3話 中野柚希 ③

 中1 4月

 

 中学に入学して、部活見学。


同じクラスの仲のいい友達の、立花と宮田と3人で、いろんな部活を見て廻った。


女子に人気があるのは、テニス部だったけど、私は球技がほんとに苦手だから、合唱部か、吹奏楽部に入ろうかなと思っていた。

校庭を見て、体育館を見て、校内でやっている美術部とかを見た。

音楽室に行こうと歩いていると、ひときわ人だかりになっているところがあった。


「あれは、何だろね〜!?」

「行ってみよ」


剣道部の道場だった。


かっこいい!!


初めて、剣道を生で見た。


やりたい!!


一瞬で心は決まった。


 1週間の仮入部期間。


初日は、女子25人。男子12人。


竹刀を握ったこともない初心者だけど、大丈夫かな?

不安だったけど、仮入部に来ていた人のほとんどが、やったことない人達だったから、大丈夫かもって、少しホッとした。

人それぞれ感じ方は違うだろうけど、私は剣道ってかっこいい!って思った。


「かっこいいよね〜!!」

違うクラスの名前もわからない人が、私に言った。


「うん!!かっこいいよね!!」

私も、そう答えた。


「ね!誰派?」


????

だれは?とは?


仮入部の1年女子のほとんどが、かっこいい先輩目当てだった。

学校の中でも、モテまくりのイケメン3人がそろって剣道部にいるのだそうだ。


仮入部期間の1週間のうちに、練習と女子の先輩の厳しさから、1人また1人と減っていき、本入部した女子は11人だった。

 

 中1 夏


「今日は、朝から暑いね〜!」

パタパタと下敷きで扇ぎながら、さとみが歩いてきた。


私も机の中から下敷きを出した。


「今日から 田坂 学校来るんだってね」


「たさかって?」

扇ぎながら、さとみに聞いた。


「ほら〜同じクラスで、剣道部も一緒じゃん!

4月だっけ?5月だっけ?チャリで事故って、入院して休んでた人!田坂朋徳!」


「あ〜〜〜!そういえば千羽鶴折らされたっけ?入学してまだ顔と名前が一致してなかったから、未だに顔が思い浮かばないよ」


「な〜んか、ジミ〜な感じの人じゃなかった?

入学してすぐに事故るとか、ついてない人だよね!

寺の息子らしいよ~

しかも、あと2週間で夏休みだし!

ウケる!全然学校来てないじゃん!」


いつものように、ケラケラと笑いながら言った。さとみは、明るくてかわいい子だ。

でも、わりと毒舌キャラ。


「あはははは!」


ガラガラ


「あっ!先生来た!!」


バタバタとみんな自分の席に戻り、ホームルームが始まった。

先生の話の途中、ガラッと戸があいて、男子が入ってきた。

ふ〜〜ん 田坂か。やっぱ全然見覚えないわ〜!はじめましてって感じ。

私は、1番後ろの席で、ほおづえをついてボーッと見ていた。


「じゃ、田坂君、一言お願い!」


「はい」


先生に促されて、田坂が黒板の前に立ち話し始めた。


「1年4組の皆さん、入院中は千羽鶴やお手紙ありがとうございました。

辛かったですが、それを見てとても励まされました。

今日からやっと学校に通えるようになりました。まだ、少し迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いします!」


その瞬間、目が合った。

私は、ドキッとして目を伏せた。

意味がわからないくらい、ドキドキが止まらなかった。

何をこんなにドキドキしてるんだろう。

その時の私にはわからなかった。




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