12話 中野柚希 ⑦

 久しぶりに、さとみから電話がきた。


「元気〜?」

さとみは、元気そうだった。

急な話だけど、お盆休みに同級会をやることになったと言うことだった。

県外に出てる人も、お盆休みは実家に帰省してくる人が多いから。

8月14日にやるということだけ決まってて、場所はまだ未定だけど、とりあえず出欠席だけ確認してって、立花と宮田と棚部に連絡してと頼まれた。

「私、中村に連絡係り頼まれてさ〜!

なんで私?って聞いたら、暇そうじゃん!って!!

暇じゃね〜わ〜!!ってさ!あはは!

じゃ、とりあえず3人に聞いてみて!」

「了解!」


こんな元気そうな声を聞いたのは、本当に久しぶり。

本来の明るさを取り戻したんだな。


 さとみは、21歳の時に、結婚した。

私の友達の中では、一番早い結婚だった。

初めて出た結婚式がさとみの結婚式だった。

可愛い花嫁さんだった。

誰よりもモテる子だったから、幸せをつかむのも誰よりも早いんだな〜と思った。

結婚してからも、ちょくちょく電話で話したり、お茶したりしていた。

いつも、幸せいっぱいのおのろけを聞かされる感じだった。

私は、彼氏もいなかったし、いいな!羨ましいなと思っていた。


結婚して1年半くらい経った頃、さとみから手紙が届いた。

電話でも、メールでもなく、手紙?

なんだろう。


便箋3枚にぎっしりと書かれたその手紙には、赤ちゃんを流産したこと、ダンナさんが浮気をしていたこと、その相手がよく知っている人だったこと、別居していたこと、ついに、離婚したことが書かれていた。

こんなこと恥ずかしくて言えなかったけど、って。

言えないから、手紙にしたけど、恥ずかしいから、読んだら棄てて!と書かれていた。


ここに書かれている出来事と、今まで会って話したりしていたことが、あまりにもかけ離れていて、頭に整理できなかった。

幸せいっぱいを演じていたのか。

どうしてそんなことをする必要があったのか。

モテる女のプライドか。

モテる女がモテない女に、同情されたくなかったのだろうか。

そうまでして、私にマウントとりたかった さとみが、手紙を送ってきたのは、それでも、私に慰めて欲しいからだろう。


さとみの大好きなケンタッキーとハーゲンダッツを買って、さとみのアパートへ行った。

もう!こんなの!デブになるじゃん!!

そう言いながら、喜んで食べた。

その晩、さとみのアパートに泊まって、寂しい、悲しい、悔しいって言って泣くさとみを抱きしめた。


あれから2年か。

さとみは、元気になったのかな。

久々に、同級会で会えるな。


 同級会 成人式の日以来だな……

えいちゃん来るのかな。


ってゆうか、えいちゃんて東京で就職したのかな?

それとも、こっちに帰ってきてるのかな?

そんな、うわさ話も聞かないけど。

元気な姿を見れたらいいな。

会ってみたいような気はしていた。

別れて、6年か。

今なら、話もできそうな、そんな気がした。


 

『中学の同級会が8月14日にあって、出席しようと思ってます』 送信


『それって、矢沢先輩も来るってこと?』

すぐに返信メールがきた。


『わからないけど。 心配?』


『正直言って、心配だし、会ってほしくはないけど、会いたい友達もいるだろうし、行っておいでよ』


『ありがとう。 心配はいらないよ』


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