36話 中野柚希 ⑱

 私たちは、またお互いに部活に没頭し、あっという間に冬休みになった。


冬休み中も部活があったから、夕方に少し会うくらいで、遠くにデートすることもできなかったけど、毎日楽しく、幸せだった。


部活から帰ってきて、夕方 えいちゃんの家へ行った。


「早いね〜!もう明日、大晦日だもんね!

明日どうする?お互い部活ないもんね」

「そうだな〜。うち、大掃除するんじゃないかな。終わったら会いたいな」

「あ〜、うちもたぶん大掃除だよ!やっぱ、午後か夕方になっちゃうかな」

「また、メールするよ」

「うん!私も。じゃ、そろそろ帰るかな」 

そう言って立ち上がろうとした途端、えいちゃんがグイっと手を引っ張り、ベッドに倒された。


「もう、痛いじゃん」

最後まで言うか言わないかくらいで、えいちゃんの唇にふさがれてしまった。

どうしよう……こんな気持ち……

えいちゃんにすべて身を任せてしまいたい。

そんな気持ちになってしまう。

キスよりも先にすすむなら、それでもいいか……

いや!やっぱり、それはダメだ!

私は顔を横に背けた。


「えいちゃん!私、もう帰らなきゃ!」

「ゆきを帰したくないんだ!ずっと一緒にいたい」

私の目を見て言った。

ドキドキした。

「私も、えいちゃんとずっと一緒にいたいって思うよ。でも、もう帰らなきゃ」

小さな声で言った。

「だな……ごめん」


そう言って立ち上がると、私の手を引っ張って起こしてくれた。

「ゆき、大好きだ」

優しく抱きしめてくれた。

“大好き” 私もそう思った。

 

「送ってくよ」

Gパンに履き替えて行くから、先に下に行っててと言われて階段を降りると、ピンポ~ンとチャイムがなった。

 

あっ、お客さん?

今、えいちゃんち誰もいないし、私 出てもいいのかな……


「はい」

玄関のドアを開けると、そこにいたのは田坂だった。


「わぁっ!!」

「オッ!!!!」

「びっくりした!田坂じゃん!」

「俺もびっくりしたわ!ひろの母ちゃん出てくると思ったら、中野とはな。お邪魔だったかな?」頭をかきながら、私の顔を見た。


「ううん、ちょうど今、わたし帰ろうとしてたとこだから。あっ、田坂優勝おめでとう!!」

「おっ!サンキュ!」

「大会のあとは、バタバタしてておめでとうも言えなかったから、会えて良かったよ!」

「中野は残念だったな。4位か?」

「そっ!そちらの吉川さんにやられました。

春は負けないつもりだよ」

「おっ!ガンバレよ!」

「うん。じゃ、今日はえいちゃん機嫌悪くないけど、仲良くね!

えいちゃ〜〜ん!田坂きたよーー!私、1人で帰るね! じゃ、ごゆっくり」

「わり〜な!」


キスの後、田坂と会うなんて、なんかドキドキした。

顔、赤面してたかな……


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