6話 倉田亨 ①
まじで!!
信じらんねー!!
逆転満塁ホームラン打って、優勝が決まったぐらいの大興奮だ!!
本当に、先輩と付き合うことが出来るかなんて、イチかバチかの賭けだった。
もう、当たって砕けろ!ぐらいに思ってた。
どうしよー!すげー嬉しいなぁ!!
大袈裟な話じゃなくて、生きてて良かったー!!
やべー!これ、眠れそうにないんだけど。
腕立て、腹筋、背筋でもやるか!!
次の朝
外で待っていた。
10時。
来た。時間ぴったし。
「おはよー!外で待っててくれたんだ!ごめんね」
にこっと笑った。
「おはようございます。僕 運転して行きましょうか?」
「あ、じゃ、帰りお願いしていい?
行きは、私 このまま運転して行くから」
「はい、お願いします」
直帰するから、帰り支度のでか目のバッグを後部座席に置いて、助手席に座った。
デニム地のワンピースにクリーム色のカーディガン。とても似合っている。
昨日も一昨日も気がつかなかったけど、陽のあたる場所で見ると、髪 だいぶ茶色いんだな。
長さは昔より短いけど、やっぱりストレートロング。
かわいい。
似合ってる。
「昨日、家に帰ってから考えてたんだ。
なんか、不思議だな〜って。
この前、ちょっと前に彼氏と別れたばっかりでさ、立ち直るのにまた時間かかりそうって思ってたのに、突然 倉田くんが現れて、告白されて、付き合うことになって、で!ドライブしてるなんてさ。
なんか、おかしい!急展開すぎて」
はははと笑った。
「僕も、友達に先輩のこと調べてくれって頼んで、次の日に電話きた時点では、彼氏いるわ!って言われたんですよ。
それが、何日後かに報告書送られてきた時には、別れたってことだったので、僕にしてみればラッキーだったんですが。
あっ、すみません!そんな言い方、失礼ですね!」
やべ、つい本音言っちまった。
「あー、いいよ、いいよ。
タイミングってゆうのかな〜、そうゆうのあるんだな〜って思って。
高校時代、もしも私に彼氏がいなくても、倉田くんと付き合ってたかって言えば、多分断ってたと思うんだよね。
後輩としてしか見れなかったと思うし。
今回も、1ヶ月前くらいにこうやって告白されてたら、それも、今 彼氏いるし、気持ちは嬉しいけど、ゴメンねって断ったと思うんだ。
だから、すごいタイミングで来たなって感じ」
「そうですね!ほんと、良かった!神様が味方してくれたって感じですよ」
それにしても、安全運転だな。
まぁ、このくらい慎重な方がいいだろうけど、ちょっと遅いな。
「この間別れた彼、忠志って言うんだけど、真面目で堅いタイプの人だったんだ。
ちょっと冗談も通じないくらいに真面目な人。
男友達3人で北海道へ旅行に行くって聞いた時も、お土産期待してるね〜って、そんなくらいにしか思わなかった。
旅行から帰ってきて、ちょっとずつ、あれ?って思うことが多くなってね。
来週の予定はわからないとか、急に用事ができたとか言うようになってさ。
旅行から帰ってきて2週間後に、話があるって改まって言われて、北海道で知りあった人を好きになったって。
彼女の方も同じ気持ちでいるんだって。
旅行から帰ってきて毎日電話で話してて、本当に本気で、その人と付き合いたいと思ってるって。北海道と長野の遠距離だし、黙っていれば私にバレないで二股で付き合えるかもしれないけど、そうゆうのやっぱり失礼だと思うから、はっきり言うことにしたって、バカ正直に私に言うわけ。
2年8ヶ月付き合ってきたのに、その私と別れて、旅行中に出会った人と付き合うって、そんなのあり得ないじゃん!
青天の霹靂ってゆうの、ビックリを通り越して、こんなことってあるんだなぁって思っちゃった」
カチンときた。
「それで!何て言ってやったんですか!そいつに!」
「なんてって、そっか、わかったって」
「そっか、わかったって、それだけですか?
ふざけたこと言ってんじゃねーよ!!って、そんな北海道の女と続くわけねーよ!!って言ってやればよかったじゃないっすか!!」
「そうだね。そう思ったな。確かに。
……でも、言わなかった。
無理かもしれないけど、諦めたくないんだって、後悔したくないんだって、そう言われて、そっか わかったって言うのが精一杯だった」
「ふーー……。先輩、ものわかり良すぎですよ!そういうとこ妙に男っぽいってゆうのかな、サバサバしてて。
大体、“女々しい”って言葉、“おんなおんなしい”ですよ!女ってゆうのは、女々しいもんなんですよ!
それが、さっぱりしてるってゆうか、潔すぎるんですよ!!」
「あぁ、確かに。
女々しいより、潔いって言葉の方が好きだな。
だってさ、別れを切り出した時って、もう気持ちがないから別れようって話になるんじゃん!
それを、イヤだイヤだって言ったからって、じゃ、別れるのをやめようってことにはならないじゃん!
どうせなら、キレイに別れたいってゆうのかな、そう思っちゃうんだよね。
それと、他に好きな人が出来たって言われると、納得しちゃってね。
あぁ、そうだよね。
やっぱり、そうだよねって。
私より魅力的な女性なんていっぱいいるもん。あ、だから、倉田くんもいいんだからね。
付き合ってみて、思ってたのと違うなって思ったら そう言って!」
なに言ってんだよ!この人 なんもわかってねーよ!!
「先輩!怒りますよ!馬鹿にしないで下さい!!僕は、ただただ先輩に憧れてボーッと見てたわけじゃないんですよ!!
先輩がどういう人柄かって見てきました。
高校時代、成績が良かったけど、寝る間を惜しんで努力してたのも知ってます。
寝不足なのか疲れてるのがわかる時もあったけど、一旦道場に入ったら手を抜くこともなく、稽古に打ち込んでいた。
朝練はやらなくても良かったのに、マラソンしてきて、素振りを毎日していた。
そんなことやってた女子の先輩は、中野先輩だけでした。
すごく足が速くて、マラソン大会や陸上クラスマッチで活躍してて、長距離も短距離も万能だなと思えば、バレーなんかはサーブも入らないし、ボールを怖がって逃げてる感じで、あれだけ剣道で当たってふっ飛ばされても、すぐ立ち上がって向かってくるぐらいの人が、あんなボール怖がってるのが、すごくおかしくて、かわいくて」
「あの……私ね、球技はほんと苦手なんだ」
「球技と言えば、バスケも酷かったし、卓球もキャ~とか言ってて、あはははは!
あんな小さな球にキャ~ってことないだろ!って、ウケました!」
「まぁ、その通りですけど……」
「あの……、とにかく僕は先輩のこと いつも見てました。
他の女子の先輩は、ちょっとのことですぐに痛いだのなんだのって言うけど、先輩だけは違った。誰よりも自分に厳しかった。
足の裏の皮がむけて、でも稽古を休まないから、その下の新しい皮がまたむけて、歩くのも痛そうなのに、それでも無理して続けてる。
弱音は絶対に吐かなかったし。
たぶん、矢沢先輩にはそんな姿を見せなかったと思うから、きっと知らなかっただろうけど、痛々しい姿も、僕は全部見てました。
だから、先輩の良いところも悪いところも全部ひっくるめて、僕にとっては先輩が一番で他に代われる人はいないんですよ!!」
興奮して、一人で一気に喋ってしまった。
「そっか……そんな風に私のこと全部見ててくれたんだね。
ダメなとこだらけだけど、こんな私を好きでいてくれてほんとにありがとう。
倉田くんは私のこといろいろ知っててくれるけど、私は倉田くんのことあんまり知らないから、昨日のノート見せてもらって一通りはわかったけどね。
だから、これからいっぱい倉田くんのこと知りたいなって思うよ」
「はい。今は、僕の独りよがりな想いだけで、付き合ってもらえることになりましたけど、これから少しずつ僕のことを好きになってもらえるように頑張るつもりです」
「うん」
「やっと着きましたね!運転お疲れ様でした!」
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