38話 矢沢弘人 ⑬
朋徳が買ってきてくれた肉まんをペロッとたいらげた。
ちょうど腹減ってたな。
「朋徳、彼女は?」
「今はいないよ。夏ごろ別れたんだ」
「そっか。長かったのか?」
「春からだから、4、5ヶ月かな」
「あはははは!相変わらずだな!」
「中野と同じこと言うなよ!相変わらずだね!って笑われたよ。
ひろたちは長いな!もう3年以上だろ?羨ましいよ」
は?
「羨ましい?マジでそう思ってんの?
それって相手がゆきだからじゃねーだろな?」
「あはははは!おまえさ!やけに反応するけどよ、俺 中野のこと何とも思ってねーから。
ひろの彼女で、元同級生くらいの感じだろが。
中野のこととなると、すぐに好きなのか?みたいに言うけどよ!いい加減にしろよ!」
朋徳は笑いながらそう言った。
「だよな。それもさ、頭では わかってんだけどな。つい、ムキになっちまう。わりー」
「まぁさ!俺らは、保育園ん時からの付き合いだかんな。
言いたいことズバズバ言やーいいんだけどな。
とにかく、俺から見て、おまえら2人はお似合いだし、幸せそうで羨ましいなって思ってるだけだよ」
「ありがとな 朋徳。
……俺……朋徳に黙ってたことがあるんだ……」
「ん?なに?」
朋徳は、コーラを飲みながら、俺の顔を見た。
フーーーーー
言うか!!
「中2の秋……俺がゆきに告白した時……ゆき、なんて言ったと思う?」
「なんてって?OKだったわけだろ?」
ハァーーーー
言うか!!よし!!
「……1年の時からずっと……
田坂のことが好きだったって、そう言ったんだ。」
「はぁ?なんだよ、それ?」
朋徳は、ポカンとした顔をした。
「田坂のことが好きだった。
でも、片思いだから、もう忘れようとしてるって。
だから、俺は、それでもいいから、俺と付き合ってくれって言った。
朋徳への未練は忘れさせてやるって言ったんだ」
朋徳は、目をぱちぱちさせて、
「フーーーーーーッ、そっか……」
大きく息をはいた。
そして、
「んーーーーっ!そん時って、俺、横田と付き合ってたんだよな!?」
「あぁ」
「じゃ、それを、そん時に聞いたからって、何も変わってねぇよ。
そんな、意味ねー未練、早く忘れさせてやれよ!って、たぶん言ったと思うぜ!」
「そうかな……違ったんじゃないかと思うんだ。1年の時、朋徳がゆきのこと好きだった時、
あの時2人は、両思いだったんだ。
1年の冬、朋徳が伊藤と中野のどっちかのこと好きだって言って、ゆきは勝手に勘違いして失恋したと思い込んだ。
そんなゆきに冷たくされて、朋徳も諦めたわけじゃん!
ゆきのこと忘れたくて、あれこれ女代えて付き合ってたんじゃねーの?」
「別に、中野を忘れたくてじゃねーよ!」
「まっ、朋徳はそうじゃなかったとしても、
俺はゆきにも本当のことは言わなかった。
朋徳も1年の時、おまえのこと好きだったんだって、言ってたら、どうなってたと思う?
ゆき、朋徳に告白しようと思ったかもしれない。だから、俺は、言えなかった。
その時、ゆきが告白してきてたら どうしてた?」
「どうって……横田と別れて、中野ってふうにはいかなかったと思うよ……
その頃、横田とはうまくいってたし。
中野のことは、1年の冬で終わってたと思うし……
とにかくよ!3年も前のこと、いつまでも気にしてんなよ!
あの時こうしてれば、あぁしてれば、なんて後悔しててもしょうがねーだろ!」
「俺は!!!!自分が卑怯者だったって、ずーっと、そう思ってきたんだ!!」
大声で言った。
「ひろ……ひろは、全然 卑怯じゃねーよ!
恋愛には駆け引きも必要だろ。
それは、駆け引きだよ。
まぁ〜俺も、中野も駆け引きは苦手なタイプだな。
だから、お互いに気持ち伝えられなかった。
ひろのせいでも なんでもなく、もし付き合っても うまくいかないパターンだろ!
ひろが、俺んちで、中野のこと泣かせるようなことしないって言ったの、今でも憶えてるよ。
おまえは、マジで、すげーモテるのに、中野と3年も続いてるんだ。
すげーなーって思ってるし、中野だって、おまえと付き合えて良かったんだと思うぜ!
おまえと付き合ってから、超 にこにこしてんじゃん!
だから、いいんじゃね!そんなこと後悔してなくても」
優しく微笑んでくれた。
「ありがとう……ヤベ、泣きそうだ 俺……」
「あはははは!バーカ!泣いてんなよ!
俺が泣かしたみたいじゃん!
ひろの母ちゃんに怒られるだろ!あはははは!」
それから、まだまだ世間話を2時間喋りまくった。
久々に楽しかった。
朋徳に本当のこと話せて良かった。
少し、ラクになった気がするな。
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