28話 中野柚希 ⑮

 毎日毎日、部活に明け暮れ、大会は終わった。

結果は、女子団体戦3位。

男子は、2位。

個人戦、私は3位決定戦で負けて、4位に終わった。

悔しい結果だったが、これが今の自分の実力なんだと思い知らされた。

 

まだまだ だな……

まだまだ たりないんだな……


田坂率いる、佐古高校は団体戦、男女共に1位。

田坂は個人戦でも、1位だった。

完勝だな!


それにしても、田坂かっこよくなったな!

男らしくなった!

って、えいちゃんには、絶対言えないけど。

やっぱ、私の目に狂いはなかったな!なんてね。

私が大好きだった、初恋の人。

片思いしてたあの頃は、ほんとに辛かったな。

それを えいちゃんが救ってくれた。

えいちゃんのお陰で、田坂を諦めることもできたし、幸せな気持ちをいっぱいもらった。


急に、寂しくなっちゃった……えいちゃんち行こうかな。


 


 「こんにちは!弘人くんいますか?」

えいちゃんのお母さんが出てきた。

「あら、ゆきちゃん上がってって!

今日は大会はどうだったの?」

「あまり、よくありませんでした」

「そうなの?でも、まだ春があるからね!

まっ、上がって!」

「はい。ありがとうございます。お邪魔します」 


階段を登って、えいちゃんの部屋はドアが開いていた。


「えいちゃん!」

と声をかけると、振り返って

「あれ!ゆき!来てくれたんだ!

俺の方から行こうかと思ってたとこだった。

行き違いにならなくて良かった!

来てくれてありがとう!会いたかった」

と言った。


えいちゃんの顔見ると、嫌なことも忘れちゃうな!

試合に負けたなんて、どうでもいいや!って気になる。


「大会の結果 聞こうかと思って。

電話でも良かったんだけど、会いたくなっちゃって。

どうだった?」

「3位だった。もっと上狙ってたから、結構落ち込んでたとこ。ゆきの方は?」

「うちも団体3位。個人4位、惨敗だよ……

私も、もうちょい上いけるかと思ってたんだけど。まだまだでした……」

「そっか。じゃ、お互いガッカリで大会終わったわけだ」 

「そうだね」

「朋徳はどうだった?」

「すごかったよー!個人も団体戦も優勝だったよ!

女子も団体1位は佐古高だったし、私3位決定戦の相手も、佐古の吉川さんって人に負けて4位だったし、なんか佐古に全部持ってかれた感じだったよ」

「そっか。あいつ頑張ってんだな」

「だねー!頑張っててもなかなか1位にはなれないんだけど」

「そうだよな」


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