14話 中野柚希 ⑪

 中1  バレンタインの1週間後


田坂が1組の吹石さんに告白したという噂が流れた。

なんで吹石さん?

さとみのことは諦めたのかな?


その噂は本当で、田坂と吹石さんは付き合い始めた。


クラスも部活も違うから、休み時間に廊下で2人で喋っていたりして、すごく目立っていた。



 私達は、2年生になり、田坂と吹石さんの交際も3ヶ月になろうとしていたゴールデンウィーク明け、突然2人が別れたと聞いた。


そして間もなく、田坂が同じクラスの千香子ちゃんを好きだと言い、クラス公認の仲になった。


私は、ただ、呆然と田坂の成り行きを見ている、一傍観者だった。

この頃には、もう殆ど私の中で、諦めの気持ちが大きくなっていた。

けど、それを決定的にしたのが、夏休みだった。


千香子ちゃんと別れて、剣道部の依子ちゃんと付き合い始めたのだ。

この田坂の行動は、もう私には全く理解出来なかったし、まさか 依子ちゃんとは!!

依子ちゃんには、中1の時から同じクラスに彼氏がいたはずだった。

どうして、2人がそうなったのか、剣道部の中でもあまり接点がなさそうな2人だっただけに、2人が付き合うことになったことは、ハンマーで叩きつけられたような衝撃で、田坂への想いは砕け散った。

依子ちゃんは、小さくて可愛い子だ。

喋り方もすごく可愛い。

しかも、すごく頭が良くて成績は常に上位だった。

どうして、2人が付き合うことになったのか、みんな驚いていたし、理由は誰にもわからなかった。


私も自分自身の気持ちが、よくわからなくなっていた。

田坂のことが、まだ好きなのか、諦めたのか、

諦められないのか、忘れようとしているのか、

忘れることは出来ないのか……

 

この頃は、私もかなりおかしな行動をしていた。


卒業式の日、3年の好きでもない先輩に写真を撮らせてもらったり、入学してきた1年の男子を可愛い!ってキャーキャー言ってみたり。

別の中学の先輩をカッコイイと騒ぎ、電話番号を調べて、さとみと青田と3人で電話をかけてみたり……

とにかく、何でも良かった。

毎日楽しく過ごしたい。

ただただ それだけだった。

本当の恋と言えるものは何もなかった。

ただ 毎日騒いで過ぎれば、それで良かった。


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