18話 田坂朋徳 ②

 中1 夏

 

2ヶ月も学校休んじまった。

部活も遅れてるし、早くバリバリやりてーなー!


そういえば、ひろが言ってたけど、剣道部の女子4組に4人いるんだったよな〜。

小沢晶と、棚部三奈子は畑田小だから、小学校一緒でわかるけど、あとの2人、伊藤さとみと中野柚希は春木小で顔わかんねぇな。

どうせなら、可愛い子だといいなぁ。


 今日から、久々の登校。

朝のホームルームで挨拶をしろと言われていた。


「じゃ、田坂君、一言お願い」


俺は、黒板の前に立った。

視線がアツイな!


「1年4組の皆さん、入院中は千羽鶴やお手紙ありがとうございました。 

辛かったですが、それを見てとても励まされました。

(伊藤さとみは、窓際の列の、前から2番目って言ってたなぁ。おっ!!マジか!かわいいなぁ!!)

今日から、学校に通えるようになりました。

まだ、少し迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いします」

(中野柚希は、真ん中の列の1番うしろ。

ヤベ!!目が合っちゃった!!

なんだ!?今、すげー、ドキッとした!!)



 中1 夏休み


 夏休みに入って、毎日部活に行った。

でも、俺はまだ医者から激しい運動は止められていたから、走ったりすることは出来ず、素振りをするくらいしか出来なかった。


ハードな練習だった。

キツそうだな。

少し休ませてあげたいな。

見ていて何だか辛くなってきた。


「ガンバ!!」

「ファイト!!」


そんな風に、応援することしかできなかった。

ヤベ!!また、目が合った。

俺があんまり見てるから、視線を感じるのかな。

頑張ってるなぁ。

あんな細い体で、意外にタフだな。


「同じクラスだよね?」

って言ってみようか。

「あっ、そう。」

って言われるだけか……

あと、話が続かないな。

ダメだ……



 夏休み 部活最終日

  

「おっ!田坂、聞いたか?女子の打ち上げの恒例行事!」

陽介がニヤニヤしながら話しかけてきた。

「何だよ?それ」

「知らね〜の?遅れてんなぁ!

1年女子が、先輩の前で1人ずつ、好きな人言わされんだってよ!!」

「はぁ?」

なんだ それ?

「打ち上げ、道場でやるって言ってたじゃん!

裏の下の窓から中が見えんだって!

土田たちが覗きに行ってんだ!

俺らも行こうぜ!」

「おっ、おー」


裏に行ってみると、1年男子がほぼ全員いるんじゃないか?という感じだった。

小川が口の前に人差し指を立てて、シーとやっている。

みんなで息を殺して覗いていた。



好きな人発表が終わり、そうっとその場から離れた。

マラソンコースの土手にみんなで座り込むと、堰を切ったように、


「あ~~あ~~!俺、聞かなきゃ良かったなぁ〜!

伊藤の好きなヤツ1組の竹林なんてなぁー!!

あいつ、サッカー部のエースじゃん!

1年なのに、もうレギュラーでさ!

サッカー部に救世主が現れた!なんて言われてんじゃん!

竹林が相手じゃ無理だわ……」

と、陽介が言った。

「ってゆうか、竹林じゃライバル多すぎて、逆に伊藤だって厳しいんじゃね〜の?」

と、宮坂が言った。

「だな!!じゃ、竹林諦めてオレ!ってのも有りかもな!!」

「おまえってのは無いかもしれねーけどな!」

あははははっ!と、みんなで笑った。


「それにしてもさ、おおとりでさ!

中野の、た、た、た、多尾先輩です!っての超ウケたよな!」

土田が口を押さえて言った。

「俺、吹き出しちまったよ!

女子の先輩たちも大ウケだったから助かったって感じ!」

「本当に、マジ笑ったー!あはははは!」

「あれ?田坂どうした?」

俺は慌ててカバンを背おった。

「今日、家の用事で早く帰ってこいって言われてたの忘れてた!ヤベーから帰るわ!じゃな!」

「おー、じゃな!」

「またな!」

「田坂、じゃ〜な!おつかれ〜!」


最悪だ!最悪だ!最悪だ!最悪だ!


マジで聞かなきゃ良かった!!


俺、告白する前に、失恋したみたいになってんじゃん!!


俺は、走って家へ帰った。

走っちゃいけなかったけど、走った。

本当は、用事なんてなかった。

ただ、もう帰りたかった。


多尾先輩か……

あぁゆう人がタイプなのか。

別にカッコよくはないけど、すげー真面目で優しい先輩だよな、中野……

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