第2章 1話 中野柚希 ①
3年後
成人式
朝から雪がガンガン降っていた。
サイアク……
道にももう20センチくらい雪が積もっていた。
朝の6時に美容院の予約が入っていたから、4時半起き。
もう!昨日までいい天気だったのに!
美容院で髪をセットしてもらい、振り袖を着付けしてもらった。
馬子にも衣装ってこうゆうこと?
自画自賛だけど、すごく似合っていた。
着物いいな!
宮田と一緒に行く約束をしていたから、父に車で宮田の家に廻ってもらい、会場の市民ホールへ行った。
ロビーに入ると、“久しぶりー!” “元気だったー?” あちこちで歓声があがっている。
懐かしい顔が、大勢 目にとびこんできた。
「中野ー!宮田ー!」
大きな声で呼ばれて振り返ると、さとみだった。智香子ちゃんと一緒にいた。
「わぁ!久しぶりー!」
「元気だった?」
「元気だよ〜!」
さとみは、ピンク色の振り袖で、とても可愛かった。
智香子ちゃんは、モスグリーンの振り袖で、大人っぽくて似合っていた。
「智香子ちゃんの口紅、すっごいキレイな真っ赤だね!」
と私が言うと
「これは、姉ちゃんのだけど、普通のメイクじゃ、絶対つけない色でしょ!
ねー、中野ちゃんの振り袖の色と合ってて よくない?これつけてみる?」
そう言うと、バッグから口紅を出してくれた。
宮田は、コンパクトミラーをサッとだしてくれて、智香子ちゃんの口紅をつけてみた。
「おぉーー!!」
3人声をそろえた。
「超いいじゃん!」
「すごい似合ってるよ!」
「真紅の振り袖とバッチリあってる!」
「本当?智香子ちゃん ありがとね!!」
「もう、そろそろホールの中に入ろうか。座る場所どこでもいいみたいだから、上の方 行こうよ!」
「そうだね!前だと話ちゃんと聞かなきゃなんないしね!座席座って話そう!」
ホールの中に入って、座席に座り、見渡してみる。
「同級生 ほとんど いるね!」
「ほんとだー!県外へ出てる人たちも、帰ってきてるね〜!」
さとみは、振り袖のそでをブルンブルン振り回しながら、いろんな人に手を振っている。
「みんな、気合い入ってるねー!」
私は、えいちゃんを捜していた。
いた!!
スーツ姿、初めて見たけど、相変わらずかっこいい。
変わりないな。
ううん、一段と男っぽくなって、ますますかっこいい!
あっ、田坂だ!!
キョロキョロしながら、少し遅れて来て、えいちゃんの横に座った。
今も、2人が親友なんだと思ったら、嬉しくなった。
良かった。
式典は、市長の話とか、お偉いさんの話しが長くて退屈だった。
市の歌とか、知らないよ!
式が終わり、解散になったが、ホールの中ではあちこちで話に花が咲いていて、帰る人はほとんどいない感じだった。
涼子ちゃんが手を振りながら、こっちに来た。
「中野ちゃん!あっ!さとみちゃんも一緒か!
良かった!
ね!同部会やろうかって話でてんだけど、今日 夜 集まれる?」
「わー!いいね!同部会、やりたかったんだ〜!いいじゃん!やろうよ!」
さとみが言った。
「私も大丈夫だよ!!」
「じゃさ、いったん家に帰って、場所と時間決まったら電話するよ!」
「わかった!じゃ、うちで待ってるね!涼子ちゃんありがと!」
「じゃ、のちほど」
やっぱり、こうゆう時しっかりと仕切ってくれるのは、部長だった涼子ちゃんだな。さすが!
「剣道部の女子って、相変わらず仲良いんだね〜!」
宮田が感心したような口調で言った。
「うん、中学卒業してからも定期的に集まってるよ!」
「あれっ、でも、今回ちょい久々じゃない?
高校卒業した時やって以来でしょ!!」
「そうだね!」
「あっ!!棚部!行くでしょ?同部会!」
ちょっと離れたところにいた棚部を見つけて、さとみが大きな声で聞いた。
「うん!行くよー!」
口に両手を添えて、棚部も大きな声で返した。
「じゃ!あとでね!」
さとみと一緒に手を振った。
外の雪は、まだ降り続いていた。
近くの人は歩いて帰ったり、車でお迎えが来た人は帰ったりし始めた。
「じゃ、うちもそろそろお父さん来てると思うから行くね!」
「うん、じゃ またね!」
「元気でね」
「中野!あとでね〜!」
「あっ、うん!さとみ あとで」
「はいよ!じゃね」
「じゃーバイバイ!」
「バイバイ」
バイバイと言いつつ、何分 喋ってんだってくらい、女の子の話は長い。
えいちゃん 帰っちゃったかな。
ひとことも話せなかったな……
改まって、話すこともないけれど……
私たちは 別れていた。
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