13話 中野柚希 ⑩
『愛してる!』だって!!
『愛してる』すごい いい響き!!
電話じゃなくて、直接面と向かって言われてたら、気絶しちゃいそう!
初めてだな。
えいちゃんがそんなこと言うの。
『好きだよ』は、たまに言ってくれるけど。
時々、不安になるもんね。
私みたいのが彼女でいいのかなって。
可愛い子なんていっぱいいるし、えいちゃんのこと好きだって子も何人もいるし、いっぱい告白されているみたいだし。
中学からの付き合いだし、えいちゃん優しいから、ただなんとなく私と付き合いを続けてるのかな……なんて、思ったりもしていた。
『愛してる』なんてこと、えいちゃんが言うなんて、なんかびっくりだな。
かっこいい!!
かっこ良すぎる!!我が愛しの君。
次の日
テスト1日目が終わった。
私の商業科の方は、簿記と情報処理の2教科だけ。
はっきり言って、簡単だった。
ちょいミスがなければ100点かなと思っている。
見直しもしたし、たぶんミスもないかな。
恵と美紀がきた。
「今日、うち来ない?」
恵が言った。
「ごめん!えいちゃんと待ち合わせ!
普通科 今日3教科だから、1時間待ち!」
「はい、はい!ラブラブだね。まったく」
「この間 矢沢君、女バスの河崎先輩にコクられたらしいよ。知ってる?」
美紀が私の顔を覗き込んだ。
「ううん、知らない。河崎先輩もわかんない」
「えっ!!河崎先輩知らない?
あの、背が高くてキレイな先輩だよ!」
「やせてて、スラーっとした!」
「あっ、なんとなくわかった!キレイな先輩ね!髪が長くて!」
「そうそうそう!!」
2人が声を合わせた。
「その!河崎先輩が、矢沢君呼び出して、コクったって噂だよ!!」
そうゆう噂をどこから聞いてくるのか、2人はほんとに情報通だ。
「そっかぁ」
「そっかーじゃないよ!!あんたみたいにボケッとしてたら、矢沢君とられちゃうよ!」
恵が大きな声で言った。
昨日、『愛してる』なんて、言われたばかりだから、全然ショックはうけなかった。
えいちゃんのこと、信じてる。
それをそのまま言ったら、ぶっ飛ばされそうだから、やめておいた。
「とにかく、気をつけなよー!あんた見てると、もう心配だよ!!」
「狙ってる子は多いんだからね!」
「ありがとう!美紀も恵も私のこと、いつも心配してくれて!」
「じゃ、帰るわ!」
「じゃ〜ね〜。矢沢君によろしく!」
「うん、バイバイ」
河崎先輩か……キレイな先輩だよな。
彼氏いたんじゃなかったっけ?
って、ゆうか、えいちゃんコクられたなんて一言も言ってなかったなぁ。
まぁ、えいちゃんにしてみれば、あんまり珍しくもないことだったのかな。
私がもし、誰かに告白されたら、○○くんに告白されちゃった!って、真っ先にえいちゃんに言うのにな!
って、私が告白されることなんてないけどね。
クラスの男子とも、まともに話したことないなぁ。
さてと、明日のテスト勉強でもしようか。
40分後
「ゆき!ごめん!すごく待たせちゃって!」
息を切らして、ハァハァと大きく肩で息をしている。
「走ってきたの?」
「超速攻!!」
商業科と普通科は、棟が違う。
商業科は、北棟で私の教室は、2階にある。
えいちゃんの普通科は、南棟の2階。
2階は繋がっていないから、一旦1階に降りて通路を渡り2階に昇るか、3階に昇って、通路を渡り2階に降りるか。
とにかく、遠い。
「そんなに、急がなくても大丈夫だったのに。私、明日のテスト勉強して時間つぶしてたし」
「早く!1秒でも早く、ゆきに会いたかったから!」
えいちゃんは、こうゆうキザなことも、サラッと言う。
それが、えいちゃんに似合っていて、本当にかっこいい。
私は、なかなか素直に言えないことが多いな。
帰る支度をしながら、
「テストどうだったの?」
と聞いてみた。
「思ってたより、まあまあの出来だったな!
昨日見てたところが全部出たから、ラッキーだったよ。違うところだったら、全滅してた。」
「そっか、良かったね!行こ」
「ゆきは、また100点満点とっちゃう系?」
「あっ、うん。ちょいミスがなければね」
「マジで!いつ勉強してんだよ!すげーな!」
「商業科だから、楽なんだよ。あはは」
帰り道、いつもは素通りする公園へ寄ってみようとえいちゃんが言った。
春木公園 ここには、思い出がいっぱいある。
「わぁ、なんか懐かしい!久しぶりだね」
「昔は、しょっちゅうここに来て、ただただ歩いてたな」
「ほんと、ほんと。座って話せばいいのに、それじゃぁなんとなく落ち着かなくて、この池の周り何周してんだってくらい歩いてたよね」
「若かったな」
笑いながらそう言うと、えいちゃんはベンチに腰をおろした。
私も隣りに座った。
昔のように落ち着かないってことはなく、普通に座っていられる。
「ね〜、河崎先輩にコクられたって?」
と、横を向いて聞いてみた。
「えっあっ!何で知ってんの?」
慌てて私の方を向いた。
「知ってます」
ちょっと怒ったふりして低い声で言ってみた。
えいちゃんは笑いながら、
「まぁ、コクられたのは本当だけど、ちゃんと断ったから、ゆきに言うことでもないかって思ってたんだけどな」
「ふ〜〜〜〜ん」
「断ったけど、結構しつこくて参ったよ!
彼女なんかいてもいいって。
とりあえず、二股かけて付き合ってみれば、私のこと絶対好きになるはず!だって」
「ふたまた……」
すごっ!!
「もちろん二股なんてしないよ!ハハハ!
とにかく、性格かなりキツイな!きれいだけどよぉ、あれはキツイよ!!」
「はぁ……えいちゃんが何人もの人に告白されてんの、たまに噂で聞くんだ。
それをいちいち、えいちゃんに聞くのもなんだから、私 聞かなかったけど、告白されて正直 気持ち揺らいだりする人はいなかったの?」
気になっていたことを、勇気を出して聞いてみた。
「揺らいだことか〜〜」
えいちゃんは、そう言って両手を頭の後ろで組むと、空を見上げた。
ドキドキした。
そして、私の目をしっかりと見て
「ないな!!俺は、俺が好きにならないとダメなんだ。
好きだって言われたって、その人のこと何も知らないのに、好きになんてなれないよ。
ゆき!ゆきより可愛い子は、いっぱいいるかもしれないよ!
でも、ゆきに代われる人は誰もいない!
俺は、ゆきのこと、運命の人だと思ってるから!!」
ジーンときた。
涙が溢れて、止まらなかった。
その時、私のスカートの上に、真っ赤な葉っぱが一枚、ひらひらと落ちてきた。
すごくキレイだった。
家に帰り、ベッドに横になって、さっきの落ち葉を眺めながら、えいちゃんの言葉を思い出していた。
「俺は、ゆきのこと、運命の人だと思ってるから!!」
か……
『運命』 素敵な言葉
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