16話 中野柚希 ⑬

 中2 9月14日

 

えいちゃんの告白から、一週間が経っていた。

学校に行くと、廊下でえいちゃんに会った。


「手、大丈夫?」

「うん、バカみたいだよね……恥ずかしいよ」

「心配した。熱、高かったって?」

「うん。でも、もう大丈夫」

「良かった」

「えいちゃん、今日 放課後、時間もらえるかな?」

「うん、いいよ」



 放課後

教室で私は1人、えいちゃんが来るのを待っていた。

ドキドキ  ドキドキ

はぁ〜〜〜〜

何回、ため息ついてるんだろう……

緊張で心臓がバクバクだ。

ちゃんと話せるだろうか……

ガラガラガラと戸が開いて、えいちゃんが教室に入ってきた。


「ごめん、遅くなって。今日、部活休むって言ってきた」

「えっ!ごめん!部活休んで大丈夫?」

「いいんだ。1日くらいサボったって。

それよりも、中野の返事を聞かせてくれないか」そう言うと、椅子に座った。

「う、うん」


私は、正直に話した。

全部 話した。

10分くらい1人でずっと喋り続けていた。

その間、えいちゃんは一言も喋らず、ずっと私を見ていた。


「ごめん!話 長くなっちゃって。

私が言いたいことは、以上です」 

言い終わると、えいちゃんは

「わかった」

と、一言言い、目を閉じて大きく深呼吸した。


そして、ゆっくりと目を開き、優しい笑顔を私に向けてくれた。


「中野は、正直だね!いいよ。それでも。

朋徳への未練があっても、僕が忘れさせてあげるよ。

もう1度、改めて言わせてくれるかな。

僕と付き合って下さい!」


「はい!よろしくお願いします」

それだけ言うと、涙がポロポロと流れ落ちた。


「よく泣くんだね 中野は。

もう泣くなよ。

僕は中野のこと悲しませるようなことしないから。

中野は、笑顔の方が絶対いいよ!」

そう言って、髪を優しく撫でてくれた。



私とえいちゃんが付き合うことになったのは、

運命というより、奇跡だな……

それか、神様からのプレゼントだ。

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