24話 倉田亨 ⑩
改札を出て、ゆきを探したけど、見当たらなかった。
あれ、俺の方が早かったか?
電話してみた。
「着いたけど、どこにいる?」
「改札出た右側の方」
そっちか。
「わかった」
電話を切って、そちらに行くとゆきは逆の方を、キョロキョロと見ていた。
「みつけた!!」
そう言って、後ろから抱きしめた。
「わぁっ!びっくりした!
ちょっと、人違いだったら捕まるよ〜!」
真っ赤な顔してる。
「あはは!間違えないよ。
ってゆうか、ゆき、すっごい酒くさい!」
笑いながら言った。
「え〜〜〜!酒くさいって、酔っぱらいのおじさんみたいじゃん!
最後に飲んだ紹興酒が臭いのかな〜!」
手を口に当てて言った。
可愛い。
「とりあえず、観覧車乗ろうよ!夜景キレイだから」
と言って歩き始めた。
手を繋ごうかと思ったら、ゆきの方から腕をからませて体を密着させてきた。
マジか!胸当たってるんだけど。
だいぶ飲んでんな〜。
観覧車はすいていて、すぐに乗ることができた。
乗ったと思ったら、すぐにゆきは俺にキスしてきた。
で、俺の肩にもたれかかった。
「とおる、会いたかった」
おいおいマジか!
やべーって、こんな密室で!
押し倒したくなんじゃん!!
「ゆき、結構飲んでる?酔っぱらうと、こうなっちゃうの?
男としては嬉しいけど、彼氏としては心配な感じだけど」
マジで!
「こうなっちゃうって?どうなっちゃってるの?私ね、お酒飲むとすぐに顔 真っ赤になっちゃうの!
で、みんな大丈夫?って心配するんだけど、全然平気!記憶なくしたこととか1度もないし!」
「じゃなくて、ネコちゃんみたいになってるよ!ニャ〜〜ンってね」
「そっ?私 普段、結構しっかり者のフリしちゃってて、なかなか人に甘えられないのよね〜。
お酒飲むと、少し力抜いてもいいのかなーって思っちゃうだけ。ダメ?」
しっかり者のフリかよ?
「だめじゃないけど、他の男にはこうならないでよ!」
「ならないよー!!彼氏だけだよ。あはは」
前の男ともこうだったの?とか聞きたくなったけど、やめておいた。
「わ〜ほんとキレイ!やっぱ全然違うね!
夜景すっごくキレイ!嬉しい!あはは!」
やけにキャッキャしてるな。
普段見たことないゆきを見れた気がするな。
酒飲むとだいぶ人格変わるな〜。
「俺まだメシ食ってなくて、食べるの付き合ってもらっていい?」
「うん、いいよ」
「じゃ、ちょこっと歩くけど、行きたい店があるんだ」
腕を組んで歩いた。
だから!胸当たってるって!
店に着いて、俺はビール、ゆきはファジーネーブルをオーダーした。
それで、俺の夕飯のリゾット、つまみにポテトとスティックサラダを頼んだ。
「前に付き合ってた子と何回か来たことあってね。
美味しい店なんだけど、別れてからは1度も来てなくてさ。
こうゆうお店って男1人で入りずらいし、まして男同士でも行けないからさー。
久しぶりだなぁ」
そう言いながら店内を見渡すと、やっぱりカップルか女性グループといった感じだった。
「なーんか、感じ悪い!前の彼女とデートした思い出の店に連れてくるなんて!
前の彼女を思い出してるわけー?」
えっ!?珍しい!!
「ゆき、珍しくやきもち妬いてんの?
俺が未練があったのは、前の彼女じゃなくて、この店のリゾットだけだよ!ははは」
「ふーん、そっ!すみません!カシスオレンジお願いします!」
そう言うと、ファジーネーブルを飲み干した。
久しぶりのここのリゾットは、やっぱり美味しかった。
ゆきにもあげると、おいしい!と笑った。
それにしても、ゆきの飲むペースは早いなぁ。
いつもより、饒舌で、すごくよく喋る。
そして、飲む。
こんなにもお酒強いんだなぁ。
意外だな。
「ゆき、飲みすぎじゃない?もう、4杯目だけど、大丈夫?ここ来る前も飲んでるんでしょ?」
ちょっと心配になってきた。
「うん!中華街でね!ビール飲んできた!
あと、臭い紹興酒ね!あはは!
私ね、結構飲める方なの。
うん、でも、たしかに、ちょっと飲みすぎたかも。あはははは」
「そろそろ店 出よっか」
「うん」
外に出ると、夜風がちょっと寒かった。
11月だもんな。
時計を見ると、10時45分だった。
「ゆき、何時にホテル戻ればいいの?」
ゆきは、立ち止まり下を向いた。
「……明日の、朝までに……」
「えっ?」
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