11話 中野柚希 ⑥

 怒られた。

怒ってくれた。

私のことを本気で思ってくれてるんだ。

倉田くん、年下だけど しっかりしていて、私なんかよりもずっと大人なのかもしれない。

こんなにも私のことを思っていてくれる人がいたなんて、キセキだな。

とおるのこと大切にしなきゃ バチがあたるな。


“結婚を前提に、僕とお付き合いしてください” って、そう言ったよね。

結婚か……結婚なんてまだ考えたこともなかったけど。

倉田くんと結婚……そんなこと、あり得るのかな……


あっ!思い出した!!

倉田くんがバイト先の花屋に来たこと、1度だけあった!あった!

とおるの卒業式の日だったんだ。

プレゼント用に花束つくって、それであげたんだっけ。

お返しだって。

あの日、結構忙しかったんだよな。 

それで、あんまり話しできなかったけど。

 

あっ!そうだ!!

とおるが帰ったあと、桂吾が寄って来て


「おつかれ~!」

「あ~、けーご!おつかれ!」

「さっきの誰?」

「ん?さっきのって?」

「爽やか少年!高校生の!!」

「あ~!高校の後輩だよ!」

「何しに来たって?」

「何しにって、花を買いに来たんだよ!今日、卒業式だったって!彼女にプレゼントなんじゃない?」

桂吾は、フッと鼻で笑って

「ふ~~ん。違うと思うけどな!おまえに会いに来たんじゃね?」

「わたしに?って?」

「マジで鈍いな!」

呆れたように半笑いだった。

「おまえに気があるって言ってんの!爽やか少年!」

「はぁ?あはははは。それは、ないでしょ!

ちょっと今日忙しいから、けーごとバカ話してる暇ないんだから!じゃね!」

「はいはい」

と手を振りながら店に戻って行った。


あの時、桂吾が言ってたこと、全然 気に留めてなかったけど、今思えば 言ってたこと当たってたんだ!

わざわざ、卒業式の日に、私に会いに来てくれたってことだったの?

その時に見ただけのはずなのに、とおるのこと憶えてるなんて、桂吾すごいな!!

ってゆうか、久々会ったけど、すごい茶髪だったな〜。

金髪に近いか?外国人ぽかったな。


あっ、とおるにメールしよっかな。

今、どこだろう。

メール1件

とおるからメールきてた!

気がつかなかったな。

運転してた時か、40分も前だ!

返信待ってるよな。


『運転しててメール気がつかなくて、遅くなってごめんね。

とおるの気持ち、本当に嬉しいよ。

怒ってくれて、ありがとう!

私もとおるを見送ってから、寂しくて、昔のことずっと思い出してたよ。


とおるが卒業式の日に花屋に来てくれた時のこと、とおるが帰ったあとに桂吾が

「あいつ、おまえに気があるな。おまえに会いにきたんじゃね?」

って言ったんだ。

その時は全然気に留めてなかったんだけど、そうだったんだなぁって、懐かしいなぁって思ったよ。

今度いつ会えるんだろう。

早めに会えるといいんだけど。 ゆき 』

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