17話 倉田亨 ⑦

 今日の勤務は18時まで、帰りがけに飯食って、19時にはもう寮に着いてしまった。


今夜は、ゆきの同級会。

気になってしょうがない。


なんなら、遅番か、夜勤だったら良かったのにな……

ベッドに横になり、いろいろと想像してしまう。


「ゆき、久しぶり!6年前のことだけど、ゆきと別れたことずっと後悔してるんだ。

もしも、許してもらえるなら、もう1度やり直してくれないか?」

「本当に?えいちゃんのこと、ずっと忘れられなかったの。今度は、もう離さないで!」

「あぁ、ゆき 今夜は抱いてもいい?」

「嬉しい!ずっと、一緒にいたい」


あーーーーー!!!!!!

ダメだ〜〜〜〜〜!!!!

耐えられない………………

電話してみるか!同級会どう?って。

矢沢先輩が来てるのかどうかだけでも!!

いやいやいや!!

そんな監視されてるみたいなの嫌だろ!!

ってゆうか、7時からって言ってたよな。

まだ、始まったばっかり。

駄目だ!!

とりあえず、風呂入りに行こう。


風呂に入り、部屋に戻って時計を見る。

嘘だろ!!まだ、7時25分。

時間の流れ、いつもより遅くねーか!!

あーーーーーー!!!!!!

酒飲みてーーーーー!!!!

酒飲んで、酔っぱらって、もう眠ってしまいたい。

それも、ダメだよな……呼び出しあるかもしれねーもんな……


「ゆき、キレイだよ。隠さないで、見せて」

「やだ。恥ずかしいよ。電気消して!」

「いや、明るいところで、ゆきの全部を見たい。今までの6年を埋めたいんだ。

感じるところ教えて!」

「あ!ダメ、そこ!イイ!えいちゃん、大好きよ!ずっと、こうしてほしかった!えいちゃんに抱いてほしかった!」

「あぁ!ゆきの中、すごく気持ちいい!」

「あぁ!あん!あ……えいちゃん……」


変態かよ……

どこまでも、妄想がひどいな……


再会して、今 矢沢先輩がフリーなら、きっとゆきを口説くだろう。

矢沢先輩に口説かれたら、ゆきは、彼氏いるから!って、断ってくれるだろうか。

俺という存在はストッパーになるのだろうか……

ダメだ!!腕立て、腹筋、背筋やろう。



ブーブブー

メール?あっ、ゆきからだ!!!!


『同級会から帰ってきたよ。

久しぶりに大勢集まって、楽しい同級会でした。えいちゃん来てたけど、話さなかったよ。

安心して!』


えっ?もう、帰ってきたのか?まだ9時半だぞ!はえーなー!

起き上がり、電話をかけた。


「ゆき!」

「もしもし?とおる?今、メールしたけど、見た?」

「うん、見たからかけたんだけど、本当にもう帰ってきたの?」

「うん、2次会は行かなかったから。

友達のダンナさんお迎えきてくれて、一緒に乗せてもらって家まで送ってもらっちゃったから」

「本当に家なの?」

雑音もなく、周りは静かだ。

「家だよ。自分の部屋。あ!!な〜に〜?

疑ってんの〜?

家に帰ってきたよ!なんてメールしといて浮気してるんじゃないかって〜〜?

ひど〜〜い!信用ないな〜!!」

大きな声で言った。

「いや、そんなんじゃないよ!ただ早いな!って思っただけ!!矢沢先輩どうだった?」

「どうって……相変わらずって感じ!

相変わらず、かっこよかったよ!!」

「話さなかったの?」

「話さないよ。だって、なにを話すの?

彼女さん元気?うまくいってる〜?って聞くの?そんなこと、もうどうでもいいし」

「そうだけど」

「ってゆうか、私、本当にあの人と付き合ってたのかな〜?

虚言か妄想なんじゃないかって思ったりして!!あはは!

だって、あんなイケメン!私じゃ釣り合わないって!

そもそもだよ!そもそも!」

すげー早口。

「ゆき?大丈夫?」

「あ!!とおる、田坂おぼえてる?

佐古の大将だった、田坂」


たさか?

田坂!!

「優勝した人?」

「あっ!そうそう!優勝したね〜!!」

「えっ?同級生だったの?」

「そう!」


マジか!!

「中学の剣道部で一緒だったって聞いた覚えはあるけど、クラスも一緒だったんだ!!

練習試合で来た時に、やけに仲良さそうに喋ってんなーって、カチンときたんだよな!!」

マジで!


「あはははは!仲良さそう?

そんなことないけどさ〜。

今日、田坂にとおると付き合い始めたって話ししたの!

田坂も、とおるのこと覚えてたよ!

2年でレギュラーだった、中堅のやつ?って!!あはははは!

先輩に告白するって、なかなか出来ることじゃない!って。

それなりの覚悟で来てるはずだから、本気だろ!!ってさ!!

田坂、寺の息子だからさー、結構いいこと言ってくれるんだよね〜〜!

ありがたいお言葉ってゆうの!!あははは!!」


なに?そのテンション!!

あははじゃねーよ!

その人に言われなくても、俺の本気をわかってくれよ。


「ゆき、だいぶ酔ってる?」

「え〜わかる〜?結構 飲んだよ〜!!

ひっさびさに酔っぱらった〜!!

2次会行かないつもりで、1次会でとばして飲んだよ〜!!あはははは!」

「大丈夫?もう、家にいるなら安心だけど」

「そ!!家にいるから安心なの!!

浮気もしてないし!!あはははは!

ね〜〜!とおる!寂しいよ〜!いつ会える?

会いたいよ」

甘えたような声で言った。

初めて聞いた。


「珍しいこと言ってるね!お酒入るとだいぶ人格変わるタイプ?

そういう人は、要注意なんだよな!」

マジで!!

「も〜〜本当に寂しいんだから〜!」

「俺もだよ!今度の休みには必ず会いに行くから。

だから、待ってて欲しいんだ。

ゆき!愛してるよ!」


「……」

ん?無言??

「ゆき?ゆき!聞いてる?」


「……ごめん、わたし、なんだか眠くなっちゃった……」

「うん、じゃ寝て!ちゃんとベッドで寝てよ!

おやすみ」


「おやすみ。とおる!愛してる」


“とおる 愛してる” か……


俺の “愛してる” と、ゆきの “愛してる” は、全然重さが違うような気がする……

本当の意味で、俺はまだゆきに愛されていないだろう……

心から愛されたいと強く思った。


それにしても、矢沢先輩、ゆきを口説かなかったんだ〜。

ふ〜〜ん。

なんか、意外。

モテる男からしたら、終わった女には興味ないってか?

抱かずに終わった相手なら、抱きたいって思うんじゃないかと思っていたけど。

でも、良かった!!

手 出されなくて。





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