸く収まる感じただったからな」

フッと笑った。


「私、初めて長井さんとこうなったの、21の時でした。

まだまだ子供で、5歳年上の長井さんをすごい大人の男性だと思ってました。

最初から、彼女がいるのは言われてたけど、優しくされて、どんどん好きになってしまって、いつか彼女と別れて、私と本気で付き合ってくれるんじゃないか、なんて思ったりもしてました。

でも、今は はっきりとわかります。

長井さんにとっては、ずっとただの遊びだったんだって。

社内恋愛ゲームみたいなもので、私はただ単にゲームの駒だった。

その駒が、他の男に盗られそうになってるから、焦って取り戻そうとしてるだけで、本当に私を愛してるわけじゃないじゃないですか!

私ももう25になりました。

いつまでも長井さんのゲームの相手をしているわけにもいきませんから!」

と、強く言った。

「ゆきちゃーん、言ってくれるね〜!

そんなにも、あの年下の彼にホレちゃったわけ?遠距離してんだから、他に女いるかもしんねーじゃん!

会った時だけ、いい顔してりゃいいんだからさ。

わかんねーだろ!?」

 

「とおるは、長井さんと全然違いますから!

私のことだけ愛してくれてます!

だから、私も、とおるの愛に応えたい」

キッパリと言った。


「ふーーん。じゃ、最後か」

そう言うと、長井さんは私をグィっと引き寄せ、抱きしめた。


いいニオイ。

いつも長井さんは、こんないいニオイだ。

嫌なことばかりじゃなかったな。


トントン


「中野さーん!そろそろ行きますけど」

谷川さんの声だった。

「あっ、谷川さん!先に行ってて!

ちょっと遅れる!場所とっといてー!」

大きな声で言った。

「はーい!了解でーす!」


歩いて行く足音が静かになるまで、長井さんは私を抱きしめていた。

「でけー声!!」

笑いながら手をほどくと

「キスしていい?」

と聞いた。

「ダメです!!」

「だよな。じゃ、行くわ!」

にこっと笑うと、部屋から出て行った。

1人 部屋に残って、私はベッドに腰をおろした。

これで、終わったのかな……ほんとに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る